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エジプトでCELTAを受けてきた①

2024年8月、エジプトのInternational House Cairoで対面フルタイム(4週間)のコースを受けてCELTAを取得してきました。

CELTAは、英国のケンブリッジ大学が認定している、英語を母国語としない人に英語を教えるための教授法資格です。世界中で通用します。

コースはフルタイム(4週間)とパートタイム(数ヶ月)、対面とオンラインが用意されていて、世界中にあるケンブリッジ大学英語検定機構Teaching Qualification Centreで受講できます。

おそらくですが、英語圏でも日本でもない、しかも行ったことも馴染みもない第3国でCELTAを受講した日本人はそうそういないと思うので、現地体験を含めた受講体験を何回かに分けて綴ってみようと思います。


CELTAを受けようと思った理由

1番は、純粋に指導法を学びたかったからです。

3年前に公立高校→私立中高一貫校に移り、今まで教えたことのなかった中学生を受け持つようになってから、他校に授業参観に行ったり、経験のある先生に教えてもらったりして、中学生を対象にどう英語教えたらいいかを模索してきました。

でも、どれもその先生の経験がベースになっていることが個人的に気になっていました。

その経験の積み重ねで教材を再利用したり、今まで実践してきたことを換骨奪胎して磨き上げていたり。でも、その先生たちの実践もまた、誰かから学んだものだったわけです。

となると、私もまた、ここから長い年月をかけて学んでいくのかと。そう考えると気が遠くなりましたし、やれる気力も自信もなかったです。自分の形が確立される頃には、もう退職する年になりますし。

なら、誰かの実践の又聞きじゃなく、せっかくなら根本になる指導法を学びに行こう!と思ったわけです。

あともうひとつは、TESOLを学んで資格として持っておきたかったから。

これは自分の興味分野である、デジタル技術×英語にも大きく関わっています。

最近、特にコロナ禍を経てから、日本の学校ではICTの活用について急速に準備と実践共有が進んできました。その過程で、コロナ前はどちらかと言うとマイナーだったICT活用教育の認定(MIEE、Adobe、最近だとCanvassadorなどなど)が知られるようになってきました。

実際、私も2016年から2022年までの6年間、MIEEとして認定されていました(2023年以降は更新せず)が、あくまで認定系は「ICT実践を広める」が主な目的です。

結局のところ、ICTの使い方実践が主流で、応募の際も、たまにあるノルマ的なものでも、その背景理論なんかについては特に問われません。自戒を込めてですが、実践が増えてきたあたりから、見た目は映えるけれど中身がイマイチわからない、そんな実践の広がりに疑問を持つようになりました

だからこそ原点に戻って、一度ICTから離れ、指導法をしっかり学ぼうと思うようになりました。

それなら、経験ベースではない、資格としても認められているうえ、指導教官のもと教育実習ができるCELTAに挑戦しようと。お金はかかりますが、それは自分への投資だと思って思いきって申し込みました。

なぜエジプトにしたのか


私はCELTAを受けるなら絶対に対面がいいと思っていたので、対面で受けられる+費用+日程のトータルで考え、また色々と情報収集して検討した結果、エジプトで受講という選択に至りました。

受講を検討する場合、以下のウェブサイトで場所・日程の検索ができます。

日本だと、神戸にあるレクシス語学学院で受講できます。

でも、対面での開講期間が平日で仕事と丸かぶり、研修地も神戸のため通うこともできず、物理的に無理でした。オンラインと対面のミックスコースもあり、実際に申し込んで事前ライティング課題も提出しましたが、人数が達していないため開講できないと連絡があり、断念しました。

(1)対費用効果+α

日本でCELTAを受講しようと思うと、受講料だけで約35万円かかります(2024年9月時点)。

CELTAの受講料は20~30万円が相場、どこで受けても質はさほど変わらないそうですが、受講料は実はアジア・オセアニアが1番高いそうで、次いで欧米、その他、だそうです。

円安で1ポンド200円前後になった2024年8月のイギリスでも、受講料は日本より安い30万円くらいでした。

仮に、日本で対面+オンラインミックスのコースを受講できたとしても、受講料35万円+神戸滞在費10万くらいはかかってしまうので、そこそこの出費になります。

その点、エジプトは受講料と検定料合わせて約20万円、物価もエジプトポンドの下落で激安のため(500mlペットボトルの水1本が約15円〜25円)滞在費もかなり安く抑えられました。

ただ一方で、お金はかかっても、本場イギリスで受けたい気持ちもありました。でも日程をみると、日本帰国日の次の日には出勤しなければならず、さすがにイギリスからの長距離フライト後、時差もあるなか、休みなしで仕事に戻れる自信はありませんでした・・・(ついでに、イギリスで求められる英語力IELTS 8.0以上も満たせていなかった)

他にも、マルタ、トルコなどが選択肢にあったんですが、どれも上記と同じ日程・・・

となると、帰国後1日は休める日程のエジプトに軍配が上がりました。

航空券+滞在費+受講料のトータルを見ると、さすがに日本での受講料35万円よりは少し高くなりましたが、オンラインよりも対面で受講でき、日本語が通じない環境に身を置く負荷の大きさ、教育実習をする相手も英語圏外の子達である負荷をプラスに捉え、ついでに死ぬまでに一度見てみたかったピラミッドやスフィンクスも見られるかもと思うと(これも理由としては大きかった)妥当な金額だと考えました。

※日本で受講する場合、小・中・高等学校教員は特別割引が効くみたいです。詳しくは以下参照(注:2024年度版)https://www.mext.go.jp/content/20240509-mxt_kyoiku01-000035839_5.pdf

(2)研修施設について

私がCELTAを受講したところは、ロンドンに本社を置くInternational House World Organisation(略称IH)という、世界50カ国以上に150校ちかくある語学学校のエジプト・カイロ校です。ヨーロッパやアフリカを中心に展開していて、東アジアだとタイにあります。

CELTAはどこで受けても質は変わらないと聞いていましたが、一応それなりに実績のあるところを、と調べていたところ、IHがヒットしました。レビューも悪くなかったのと、問い合わせをした時の返信の速さ、そして、CELTAの内容を調べていた時にYouTubeで見た動画の指導教官がIH Cairoにいたことが、決定打になりました。

IH Cairoは、カイロのダウンタウンから地下鉄で2駅ほどのドッキ地区にあります。あの有名なツタンカーメン王の黄金のマスクがある、エジプト考古学博物館も車で5分ほどの距離です。

ただ、パレスチナ情勢も不安定なので、治安が少し心配な面はありました。

でも、エジプトはUberが使えて徒歩移動を避けられる点、過去にテロがあった分、治安が強化されている点、外務省の海外安全情報が「レベル2:十分注意してください」だったこと、そして一応元バックパッカーという経験で未知の場所も旅慣れている経験から、決めました。

選考について

(1)英語資格

CELTAは誰でも受講できるわけではなく、受講に際しては英語ネイティブと同等の英語力が求められます。具体的には、CEFR C1レベル以上(IELTS最低 7.5)の英語力が条件になります。

英語力の資格証明は、提出が求められる場合とそうでない場合があるようです。私は日本の方に申し込んだときは求められませんでしたが、エジプトの方では求められました。

そして私の英語力は、IELTS overall 7.0でギリギリC1。CELTAでは最低overall 7.5なので、実は満たせていませんでした。

でもセクション別にみると、ReadingとListeningで最高8.0、Speakingが最高7.0、Writingだけ最高6.5。最高点だけのトータルなら、最低ラインのoverall 7.5を満たせていたので、それぞれ最高点を記録した時のスコアレポートを全て送ってみました。

そしたら、なんと通りました。(やってみるもんです)

(2)ライティング課題

申し込んだら、ライティング課題が送られてきます。
志望理由は250語程度でしたが、ライティング課題で印象に残っているのは、文法の項目です。

なぜかというと、高校の英語でよく教えるような内容だったから。”I have been to…”と”I have gone to…”の違いを簡潔に説明しなさい、とか、"excited"と"exciting"の違いを説明しなさい、とか。いくつか短文があって「間違いを直して、なぜ間違いなのか簡潔に説明しなさい」とか。

これは日本・エジプト両方にありました。

そのほかは、比較的長め(150語とか400語とか)のライティング課題が2、3本くらい。

そのうちの1つは、ライティングの授業をどう指導するかについて書くものでした。(この時は、以前オンラインTESOLで学んだことがめちゃくちゃ役に立ちました)

基本的に、文法項目なんかは普段自分が教えているようなことでしたので、さほど難しくなかったです。しいて言うなら、文法用語の英語がわからなくて(present perfect simpleとか)困ったくらい。

ちなみに、添削にはDeepL WriteやGrammarlyを使いました。

(3)面接

ライティング課題にPassしたら、面接の案内がきます(2週間くらい待ちました)。

どの受講者ブログを見ても、この面接が1番大変だったという声ばかり。

私は留学経験もないですし、そもそもIELTSのスコアも基準を満たせていなかったので、何を聞かれるかは過去のCELTA受講者ブログから情報収集をして、それをもとにChatGPT音声で毎日壁打ち特訓しました。

参考にしたのは、以下の2つのブログです。

東進ハイスクール・東進衛星予備校英語科講師 武藤先生のコラムと

LinguaHackersのRisakoさんの体験記です。

ChatGPTの音声で練習すると、自分の言ったことがそのまま文字で残るので、良い振り返りができるんですよね。

こんな感じで準備万端、でも緊張して面接に臨んだわけですが、本番は志望理由をがっつり聞かれて、その後いくつかの質問に答えるだけで終わりました。しかも、Zoomインタビューの終了時に”accept(受講許可)”をいただけるあっさりぶり。ちょっと拍子抜け・・・。

この一連の選考プロセス、CELTAで何を学ぶのかについて知る良い機会になりました。

私は英語力の面では圧倒的ハンデを抱えていましたが、先のライティング課題にあった文法の説明などは割と得意な分野だったので、「これならやっていけるかも」という自信も少し生まれました。

そして全てを終えた今、改めて振り返ってみると、こういった文法や語彙(System)の意味を、英語を母語としない人たちにどうやって英語で伝えるかを学ぶのが、CELTAコースでした。詳しくは別の記事で書いていこうと思います。

次は、事前課題と旅の準備について書いていこうと思います。


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