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いじめられた少年が、社長になった話。


                       
それは、ある日突然彼にふりかかった。
いつも一緒に遊んでいたクラスの仲間数人が、突然口をきかなくなった。
いじめられてしまったのだ。

小学6年生の秋のことで、彼は中学受験を控えていた。
クラスで受験をする人間は一部だけ。
もしかしたら、受験を、友達は面白く思わなかったのかもしれない。

それともうひとつ、思い当たるとしたら、運動会で応援団長をしたこと。
かなり目立ったので、その日以来、下級生たちからも声をかけられるようになった。

「なんだ、あいつ」
そんな風に思われたのかもしれない。
でも本当のことは何もわからない。
だって話しかけても、返事がもらえなかったのだから。

いちばんきつかったのは、昼休みだった。
仲間に入れてもらえず、いつものように運動場でサッカーもできない。
特にすることもなかったから、ひとり、教室で考えるしかなかった。


どうしてみんな、こういうことをするのだろう……。


いくら考えても答は出なかった。
でも、もしかしたら人間の心にはパターンがあるのかもしれない、と思った。
人間はプレゼントをもらえば喜ぶ。
そして腹がたてば、怒る。
そういう、プログラムのようなものがあるのかもしれないと。

やがて年が明け、受験シーズンとなり、彼は志望校に合格した。
すると突然、友達は元のように仲良く話しかけてきた。
約半年にも及んだ長い孤独は、唐突に終わったのだ。
最後は笑って卒業式を迎えることができたのは、良かったと思っている。

それからも彼は、人の感情や行動について、考え続けた。
通学の電車の中では、近くの人の話にさりげなく耳をすませた。
世の中にはいろいろな人がいて、いろいろなことを考えている。
それを、少しでも知りたかったから。

けれど、大学生になった時、彼は、再び、ひとりぼっちを味わった。
入っていたアカペラサークル内のグループで、あぶれものになってしまったのだ。
サークルをやめる前に、落ち着いていったん周りを見回してみる。
そうすると、他にも何人か、グループからはみ出した人がいることが見えてきた。


「僕たちで、新しいグループを作ろう」

彼は呼びかけ、あぶれた男たち6人でアカペラグループを結成した。
それは人気を呼び、大学の文化祭オーディションで1位となり、ワンマンライブには600人が集まった。

孤立したら目線を変えてみればいい。
そうしたら、仲間が見つかるのかもしれない。
サークル体験から、彼は、このことを学んだ。

やがて社会人になった彼は、仕事でインスタグラムを調べていた。
すると、古着を上手に着こなす女性たちがコーディネイト画像をたくさん載せていることに気づいた。
彼は、高校生の頃から古着が好きだった。
だから、おしゃれな画像をクリップするのは、苦にならなかった。

通学電車の中でそうしていたように、彼は、インスタグラムで人間観察をし続けた。

みんなはどうして画像をアップしているんだろう。
どんなことを求めているんだろう。

おしゃれな古着コーディネイト画像をまとめたサイトは、みんなも欲しいかもしれない。
そう思いついて「古着女子」というアカウントを作った。

作ったその日にフォロワーは500人を超え、5ヶ月で10万人になった。
古着イベントを思い立ち、スタッフをインスタグラムで呼びかけたら、すぐに集まった。

いける。
そう感じて、起業した。
サイトのイラストレーターやカメラマンやヘアメイクも、インスタグラムで集まった。
モデル募集には100人以上もの応募があった。
みんな、古着が大好きな人ばかりで、最初から熱い思いでつながっている。

もはや、「古着女子」は、彼にとって、ただのアカウントではなかった。
メディアであり、コミュニティにもなっていた。
かつて、ひとりぼっちだった彼は、10万人以上とつながっている。

今では、彼の中には、いじめられた小学生の頃のようなおびえはない。
サークルで孤立していた大学生の頃のようなさみしさもない。

彼はもう、ひとりぼっちではなかった。
志を同じくする仲間たちに囲まれている。
いじめられていた少年は、たくさんの経験をプラスに変えて、社長になった。

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7月6日にPRESIDENT ONLINEで私が書いた記事

古着で"インスタ起業"年商5億目指す24歳
http://president.jp/articles/-/25589

が、facebookで1300いいね、Newspicksで1700pickを超える反響をいただきました。
堀江貴文さんDMMの片桐孝憲さん家入一真さんと有名なかたもコメントしてくださり、とても光栄です。

「古着女子」を立ち上げた片石貴展さんは、明治大学商学部給費奨学生と優秀。お話していてネットの流れを見抜く力がものすごいと感じました。彼はイケメンの衣をまとった知将。やりたいことを次々実現している実行力に感心しています。

そしてこの記事で、文字量の関係で、入れることができなかったのですが、なかなか感動的なエピソードがあったので、ご許可いただき、noteで公表させていただきました。

いじめられた経験をバネにポジティブに成長する。
素敵なことだと思います。

片石さんの事業は、始まったばかり。
今後を、とても楽しみにしています。



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内藤みか(作家)
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