プレイをしないという選択
H、可愛い可愛い私の1人目のペット。
Hのことはあまり書いたことはなかったけど
私にとって彼はとても特別な存在。
彼とは最初はプレイをしていたけれど、
色々な変化があり、今はプレイをしない主従関係ということで取り決めている。
関係性は本当にそれぞれだ。
永続的なセックスをしない夫婦が成立するように、
プレイをしない主従も成立させられる。
関係性を構築するために
一度は必ずプレイが必要なところも、
男女関係におけるセックスと似ている気がする。
プレイをしなくなったのは、私ではなく
Hの方に変化があったからだ。
初めてプレイをしてから3ヶ月くらい経った頃、
Hの様子が少しずつ変わってきたような気がした。
SMへの興味が低くなったのかなと思い
「無理しなくていいのよ」と言うと、
彼は思い悩んだ末にこう言った。
私のことを本当の意味で大切に思うようになって、
自分の行為が私の未来を奪ってしまうのではないかと急に不安になった。
自分の欲に流されてしまっていたけど、
私の普通の幸せの枷になるのが怖いのだと。
私からしたらSMは日常だし、
なければ生きていけないものだから
どこかからは摂取しなければいけないのに。
それでも彼にはそう感じられたらしい。
「だから親友みたいなものになりたいです。
と言っても、実際には子分というかペットのような感じになってしまうと思いますが…」
と付け加えてきた。
私はそれを聞いて、
もう十分にペットとして出来上がっているなと思った。
この時はまだ主従関係の契約は結んでいなかったけど、
それでもかなりその感覚が染み込んでいる。
そうじゃなければわざわざこんなこと言ってこない。
「私が欲しいものは精神的な関係性だから
プレイがなくても別にいいのよ。
大切にしてあげるからペットになりなさい」
そう伝えた。
彼は素直にはいとは言わず、こう返してきた。
「でもこれからミアさんに子供が出来たり、自分に彼女が出来たり結婚したりするかもしれないんですよ。それでも大丈夫なんですか?」
そんな風にまだ見ぬ未来を心配するなんて。
彼はちゃんとこの関係性を真剣に捉えているのだなと思った。
「私が求めてる関係はそういうことに左右されないもっと深い部分のものなのよ。
少なくとも私はもし子供が出来てもあなたに彼女が出来ても、会わなくなっても変わらずあなたのことを大切に思っていると思う。
私にとって主従関係ってそういうものだから。」
そう伝えると、やっと納得したようだった。
Hは、そうしてペットになった。
だから彼とは、この関係性になってから一度もプレイをしていない。
プレイはしないけれど、
彼が座っているとき、
エスカレーターで下にいる時、
そういう何気ない一瞬の時に
たまに、少しだけ彼の目線を下に置いて
上から覗き込むようにして顎を撫でる。
そのひとつの動作だけで身体が熱くなる。
服を着ていても、周りに人がいても、
直接的な快感がなくても。
プレイで染み込ませたあの空気感を
呼び起こさせることはいつだって出来る。
身体が覚えた主従関係を、
気が付かないうちにもっともっと
日常の当たり前にして、
無くてはならないものにさせていきたい。