H、私のはじめてのペット
男の子を飼っていたことは今までもあった。
でもどれも、彼らの方が「犬にしてください」と懇願するので、何となく近くに置いていただけだった。
長期の関係性を築ける相手を探し始めたのは今回が初めて。
そんな私が、初めて自分でペットにしようと決めて主従関係を結んだ相手、それがHだった。
初めて会った時の彼はあまりにも緊張していて
ずっと腕を組んで外さず、食事もあまり手をつけなかった。
緊張と見栄が混ざりあって少し高圧的で、
本当にマゾなのかなと途中で忘れてしまうくらい。
1時間くらい話した後、
「ところであなたのフェチは何?」と聞いてみた。
すると急にどもって何も話さなくなってしまい、何度も瞬きをして混乱しているようだった。
こういう話は誰ともしたことがないらしい。
初めて自分から内を曝け出すとき、人はこんな風になるんだ。
あまりにもまばたきを繰り返して混乱しているので、
可愛そうになって助け舟を出そうかともしたけれど、
やっぱり何も言わずにただ彼の返答を待つことにした。
じっと待つと、彼が小さい声で「匂い」と言った。
匂いフェチか、なるほど。
私にとってはそんなに驚くようなフェチでもなかったけど、彼は随分と勇気を振り絞って言ってくれたみたいだった。
それがHとの初めてのディナー。
帰ってから、Hから連絡が来た。
「話している最中もずっと反応しちゃってました」
あんな風に怯えたり、
男らしく見せたりしていたくせに、
その中で興奮もしていたなんて可愛い。
また会ってみてもいいな。
この子といたら面白そう。
この時はまだその程度だった。
2024年2月、Hと初めて会った日。