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Tを手元に戻した日


Tと、2か月ぶりに会うことになった。
クリスマスの日に。

家の前に着きましたと連絡をもらって外に出ると、
車から出て立って待っているTが居た。

車には乗り込まず、彼の方に歩いて行った。
きちんと彼の姿を目に捉えたかったから。

「久しぶりね、元気にしていた?」と声をかける。

もう一度会えるかどうか、正直この日まで半信半疑だった。
だからそこに立っているTを見たとき、
少しだけ不思議な気分になった。

「なんだかすごく久しぶりですね」とTは言った。

それはそうでしょう、もう会う気はなかったんだから。


車に乗って、食事の場所を探す。
焼き鳥を食べに行くこととなった。

カウンターで横に座りながら、最近の仕事の話や子供の話を聞いた。
彼は最初は子供のことをあまり話してこなかったけど、
今ではとても嬉しそうに写真や動画を見せてくる。

この特別な関係性をまっすぐに受け入れて、
心を開いてくれているのだなと感じて嬉しくなる。


一通り話し終えたところで、彼の顔を撫でながら目を見て、聞いてみた。

「あなたはもう一度わたしのペットになりたい?」

Tは珍しく少し食い気味に、
「それは勿論、はい、なりたいです」
と言った。

「もう一度戻ってきたら、私はもう二度とあなたのことを手放さないと思うよ」

そう聞いた。
自分に言っているみたいだった。

Tは、「はい。仲良くしてください」とだけ言った。

仲良くしてくださいって、変な表現をする子だな。
可愛がってくださいの間違いでしょう。


「あなたにとって私はどういう存在?」と聞いたら、

「ミアさんは…大切な人ですよ」
そう言われた。

本当にそう思っているんだろう、と思った。


帰り、車の中でさよならをするとき、
Tに誕生日プレゼントとして、私のイニシャルの彫ってあるアンクレットをあげた。

彼は想像以上に喜んでいた。

ファッションやブランドが好きな子だからどうしようか悩んだけど、
渡してよかったな。

最後にもう一度顔を撫でると、珍しく頬を擦りつけてきた。

本当にどうしようもなく可愛い。

もう二度と手放さない、私だけのペット。



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