禅とお日様 自未得度先度他
禅はお日様のようにそのときそのときで表情が違います。禅の教えもお日様もそこにあって、でも、そこにいる人にとっての響き方、感じ方はコロコロ変わります。私にとって禅は自分の状態に気づかせてくれるものです。禅語に触れ、その言葉からいろいろ考えることで自分がどう感じるか、心が晴れる日も心が曇る日もあります。
「自未得度先度他」(じみとくどせんどた)
「私はまだ修行中だからお先にどうぞ」という解釈をしています。今までのいろいろな出来事を振り返ってみるといろいろなシチュエーションに当てはまるのかもと思えました。それらを記事にしてみます。
後ろから来る人や自転車に道を譲るというのは日常でよくあることです。後ろからすごい勢いで近づいてくる足音や自転車のベルが聞こえると、道の端に寄ります。例えば大きな荷物を持っていたり、子どもと手をつないでいたりすると、端に寄っても先に行けない状況になってしまいます。そんなときでも、後ろの人が先に進めるように考えて、いったん止まるとか、道を少し外れてみるとか、することなのかもしれません。
一方で自分が前に進みたくても進めないときはどうでしょう。前にいる人が杖をついたお年寄りかもしれません。子連れの妊婦さんかもしれません。そんなときは、その人達が歩きやすいように、配慮するのも修行になりますね。高校生が道幅一杯に広がってふさいでいるときは、無理矢理通り抜けてしまいますが……。
会社ではどうでしょう。組織変更や人事異動が発表になる度に、一喜一憂したことはありませんか。私は体制が変わる、上司が変わると仕事も人間関係も自信も影響を受けてしまっていたので、毎回とても気にしていました。学校のクラス替えと同じ感覚なのかもしれません。
上司が変わる度に、方針変更や優先順位の変更が発生したので、私はできるだけ変わらないことを望んでいました。明確に提示されない環境では、よくわからない状況の中をただただ、もがいていました。自分も含めて何も変わらなければ、何も進まないという状況に気づきました。
この経験から、時代の変化に対応するためにはフレキシブルさが必要であり、変化が起きても対応できると過ごしやすいことに気付けました。周囲の力を借りて進められると思えるときは、例え自分よりも若い人であっても、後から入ってきた人であっても「自未得度先度他」の精神で譲るというのもありだと思えました。
昨今マネジメントだけに特化したマネージャーは多くありません。プレイングマネージャーが求められています。マネジメント能力を見抜かれて昇進というよりは、仕事の成果の見せ方が上手い人が昇進していくということが起きています。
隣の部門の人から次年度の計画について相談を受け、情報を整理し、求められている数字を集めて提供したことがありました。私にしてみたら、相談を受け、仕事の協力依頼だと思っていたので何も気にしていなかったのですが、その数週間後、次年度の人事が公開され、その人は昇進し、異動してきて私の上司となりました。
その人とはそれまでも仕事の食い違いが何度も発生し、そのたびに関係各所との調整をしてカバーをしていたので、納得感がありませんでした。その人は、私が作った結果を自分の成果として報告し、自分だけが昇進したように見えました。ただ、見方を変えてみたら、これも「自未得度先度他」の精神かもと後から気付きました。私は修行中で、そのような重責には耐えられないからお先にどうぞという感覚を持てばいいと思えました。
私は担当していたプロジェクトに集中して進めることができました。私の修行はプロジェクトを進めることであって、組織を会社を良くしていくのはマネジメントの仕事と割り切れました。計画をしていたスケジュール通りに物事を進められ、私自身の成果にも自信にもつながりました。
私には歳の離れた友人がいます。10歳以上年下ですが、仕事では店長や副店長と責任ある仕事をしています。彼らは10歳以上違うからこそ、持っている価値観が違うのではという先入観がありましたが、話してみると私よりもしっかりしていて、彼らから学ぶことが多々あります。これも「自未得度先度他」なのかも知れないと思えました。
彼らの昇進が私はとても嬉しくて、彼らの応援をし続けたいと思います。私よりも早いスピードでいろいろと成し遂げていく彼らを応援し続けることが私の修行であり、自己成長につながっていくのかもしれません。
同じ禅語であっても、状況によって響く内容が異なります。同じ禅語であっても、受け取る人によっても解釈は異なります。だからこそ、禅を学ぶことは奥が深く、ずっと学び続けることができます。
今回は「自未得度先度他」をご紹介しました。禅メソッドアカデミーでは、禅についての探究、自分自身の探究を深めることができます。その中でもいろいろな学びがあります。是非一度「玄関」の講座をのぞいてみませんか。
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