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「つながらない権利」とは?~リモハラを防止するために~

皆様、こんにちは!段々暖かくなって、初夏の陽気に近づきつつありますね!夏生まれのコザワとしては、とても嬉しいな~と思っております。早く海に行きたいですー\(^o^)/

さて。本日は、今話題のキーワード「つながらない権利」について書いてみようと思います!元々、私はリクルート時代、「休みに仕事することこそ、他の人に差をつけるチャンス★」と思って、休日出勤は当たり前でしたし、酷い時は3日連続徹夜、夜中12時に白熱した議論を交わす、なんていうこともありました。でも、そんな働き方をしていたことで、メンタル不調になってしまう人も見てきましたし、今となっては、それが良いとも思いません。やはり、プライベートも含めた自分らしい人生の選択ができることが一番良いと思っています。というわけで、このテーマで、行ってみたいと思います~!

「つながらない権利」とは?

つながらない権利(right to disconnect)とは、勤務時間外や休日に、仕事上のメールや電話への対応を拒否する権利のことです。2016年にフランスで労働法が改正された際に盛り込まれ、世界的に話題になりました。

またこの十数年、スマートフォンやインターネットの発達は、ワークスタイルを大きく変えました。いつでもどこでも仕事ができるようになり、報告のためにわざわざ帰社しなくてもメールで済ませることができるなど、社員にとってメリットが数多くあります。しかしその一方で、帰宅途中でメールが入り、その対応のために会社に戻らなくてはならなくなったり、休日に得意先から呼び出されたりなど、労働を強制的に実施させやすいケースも増えています。

私の後輩が、新婚旅行中に、お客様のトラブル対応が発生し、景色そっちのけで、ずっとパソコンとにらめっこ。電話では頭を下げながら、「本当に申し訳ありません」と連呼。せっかくのラブラブ旅行のはずが、険悪なムードになってしまった、とぼやいていたことがあります。

コロナで深刻化するつながりやすい環境

また別の友人は、以前から上司による就業時間外のメールや電話に悩まされていました。それがコロナで在宅ワークになって、更にエスカレートしたと言っています。顔が見えないことで、業務を怠けているのではないかと疑われ、チャットは即返信、報告のために毎日2時間の業務連絡、夜中でも休日でも連絡が来て、翌日返すと「やる気がない」などと言われる事態。【監視】が酷くなったと嘆いていました。

ニュースでも、常時パソコンのビデオカメラをオンにしておくことやランダムにパソコンの画面を勝手にスクリーンショットで撮影される機能の導入などが問題になりました。

就業時間内とはいえ、必要以上に上司に報告するのも手間である上、非生産的。また終業時刻を過ぎれば、本来はプライベートな時間です。在宅勤務だからといって、頻繁に業務連絡のメールを送信されると、大変なストレスになります。緊急な要件ならばやむを得ない場合もあるかもしれませんが、常に連絡があることを許していたら、年中無休のオフィスにいるのと同じようなもの。結果として長時間労働になってしまいます。

「サボってるんじゃないの?」

と心配になるかと思いますが、実際、心配すべきは逆です。働きすぎへの配慮の方が断然大切です。真面目な人の方が、上司からの必要以上の連絡を監視と捉え、ストレス過多になり、メンタル不調が起きやすいのが実態です。“労使トラブルの原因”とならないように、

上司⇔部下間の信頼関係を構築し、信じて任せる

というマネジメントを実施することこそ、リモートワークにおける重要な在り方であると思っています。

海外で進む法整備

「つながらない権利」については、海外で先行して議論されています。各国の「つながらない権利」に関する動きは以下のような例があげられます。

出典:HRpro https://www.hrpro.co.jp/series_detail.php?t_no=2613

コロナ禍以前に動き出していたのはフランスで、17年に労働法の中で、「つながらない権利」を行使するための条件を労使交渉で取り決めることなどが規定されました。イタリアでも同年に「スマートワーキング」に関する法律に関連して法整備、20年にはカナダで法制化の議論が開始されました。21年1月にはメキシコで、「つながらない権利」の尊重をテレワーク法で使用者に義務化しました。英国では21年7月、ポスト・コロナの働き方に関心が高まる中、野党・労働党が新政策「ニューディール・フォー・ワーキング・ピープル」を発表。この中で、私生活とのバランスをとれる在宅勤務を実現するために、テレワークを標準のワークスタイルとすることをうたい、つながらない権利の確立を盛り込みました。

一方、法的アプローチではなく、ドイツのように企業と労働者間での交渉を選ぶ国もあります。フォルクスワーゲンやシーメンスといった多国籍企業では、つながらない権利を保障する企業協約があります。

なぜ、日本ではつながってしまうのか?

日本でも「つながらない権利」を求める声は、各所で出てきているものの、法制化の動きにはつながっていません。21年3月に改訂された厚生労働省の「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」において、以下のような注意喚起がなされていますが、強制力があるわけではありません。

<メール送付の抑制等>
テレワークにおいて長時間労働が生じる要因として、時間外等に業務に関する指示や報告がメール等によって行われることが挙げられる。このため、役職者、上司、同僚、部下等から時間外等にメールを送付することの自粛を命ずること等が有効である。メールのみならず電話等での方法によるものも含め、時間外等における業務の指示や報告の在り方について、業務上の必要性、指示や報告が行われた場合の労働者の対応の要否等について、各事業場の実情に応じ、使用者がルールを設けることも考えられる。

<労務管理上の留意点>
テレワークを実施している者に対し、時間外、休日又は所定外深夜のメール等に対応しなかったことを理由として不利益な人事評価を行うことは適切な人事評価とはいえない。

厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」より

株式会社NTTデータ経営研究所が2021年3月に行った調査では、従業員10名以上の企業における経営者・役員を含む雇用者に対して「就業時間外の緊急性のない業務連絡への対応」について尋ねた結果、「対応したいと思う」が18.6%、「対応するのはやむを得ないと思う」が46.7%でした。

就業時間外の業務連絡に対する考え方(出典:株式会社NTTデータ経営研究所「新型コロナウイルス感染症と働き方改革に関する調査」

日本はもともと「仕事」と「プライベート」の境目があいまいで、勤務時間外の業務連絡にも抵抗感がない傾向があります。就業時間外の業務連絡であっても、対応しなければ責任感が足りないと思われ、キャリアに悪影響を与えるかもしれないという恐れから、対応をせざるを得ないと感じている人は意外と多いかもしれません。かつて、「24時間、働けますか?」という言葉が流行するほどでした。

しかし、こうした問題を放置しておけば、社員の休憩時間が不足し、心理的にも身体的にも健康バランスを崩すリスクが生じます。それが会社全体の業績にも影響を及ぼすことを理解する必要があると思います。

業種や労働条件の契約にもよりますが、勤務時間外の業務連絡があるのであれば、企業側はその旨を「労働条件通知書」や「就業規則」などに明記し、従業員に周知徹底することでトラブルを未然に防ぐことが必要です。「緊急の必要から、どうしても連絡をしてしまった」というケースにおいても、連絡をする側の十分な配慮が必要であるとともに、企業はその時間を「労働時間」として扱い、もちろん賃金面でも保証をしなければなりません。


つながりやすい権利の導入は、「リモハラ」防止

リモートワークは、オフィスで対面で仕事をしていた時のように、仕事ぶりが目に見えません。社員を疑い、まるで監視するようにビデオを常時接続するような施策を取り入れているようでは、とても適切にマネジメントしているとは言えないと思います。働き方が変わるなら、マネジメントスタイルも当然変えるべきだと感じています。

まして就業時間外の業務連絡に対して、すぐに対処するように求めることは、長時間労働のリスクばかりでなく、行き過ぎれば「リモハラ」(リモートハラスメント:パワーハラスメントの一種)を引き起こしかねません。

22年4月からは、中小企業においても改正労働施策総合推進法(通称「パワハラ防止法」)が全面施行されました。パワハラとは、職場において優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されることを言います。

事業主は、ハラスメントの防止のための雇用管理上の措置を講じることが義務づけられています。リモートワークの際もオフィスに出勤する働き方と同様に、パワハラなどを行ってはならない旨を労働者に周知・啓発するなど、ハラスメントの防止対策を十分に講じなければなりません。就業時間外の「つながらない権利」を尊重することは、こうしたリモハラの抑止として有効だと言えると感じています。

日本でも、勤務時間外のメールへの対応が従業員の負担になるとして、禁止する企業が出始めました。ジョンソン・エンド・ジョンソンは、午後10時以降と休日の社内メールのやり取りを禁止にしました。また三菱ふそうトラック・バスは、長期休暇中に電子メールを受信拒否・自動削除できるシステムを導入しました。日本国内の法整備、企業の制度・ガイドラインの整備などが進むことが大事ですね。

これから、個人が、企業が整備すべきこと

「つながらない権利」を侵害するのは、ある意味、かつて長時間労働が当たり前だった上司の立場にある人や取引先の人である場合が多いように思います。上司の立場にある人が、部下に対して勤務時間外に連絡をしなければ、「つながらない権利」の侵害は起きづらくなりますので、管理職への教育・研修を行って、意識改革をしてもらうことは必須だと感じています。また取引先からの勤務時間外の連絡については、取引の契約内容を明確にしておくことや、勤務時間外につながる必要のない体制を作ることが求められるとも思います。

「労働時間」が「1日8時間、1週間に40時間」を超えると、企業は従業員に対して残業代を支払わなければなりません。明確な社内ルールや指示によって「つながる」ことを強要していなくても、「つながり続けている」ことを企業側が理解していながら放置した場合も、「黙認」したものとして「手待ち時間」は「労働時間」と判断される可能性もあります。経営者や人事の方は、特に、こういった意識を持つことが重要ですね。


自分らしい働き方とつながらない権利

日本では性別役割意識が強く、女性が家事や育児など家庭への責任をより多く担っていることがいまだに多いと言えます。例えば、早めに仕事を切り上げ保育園などのお迎えや食事の支度・後片付けなどの家事をこなし、夜に子どもを寝かしつけた後、仕事を再開するケースも考えられます。あるいは、子どもが起きる前の早朝の時間を活用して仕事をすることが、本人にとって生産的に働ける場合もあるでしょう。

これは悪いことだとは思いません。このように柔軟な働き方を認める企業においては、社員の働く時間も多様です。私たちニットでも、女性が83%で、お子さんを持つお母さんも多いので、そういった働き方を選択している人はいます。

ただ、つながらない権利を整備・導入する際には、深夜時間(夜10時~翌朝5時)の業務禁止は健康面でも当然のこととしても、「何時から何時までのチャット送信は禁止」などの単純なルールを設けることで、柔軟な働き方をしている社員の就業を阻害することのないよう十分に配慮したいところです。例えば各人の就業時間帯以外にはメッセージを送らない、仮に受信しても翌就業時間まで対応しないことなど、社内でルール化するのも一つのやり方ですね。

コロナによってリモートワークが進み、いつでもどこでも働けるようになり、柔軟な働き方が可能となりました。その半面、仕事と私生活の垣根が曖昧となってオーバーワークになりがちな健康面での問題や「物理的に、いつでも、つながってしまう」といった大きな問題があります。

「つながらない権利」に関して、日本では各企業に対応が委ねられており、組織におけるルール化や配慮が求められるところです。私たち自身においても、まずは意識改革を行いながら、つながらない権利について問題意識を持ち、組織メンバーや家族などと議論を重ね、自分らしい働き方を選択していくことが大事なのではないでしょうか。

本日は、以上です!最後まで読んでいただき、ありがとうございましたm(__)m

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