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Crucify Me - Bring Me The Horizon【和訳】

ここは正真正銘の地獄だ
見た物を疑うな
ここは天国だが
誰もそんなものを掴めはしない


アルバムごとに音楽性を豹変させるロックバンドBring Me The Horizonの3rd Album“ There is a Hell, believe me I've seen it
There is a Heaven, let's keep it a secret
”から1曲目“ Crucify Me ”です。

3rdアルバムの名前はこの通りクソ長いですが、これはそのままこの曲に頻出する歌詞です。
歌い手が天国と地獄をどのように捉えているのか
十字架に磔にしてほしいその意図とは何か、この2点が歌詞の理解には欠かせません。

宗教絡みのフレーズが混ざっているので少し難しいですが、
その構成を解体していくほど、これが自殺を願う歌であることがわかります。


Title:Crucify Me (2010)
Band:Bring Me The Horizon (2004-present)
Album:3rd Album "There Is a Hell, Believe Me I've Seen It.
          There Is a Heaven, Let's keep It a Secret."
Vocal:Lights & Oli Sykes
 add Vocal:Skrillex, The Fredman Choristers,
       Elin Engberg & Anna Maria Engberg
Lyrics:Lee Malia, Matt Nicholls, Matt Kean, Jona Weinhofen & Oli Sykes



Crucify me,
and nail my hands to a wooden cross

木の十字架に僕を打ち付けてくれ

There is nothing above, there is nothing below
Heaven and Hell lives in all of us

ここからは望めるものもなければ、落ちゆく場所もない
天国も地獄も、僕らの内にしかないんだ

And I've been cast astray
僕は混迷に沈む

I am an ocean, I am the sea
There is a world inside of me
Lost in the abyss, drowned in the deep
No set of lungs could salvage me

偉大なる海と大いなる世界が、僕の内側にある
深淵に沈み、深海に溺れる
息もできない

Only a shipwreck, only a ghost
Merely a graveyard of your former self
We just watched the waves crash over
I've been cast astray

難破船や船幽霊が見えるだろ
あれは過去の君の姿と、その墓場だ
波が形を失うほど荒れ狂う様を
僕らはただ眺め、混沌へ沈んでいくのみだ

There is a Hell, believe me I've seen it
There is a Heaven, let's keep it a secret
No one needs to know

ここは正真正銘の地獄だ
見た物を疑うな
ここは天国だが
誰もそんなものを掴めはしない

I am an ocean, I am the sea
There is a world inside of me
Lost in the abyss, drowned in the deep
No set of lungs could salvage me

偉大なる海と大いなる世界が、僕の内側にある
深淵に沈み、深海に溺れる
息もできない

Save yourself, save your breath
The tides too strong,
you'll catch your death
So breathe for me, just breathe

早く引き返すんだ
潮流は強大すぎて、君の死は目前だ
僕のことなんて放って引き返してくれ!

There is a Hell, believe me I've seen it
There is a Heaven, let's keep it a secret
There is a hell, believe me I've seen

ここは地獄だ
見たまんまを信じるんだ
ここは天国でもあるんだ
それは秘匿されなくちゃならない事実
だからここが地獄であると信じること
誰にも本当の姿を知られてはならない

If we make it through the night, if we make it out alive
Lord have mercy and pray for the dead

この夜を越えて、生き延びることができたら
主は逃げ出し、僕は死を願うんだ

And you say that you can save me
Don't hope to ever find me

君は僕を助け出せると言うが
せめて僕を見つけ出せるとは思わないことだ

And I fear I'm too far gone
Pray for the dead

遠くへ行き過ぎてしまうことが怖いから
死を信仰するんだ

If we make it through the night, if I make it out alive
Lord have mercy and pray for the dead
And you said that you can save me
Don't hope to ever find me
And I fear I'm too far gone
Pray for the dead

この夜を越えたら、生き延びることができたら
主は逃げ出すだろう、その時僕も死ぬんだ
君は僕を助け出すと言うけど
頼むから見つけ出さないでくれよ
死ぬことはあまりに怖いんだよ
僕はここで死ぬんだよ!

Ladies and gentlemen, can I have your full undivided attention?
There's something you all really need to know

さあ、全ての秘密が明かされる時だ
誰もが知らなければならない事実がここにはある

There is a Hell, believe me I've seen it
There is a Heaven, let's keep it a secret
There is a Hell, believe me I've seen

ここは正真正銘の地獄だ
見た物を疑うな
ここは天国だが
誰もそんなことを知りもせず掴めもしない
世界は地獄でしかないんだ
君も見てきただろう?

If we make it through the night, if we make it out alive
この夜を越えたら
生き延びることができたならば......

You said that you can save me
Don't hope to ever find me

君は僕を救い出せると言うんだ
精々期待しすぎるな

And I fear I'm too far gone
Pray for the dead

だけど、僕は遠くに行ってしまうことが怖いんだ
だから死に縋る、死を讃える

If we make it through the night, if we make it out alive
We'll have mercy and pray for the dead
You say that you can save me
Don't hope to ever find me
I fear I'm too far gone
Pray for the dead.

この夜を越えたら、生き延びることができたら
僕らは逃げ出して、とうとう死に至るんだ
君は僕を救い出せるはずなんてなくて
だけど、僕は遠くに行ってしまうことが怖いんだ
だから死に縋り、死を讃えよう

I am the ocean, I am the sea
There is a world inside of me

偉大なる海が、大いなる世界が
僕の内側にはある

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イントロのフレーズ、すごく情景的で好きなんですよね。
あまりに広大な荒れ狂う海にぽつんと1人取り残されて、息も出来ずに溺れていく。
そしてその海とは彼の心が生み出したものであり、さらに、頼むから誰も助けないで放っておいてくれ、と主張しています。
そしてサビで何を願っているのかが分かる。

本当は死ぬことが怖いけれど、何かに駆られて、
今ここで死ななければならないと、誰の助けもいらない、むしろ足を引っ張らないでくれ......
と言っている。

比喩的なフレーズが頻出するので、それらが何を表しているのかを読み解く必要があります。

例のごとくGenius Lyricsから、ボーカルOliver Sykesの歌詞の意図を読んでいきます。


まずはイントロ。

This is a Biblical reference to the crucifixion of Christ. Oli expresses that he deserves punishment for his mistakes. However, since he doesn’t believe in the ideas of “Heaven and Hell” he has nothing to fear.
イントロの歌詞はキリストが十字架に磔にされる場面をオマージュした表現で、Oliは自身が罰を受けるにあたる間違いを犯したと認識している。
一方で、彼は天国と地獄の概念を信じていないし、恐れなくそれを否定している。

十字架に磔にされて罰されたいと言いながら天国と地獄は信じていないOli。

Oli’s lived in both Heaven and Hell as both live within all of us.
天国と地獄は全ての人間の内に存在するとOliは主張する。

少し難しいんですが、あくまで僕視点の読み解き方では、
天国も地獄も現世に存在していて、死後の世界で報いを受けるなんて都合のいい話はないよ、とOliは主張している。

The Hell is a more constant reality than the Heaven, thus the “let’s keep it a secret” as it’s almost like a secret he can never fully grasp.
特に地獄は天国よりも現実味のある存在で、なぜならば“ let's keep it a secret ”というフレーズを用いるほど、彼にとって天国は秘匿された存在で、手に掴むことすらできないからだ。

さらにここからの歌詞に繋がるのが、「僕には現世にあるらしい天国ってやつには到達できそうにない」=「安息の居場所はない」というナーバスな気持ちが“ There is a heaven, let's keep it secret ”に含まれている......っていうこの解説なんですよね。
僕ははじめこの曲を、「死後の世界に救いなんて求めるな、現世に隠されてる天国=僕らの居場所を探すんだ」、という曲かと思ったんですが、
結論としては「その天国はもう僕には見つけられそうにない」と歌っています。

悲しい言葉だけど、自殺したくなる時ってほんとにこれに尽きると思う。
居場所を探して、求めて、知識と経験を得て、それでも見つけられなかった時に究極の孤独を感じて人は死にたくなるんだと思う。

淡々とGenius Lyricsの解説とその和訳を紹介していきます。

Christians will tell you that Heaven is a place where God and good people go to live somewhere up in the sky, and that hell is a fiery location where bad people spend the after life.
Oli believes this is a lie and that heaven and hell are things inside of us, not places for the after life. He was cast astray by thinking about them as real places for a long time, when they weren’t.

キリスト教徒は、「天国は善い行いをした者が到達する場所であり、地獄は悪い行いをした者が死後行き着く場所」と伝える。
Oliはそれを否定する。死後の世界なんて存在せず、天国も地獄も各々が自身の中に持つと。
誰もそんなことを疑問に思わない中、彼は長い間現実の世界で考え続け、迷走していた。

Comparing the size of the ocean and the seas to all of his emotions within in.
The metaphor “there is a world inside of me” is exaggerating the sense that his emotions are the size of a world and it’s all within him, building and growing

これは彼の感情の大きさと海の大きさを比較するフレーズである。
there is a world inside of me ”とは、「僕の感情は世界の大きさに匹敵する」と誇張して表現している。そしてその感情の世界は、彼の中で常に構築され膨張している

The tides symbolize Oli’s troubles and all the things that he’s been through.
There’s a person trying to save him, he’s telling the person to give up on him, and that he’s not worth the struggle, and if the person gets caught in the tides, they’re going to drown.

the tides(潮流)”とは、Oliが直面している困難のことを表現している。
誰かがその潮流から救おうとするならば、彼はこう言う。
諦めろと。
僕には抗う意志なんかないと。
仮に掴めたとして、僕らは共に沈んでいくだけだと。

Oliは薬物依存の時に家族やバンドメンバーがものすごく助けてくれたと度々語っていますが、一方ではじめは敵にしか見えなかった、とも語っています。

He knows he is being offered help but refuses it because he feels no one understands him therefore he can’t be saved.
Don’t try to help him he is too lost in himself already and possibly considering suicide so you would be better off praying for his soul now.

誰かが手を差し伸べているのを分かっていても、彼はそれを拒絶する。
誰も自分を本当に理解することなどできないし、決して自分は救われないと思っているから。
どうか彼を救おうとはしないことだ。彼は既に死ぬ準備を始めている。精々できるのは、彼の魂の選択を祈ることくらいだ。

ここは本当によく気持ちが分かるところで、
誰かが助けてくれようとしてるのは認識できるんだけど、死にたい時に本当に求めているのは現状を確実に打破してくれる方法や新しい居場所であって、
既存の友人や家族が出てきてしまうと、彼らを頼ることで、まるで今の居場所に縛られてしまうような錯覚をするんですよね。ほんとどうしようもくらいめちゃくちゃ身勝手だな自分、とは分かってるんですけど。

だから現状から逃れようとする。信頼を築いてきた人達から離れて、本当の居場所を模索しようとする。
やがてそれは見つけられずに、元の居場所にすら自分の存在はなくなって......
そして死を選ぶ。

死のうとするのって、言葉にもできないほど耐えきれない、本質的な孤独に気づいてしまうから抱く願望だと思うんです。

自身のコアな苦しみや欲求にアクセスするほど、個人の幸せが寸分違わず誰かと一致することはなくて、
結局本質的に人間は他人を理解できない孤独な存在なんだ、だからこの痛みが取り除かれることは無いんだ、
この痛みが自身と周囲を蝕み続けるなら、僕がここを去るしかないんだ......

......とまあ、経験則を交えて解釈してしまったんですが、
細かく突き詰めれば違ったとしても、概ねそんな感情を歌ってるんじゃないかとほとんど確信してます。僕はそうやって死にたいって思ってきたし。


BMTHは5thAlbum “ That's the Spirit ”の楽曲において、
他者の痛みに寄り添う歌詞や(Drown)、痛みこそが自身を作り上げるという歌詞(Throne)などを綴ります。
これらの楽曲はバンドの中で歴代最高レベルのヒットを記録していますし、つまりは多くの人の共感を生む楽曲になったのでしょう。

これを踏まえて僕からひとつ言えることなんですが、
本気で死にたいって、思案して考え抜いてそうするしかないって結論に至るような時期があった人間って、どこかできっと大きな共感を呼べる存在になれると信じてます。
痛みを知っているから他者の痛みが分かるっていう定番の言い回しの通りなんですが、本質的に孤独だと至って死のうとした人間が、同じ孤独という痛みを知る人間の支えになることは僕の観測範囲ではよくあることでした。
こんなに皮肉で、だけど素敵なことって僕は人生においてそうそうないなって思ってて、死にたいと苦しんだ人ほどこの支え合いを体現できると思う。
人間の生きる力のすげえところのひとつなんじゃないかな、って思いますね。

この歌くらい絶望的なほど死にたいって時期があっても全然構わないし、むしろ後でその分を取り返してやろうぜ、苦しみぬいた人間にこそその門扉は開かれる、って僕は思います。まあ苦しみを選ぶことを第一優先にする必要はないですけどね……