ナイト・ミュージアム@オルセー美術館
フランスでは通常の閉店時間を延長して夜まで営業することを『ノクチューン』と言う。デパートや店舗だけでなく、美術館も週一でノクチューンをやっているところがあって、昼間とは違う雰囲気で芸術作品を鑑賞することができる。
木曜の夜、久々にオルセー美術館へ行ってきた。
パリに住み始めた当初に1回、その数年後に友達と1回、そして今回が3回目の来館。最後に友達と訪れたのはもう10年ほども前になる。夜に来るのは初めてだ。
以前、これももうだいぶん前だけど、ルーブル美術館のノクチューンに行ったことがある。昼間よりもお客さんの数が少なく、目当ての絵画だけを狙ってサクサクと歩けたのが気持ちよかった。人の流れを気にせずにじっくりと好きな絵画だけを鑑賞できて満足したし、窓から差し込む光のないお城の中が現代とは違う別世界のような雰囲気でワクワクした。
今回のオルセーは入場口に昼間のような行列は出来ていなかったものの、中へ入ると通常通りたくさんの人で溢れていた。
めっちゃ混んでる。。。
でもまあ仕方がない。以前と比べて観光客の数が増えているのだろう。
気を取り直して奥へ進むと。。。あれ?
中央のホールが以前はもっとドーンと広かった気がするが、なんだかちょっと圧迫感のある感じに変わっていた。
あれ?狭くなった?
昼間の光がなく、人工灯だけで明るく照らされた館内はコンパクトにギュッと圧縮された空間のように感じた。
それでも絵画の展示をしている脇の通路へ進むと以前同様に素晴らしい名画がずらりと並んでいる。おぉぉ!
おぉぉ!
印象派は色がいい!生き生きしてる!
ルーブルでよくみられる筋肉隆々で生々しい絵画と違って全体的に柔らかくて温かみのある印象派の絵画は心が和む。
出たー!モネ!
出たー!ノアール!
小躍りしたくなるような有名な絵が続く。
その日はゴッホの特別展示をしていたので浮かれついでに列に並んで入っていくと、うじゃうじゃと人の頭しか目に入ってこない。
なんとか絵画の前に陣取って鑑賞していても前後左右全方向から人の気配がして集中できない。
ダメだこりゃ。
人が多いので歩きながら流して見るにはいいかもしれない。
じっくり鑑賞するような環境ではなかったのが少し残念だが、それでも有名な教会の絵をちゃんと見られて良かった。
そういえば昔、この絵の教会のある村に行ったことがある。もう何十年も前のことだけど、ゴッホのお墓がある村だ。
ゴッホが描いた風景や地形がそのまま残っていて感動したのを覚えている。
入館したのが7時過ぎ。美術館を出る頃にはもう9時近い時間になっていた。夜ご飯がまだだったので、デプレの方へ少し歩いたところにあるカフェレストランで軽く食事をしてからウーバーでまっすぐに帰宅した。
入館する前と入館中の展示室の窓からキラキラと点滅するエッフェル塔が見えていた。帰りのウーバーの中からもまた、セーヌ越しにキラキラと輝くエッフェル塔が見えた。
あぁ、パリやなぁ。
これはえぇ方のパリやわ。全世界の女子たちが憧れる方の、非日常のパリ。
こんなんばっかりやと思って憧れてる人には申し訳ないけれど、現実のパリはもっと全然シビアでキラキラなんてしていない。
エッフェル塔だって以前はキラキラなんてせずに、ボーっと突っ立ているだけの塔だった。
それがいつの頃からか、どんな思惑があるのか、キラキラと魔法の粉をまき散らして人々の心を現実から夢の世界へと誘うようになった。
かく言う私もそんなキラキラに絆されて、ええ方のパリに陶酔した夜でした。