ドイツ・ブンデスリーガで輝きを放つアルジェリア代表選手たち FOKUS Bundesliga!!! #23
前書き
今年2月8日、ドイツの天然ガス輸入業者VNGが、アルジェリアの国営企業ソナトラックとの新たな中期契約に基づき、アルジェリアから天然ガスの輸入を開始する予定だと発表した。ウクライナ侵攻やノルドストリーム爆破に伴い、ロシア以外のエネルギーの供給源を求めたドイツが、シチリア島経由のアルジェリア産ガスに興味を示した格好だ。実現すれば、ドイツとアルジェリアの関係は緊密になるだろう。
政治的関係を深める両国は、サッカー界で少々因縁がある。両国の代表はこれまでに2度、ワールドカップで対戦した。多くの人が思い浮かべるのは、2014年大会のベスト16での対戦だろう。同大会で優勝するドイツ代表がヴァイッド・ハリルホジッチ監督率いるアルジェリア代表に苦しめられたのだ。
1982年大会ではアルジェリア代表が勝利した。当時のアルジェリア代表でウイングを務めたのがラバー・マジェール。5年後の1987年、ウィーンで行われたヨーロピアンカップ決勝でFCバイエルン・ミュンヘン相手に1ゴール1アシストを記録し、FCポルト史上初のビッグイヤー獲得に貢献した名手だ。
リヤド・マフレズなど、数多くのテクニシャンを輩出するアルジェリア。2019年のアフリカネイションズカップで優勝するなどアフリカ屈指のサッカー大国として知られる。現在、ドイツブンデスリーガ1部で活躍するアルジェリア代表選手は3人。本テキストではその3選手に注目し、プレースタイルを紹介する。
Ⅰ. モハメド・アムラ
Mohamed El Amine Amoura
محمدالأمينعمورة
所属クラブ：VfLヴォルフスブルク
生年月日：2000年 5月9日（24歳）
出身：ジジェル, アルジェリア
身長：170cm 利き足：右足（あるいは両足）
主なポジション：ストライカー
今夏、ユニオン・サンジロワーズから買い取りオプション付きのレンタルでヴォルフスブルクへ加入したアムラは、既にチームの中心的存在だ。前線での豊富な運動量とスプリント能力を活かしたドリブルや抜け出しで、相手DFを混乱に陥れ、守備時にはプレスの先鋒としての役割を果たしている。
プレッシングスタイルの信奉者であるラルフ・ハーゼンヒュットル監督から重宝されるのも当然だろう。またアムラは得点能力も高い。昨シーズンのジュピラー・プロ・リーグでは18ゴールを挙げ、今季も出場したリーグ戦4試合で既に1ゴール4アシストを記録するなど、得点に関わる数字を残してる。
とくに第5節のVfBシュツットガルト戦で挙げた得点は見事だった。チアゴ・トマスやヨナス・ヴィントなどとも好連携を見せた。ピッチ上ではガッツを見せる彼だが、自身を恥ずかしがり屋と評するなど人の良さも垣間見える。ヴォルフスブルクで攻撃の中心となっている背番号24番に注目したい。
Ⅱ. ラミー・ベンセバイニ
Amir Selmane Ramy Bensebaïni
أميرسلمانراميبنسبعيني
所属クラブ：ボルシア・ドルトムント
生年月日：1995年 4月16日（29歳）
出身：コンスタンティーヌ, アルジェリア
身長：187cm 利き足：左足
主なポジション：左サイドバック
ブンデスリーガにおけるアルジェリア代表選手といわれて誰もが思い浮かべるのは、ラミー・ベンセバイニの名前だろう。118試合に出場するなどアルジェリア人選手として最多のブンデスリーガ出場記録保持者であり、ボルシア・メンヘングラードバッハ在籍時にはリーグ屈指の左SBとして知られた。
昨シーズン後半は負傷などもあってイアン・マートセンの後塵を拝したものの、ベンセバイニのタレントに疑いはない。攻撃的なSBとして知られるベンセバイニ最大の武器は左足の技術力。ボルシアMGや代表ではPKキッカーを務めたほどで、ボール奪取後に味方へ正確なボールを送ることができる。
長身を活かしたセットプレーも特徴のひとつで、2019/20シーズンの第14節FCバイエルン・ミュンヘン戦ではヘディングから同点弾、PKから決勝点を挙げ、ボルシアMGを勝利に導いた。CBも務めるなど守備面の能力も高いベンセバイニ。ヌリ・シャヒン監督率いるボルシア・ドルトムントでの彼の復活に期待したい。
Ⅲ. ファレス・シェイビ
Farès Chaïbi
فارسشايبي
所属クラブ：アイントラハト・フランクフルト
生年月日：2002年 11月28日（21歳）
出身：ブロン, フランス
身長：183cm 利き足：右足
主なポジション：サイドハーフ
RBライプツィヒでもスポーツディレクターを務めたマルクス・クレーシェSDのもと、若く、才能あふれる若手選手たちを擁するフランクフルト。なかでも注目のタレントの1人がファレス・シェイビだ。リヨン郊外のブロン出身である21歳は、2023年夏にトゥールーズからフランクフルトへ加入した。
2023/24シーズン、監督就任1年目のディノ・トップメラーから信頼されて出場機会を得ると、第8節のTSGホッフェンハイム戦でリーグ戦初アシストを記録。第9節のドルトムント戦でもリーグ戦初ゴールを挙げるなど、オマル・マルムシュなどと攻撃のチームの中心的存在となっていった。
シェイビの特徴は右足から繰り出される正確なキックにある。後方から前線あるいは逆サイドのフリーな味方選手に精度の高いキックを送り、チャンスを創出できる。フランクフルトではセットプレーのキッカーも務めており、コーナーキックからも好機を演出する卓越した技術の持ち主だ。
後書きに代えて
ヘルタBSCの新星 イブラヒム・マザ
Ibrahim Maza
إبراهيممازا
所属クラブ：ヘルタ・ベルリン
生年月日：2005年 11月24日（18歳）
出身：ベルリン, ドイツ
身長：180cm 利き足：右足
主なポジション：トップ下
2024年10月11日に行われたトーゴ代表戦の89分、ウセム・アウアーとの交代でマザがアルジェリア代表デビューを果たした。僅かな出場時間のなかでアムラの得点に絡んだのは、見事としか云い様がない。アルジェリア出身の父を持つマザはウラジミール・ペトコビッチ代表監督に十分な印象を残した。
マザはフクセ・ベルリン・ライニッケンドルフのユース出身。2018年にヘルタ・ベルリンのユースへ加入すると、2023年4月30日のバイエルン戦に当時17歳11ヶ月で出場し、ブンデスリーガでデビュー。1ヶ月後の5月27日、第34節のヴォルフスブルク戦ではリーグ戦初ゴールを記録している。
マザは足元のスキルと18歳らしからぬフィジカルを有する2列目のヤングスター。負傷から復帰した昨シーズン後半から徐々に出場機会を得ると、今季はヘルタのトップ下として中心的存在となっている。第6節ニュルンベルク戦ではドリブルの持ち込みから見事なアシストを記録した。今季の彼から目が離せない。
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