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明日はもっと優しくなりたい

同じ地域に9年、同じ家に4年住んでいると、毎年恒例の光景が増えていく。

一つは、小庭に一株だけある季節の花。いつも4月半ばに満開を迎える。薔薇のような、椿のような、花に詳しくないからわからない。絶妙なピンクで、きれい。
もう一つが、玄関先に作られる鳥の巣。花と同じ時期に作られる。燕じゃない、雀じゃない、これまた鳥に詳しくないからわからない。高い音域で鳴いて、かわいい。

一本、また一本と親鳥が小枝を運ぶ姿を見ていた。家族なのだろうか、2匹いる。顔に赤い模様がある子をピンピン、全体がグレーがかった子をクンクンと名付けた。ネーミング担当は長男。理由を聞いてみたらそう鳴いているかららしい。
おはよう、ピンピンクンクン!と毎朝玄関のドアを豪快に開けて声をかける。2匹の鳥たちはびっくりして、すぐそばの高木に避難する。日課。

満身創痍だった週末。次男のトイレトレーニングを実行すると決めて、有言実行した矢先に夫が「歩けない」と言い出した。体の大きさの割に足首が細いとかで度々起こる現象。なんだそれ。次男はトイトレでお尻を出しすぎて風邪をひいた。母親として不甲斐なさすぎて泣く。仕事が積む、いや、詰む。

15分ごとにお漏らしする次男(鼻水)
構って欲しくて呼び続ける長男(不機嫌)
ソファに寝ている松葉杖の夫(でかい)

おかしい、私だけがめちゃくちゃ忙しい。

カリカリ、イライラ。夫に八つ当たり。あまりにも日中のストレスが凄くて、3人の男共が寝付いた後に一人時間を満喫する。が、あっというまに次男が泣き出しなだめに向かう。リビング、寝室、リビング、寝室、ねぇ、私の時間は?つい夜更かしが過ぎる。

SNSでは見えない98%が日常だ。
だからこそ、作ったり書いたりするわずか2%の時間が癒しだった。

ここをやめる気はない。でも静かな場所も欲しい。数多ある意見をスルーできる力が足りない。修行不足。続けるには、続けられない原因を一つ一つ潰していく必要がある。そうやって手を変え品を変えやってきた。
書き手が書き手を揶揄したり見下したりする行為がひどく苦手だ。このプラットフォームの周りでは時々起こりやすいらしい。

「noteで書いている人たちは、、、」
「noteにあるような文章は、、、」

何万人の人たちが何万本の文章書いていると思ってんだよ。一括りにするな。続けない人たちが続ける人の場所を壊す権利あるのか。立つ鳥跡を濁すな。

あんなに玄関先で鳴いていた鳥の声が、最近はしない。もうここで巣を作るのはやめてしまったのかな。雛鳥を育てるのに、我が家は少々賑やかすぎたのかもしれない。ただ、子どもたちは愛でようとしただけなのだけど。
どっちも悪くない。健やかに育てるために居心地のいい場所を作るのはとても大事。切ないけど仕方がない。いいよ、離れたほうがいい。

巣作りしよう。そうしよう。プラットフォームが悪いのでも、どこぞの誰かが発する声が悪いのでもなくて、ただ私が選んで整えればいいだけ。自分らしく続けられる空間を。

庭先にある花株を見ていると、3年前を思い出す。あの頃、私はお腹の子と一緒にずっとソファに寝ていた。500gで生まれそうになった23週から、出産しても問題がないと言われた35週の間。手術の1ヶ月後には義母が日本から手伝いに来てくれたが、しばらく夫は長男と私の面倒を一人で見ていた。もちろん通常通り仕事もあった。でも一度たりとも私を鬱陶しそうに扱わなかった。安静にして、寝てていいから、そう言い続けてくれた。

優しい人は、優しくするのに疲れないんだろうか。私みたいに優しくない人は、優しくするのにうんと疲れる。夫の方がいっぱい優しくて、私はちょっとしか優しくない。バランスが悪い。

ここではあんまり家族について書かない。プライベートで言葉や文章を起こす作業は、現実逃避でもある。できれば違う話題がいい。けれど、98%の日常を構成するたしかな存在。アルコール、君のせい。花が咲いて、鳥が巣を作る季節に次男は生まれた。

明日はもっと優しい自分になる。唐揚げが食べたい。

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Mica
最後まで読んでいただいてありがとうございます。これからも仲良くしてもらえると嬉しいです。