物書きは、著作権を知っておいたほうがいい。(ビジネス著作権検定持ってます)
漫画家の先生が、テレビドラマ化の脚本トラブルの末にお亡くなりになるという悲しい事件が報道されています。
尊敬している漫画家の佐藤秀峰さんも、noteで過去の映像化トラブルについて書かれています。
私はビジネス著作権検定取得者です。
自分の作品の映像化の話があった際に、何が正しいのかよくわからなくなったので、勉強を兼ねて取得したのですが、今でもとても役立っています。この検定を取って良かったと思っています。
しかし、著作権について割と詳しくなったために、日本では、著作権があまりにも軽んじられていることを知ってしまいました。
法律上では、原作者の権限は相当に重く、原作者の意に沿わない改変をすることはできません。
日本シナリオ作家協会の脚本契約7原則を、報道で知りました。
「著作権法第20条の規定を順守し、脚本家に無断で脚本を改訂してはならない。」
と書かれています。
これは間違った宣言ではありません。
著作権法第20条というのは同一性保持権と言って、書いた人の意に反した改変をしてはいけないということが、法律で保護されているのです。
そして、それと同様に、原作者の原作にもまた、同一性保持権があります。
これは、当然のことです。
つまり、原作がある作品については、まずは、脚本家の権利を主張する以前に、
「著作権法第20条の規定を遵守し、原作者に無断で原作を改変してはならない。」ということが、大前提としてあるのです。
脚本家は、原作者に無断で原作の改変をすることはできません。
事前に「原作に忠実に」と言われていてもいなくても、法律上は、勝手な改変ができないことになっているのです。
なので、大変慎重に丁寧に、協議を重ねて、制作していく必要があるはずなのです。
では原作者の意に沿わない改変をして、原作者がひどく傷ついた場合、どうなるか。
佐藤秀峰さんのnoteにも書かれていますが、DVD発売や今後の配信の許諾をしない、続編を作らない、そんな状態になる可能性はあると思います。
今回問題になったドラマも(どのような理由なのかは明らかにはされていませんが)、DVD化が行われないことが昨年の時点で決まっていたようです。
DVD化ができなかったり、配信ができなくなったりすれば、制作側はお金を稼ぐ機会が減ってしまいます。
でも原作者がNOと言えば、DVD化も配信も続編もできません。
それほど原作者には強い権限があるのです。
それは、その物語を創り出した人物、つまりその世界観の創造主だからです。
この原作がなければ、ドラマだって映画だって生まれません。
過去には、脚本家が書いたシナリオの雑誌収録を原作者が許可しなかったために収録できなくなるということがありました。その際は脚本側が裁判を起こしましたが、敗訴しています。法の上では原作者の意志が尊重されるものなのです。
その時の書籍がこちらですね。↓
ところで、時には、原作者が原作から原案に降りることもあります。
過去も何人かの原作者が「原作者」から「原案者」に変えています。
実は私も、とある舞台で原作から原案に変更してもらったことがあります(私の代表作である「男おいらん」より前の舞台制作での話です)。
演出家にあまりにも話の筋やセリフを変更され、「これは私の作ったものだと言いたくない」という状態に陥ったので、原案に降りたのです。改変では、汚い言葉を俳優に連呼させていて観るに耐えないものになっていました。いくらコメディー系演出家としても、これはありえないと思いました。
そして何を思ったのか、私が降りたことで、その演出家は自分が著作権者になったと盛大に勘違いしたようです。
私が考案したキャラクターを用いて、無断で続編舞台を制作しようとしました。私の考えたキャラクターに勝手に双子の兄弟まで作ったのです。そのキャラクターを私も気に入っていただけに、勝手にいじられてショックでした。
続編について、私に一切の連絡はありませんでした。
私の知らないところで、このような話が進んでいたのです。
私は耐えきれず、著作権専門の弁護士に相談に行きました。
すると、キャラクター権という考えがあるので、その演出家はそれを侵害している可能性があるというご指摘でした。それをそのまま演出家に伝えたところ、続編企画はあっさり中断されましたが、私に何か連絡や謝罪があったわけではありませんでした。
人の創作をあたかも自分の制作物であるかのように勝手に取り扱うことは絶対にできません。
そのように法律も守ってくれているのです。
私にとって演劇にまともに関わったのがこれが初めてだったので、あまりのことに演劇を一時的には本当に苦手になりました。こんなことがまかり通るような世界ならもう関わりたくないと思ったのです。
そんな私に「悔しさはよくわかる。本当にやりたい作品を一緒に作らないか」と言ってくださったかたがいて、それでできたのが舞台「男おいらん」だったのです。おかげさまで、何度も再演を繰り返す人気の舞台となりました。
多くの人が、あまりにも著作権について知らなすぎます。
著作権を知らないから、勝手な改変をしてしまう人がいるのかもしれません。
今回の事件について、脚本家や制作陣が著作権を知っていたのかどうか、私たちは知ることができません。ただ、著作権を知らない脚本家もいるのではないでしょうか。私はシナリオの学校の初級クラスに通ったこともありますが、そこでは著作権のことは教えてはいただけませんでした。
最近は大学でも著作権の授業があるところも出てきています。
今後同じことが繰り返されないためにも、シナリオスクールやシナリオ協会では、著作権についてしっかりと脚本家に周知していく必要があるのではないでしょうか。最低限、原作がある作品は、原作の同一性を保持しなくてはならないことくらいは伝えておくべきではないかと思います。
私の考えたキャラクターで勝手に二次創作しようとした演出家も、著作権の知識が少しでもあれば、このようなことはしなかったはずです。
多くの人に著作権についてまず知っていただく必要があると考えています。
もちろん、問題は一部でのことだと思います。
原作に変更を加えるとき「ここをこう変えたいんだけどどう思いますか?」と確認をとってから変更する、もしくは原作者と話し合う、そういうことをしてくれる制作者も少なくありません。
こちらが恐縮するくらい細かいことを確認してくださるところもあります。
でも「なぜか原作者に許可なく勝手に改変する一部の人がいる」のだとしたら、物書きは、自分自身で著作権の知識を身につけて、防衛したほうがいいと思います。自分の作品と、自分の魂を守るためにです。
改変された制作物がどんなに傑作であっても、原作者が「そんな設定はイヤだ」と感じるのであれば、それは、法的には間違っている可能性があります。
出版社に任せるという方法もあるかもしれませんが、Kindleなどで個人出版をする人も増えました。トラブルを最小限に防ぐためにも、ある程度の知識を備えておく必要を感じます。
書いたものは、ドラマ化、漫画家、舞台化、映画化などの打診をいただくことがあります。小説だけでなく、ノンフィクションであってもそうした打診が来ることはあります。
ですので物書きは、今後、著作権についての知識はしっかり持ったほうが安心です。
そうすれば、相手が間違っているのかどうかがはっきりわかるからです。
トラブルが起きた時、原作者が孤立することがあります。
特に個人作家ではそうなる可能性があります。
そんな時、原作者を守ってくれるのは、著作権です。
参考文献をご紹介しておきます。
ビジネス著作権検定のテキストは、読むだけでも勉強になると思います。
著作権に詳しい弁護士さんも随分と増えてきました。
助けになるはずです。
ココナラ法律相談で著作権に詳しい弁護士を検索したら全国に310人もいました。
専門家の助けを借りて対策を考え、ひとりで悩まないでいただきたいです。
(無料で電話相談などを受け付けてくれる弁護士さんもいるかもしれません)
脚本家の野木亜紀子さんは、「第三者委員会での調査を」と発言されました。
悲劇を重ねないためにも、何らかの調査は必要ではないかと私も思います。
菊池健さんのニュースまとめがとてもわかりやすかったので貼っておきます。
私も原作者のひとりとして、同じようなことが二度と繰り返されないようにと強く願っています。
<追記>
小学館もこの事件についての見解を発表しました。
はっきりと著作権や原作者の権利について書いてくださっています。
映像化や舞台化などには、時間などの制約もあり、100%原作と同じにするのは難しい場合もあるかと思います。しかしどのような場合であっても、できるだけ原作者が傷つかない方向で制作していただけることを、願ってやみません。
そして制作するかたがたがまず著作権についてご理解くださり、原作を尊重してくださいますように。
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