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早くて近くて離れた社会 | 岐阜県知事選とリニア

吾輩は岐阜県民である。リニアはまだ無い。

ということで、あけましておめでとうございます。

久しぶりのブログ&新年初記事がこんな出だしでいいのだろうか。
いや、私のふざけきったnoteの記事には、これくらいがお似合いだ。

しかし問題は出だしなどではない。このブログで、政治的な話を避けてきた私が突然タイムリーなトピックである岐阜県知事選にモノ申すことが問題だ。いいのだろうか。

でも、安心してください (はいてますよ)。 
今回話すのは、私がどの候補者を支持しているかなんてことではない。

この記事では、岐阜県知事選をきっかけに、今回の争点の一つであるリニア建設について自分が改めて考えたことを書き留めてみた。

これだけうじうじしていたにも関わらず、この記事を書こうと思った理由についても、のちほど説明したい。


岐阜県知事選?なにそれ美味しいの?

普段はアメリカの大学に通う私だが、1カ月ほど冬休みのために帰国・帰省していた。

アメリカに戻る日も近づいてきた頃、岐阜県知事選の存在に気づいた。気づいてしまった。
我岐阜県民也。これを機に県政について考えてみようではないか!
そう意気込んで「岐阜県知事選」でググってみたところ、NHKが各候補の演説をわかりやすくまとめてくれていた。ありがたやありがたや。

ちなみに大変わかりやすく、かつ面白いまとめられ方だったので、ぜひご一読を。私は特に聴覚で得た情報の処理が苦手であるため、各候補者が演説で強調したことが視覚的にわかりやすくなっているのは本当にありがたかった。

NHKはそれぞれの候補者の告示日最初の演説を「テキストマイニング」という手法で分析し、有権者にどのような内容を訴えたのか、読み解きました。

演説の中で使われた政策や選挙運動に関する言葉の回数を集計し、多く使われた言葉をより大きく表示しています。

岐阜県知事選挙告示 演説内容を分析 20年ぶり新人どうしの対決

候補は二人。江崎候補 vs 和田候補

現職の古田知事(なんと5期=20年県政を担っていた!)は立候補せず、新人2人の対決。

今まで政治学、特に国内政治や県政といったものから目をそらしてきたイマドキの若者ミロ。最初に出てき感想は、
「「新人」って呼ばれるんだ。へえー。」
非常にとぼけている、由々しき事態。

「逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ!」
とりあえず記事に一通り目を通した。

とりあえず、わかったこととしては、江崎候補は国政志向が全面に出ているのに対して、和田候補は県政・地方政治志向が強く出ていて、やっぱり対極の意見同士なのかなということ。

ローカリズム vs ナショナリズム的な感じなのかしら、とこれまたとぼけた一考。

そして数ある争点や公約に目を通している時、私の目を引いたトピックがあった。

リニア賛成?反対?


そう、ここで出てくるのがリニア建設だ。

そう、あの開通する開通すると言われて久しい、リニア鉄道である。
今はもう、ならぬ、今はまだなきリニアである!

工事はとっくの昔に始まっていて、私の親戚の家の真下で工事をやっててどうのこうのと話していたのももう数年前だ(数年…どころだろうか)。

にも関わらず、リニアはまだ開通していない。

工事がもう始まっちゃってる岐阜県に住む者としては、「今更やらないとか…」という雰囲気も否めない。

一方、岐阜県内の井戸の水位が工事の影響で下がったり、地盤の耐久性に疑問が残ったりと、不安の声があるのも確かだろう。

それでもやはり、「すでに着工されてるんだから」ともう後に退けない雰囲気は、やっぱりあるのだ。

これでは誰かの思うつぼだ、というのはよく分かる。これじゃ始めた者勝ちだ。でもかくいう私も「今さらリニア中止なんて…」と思っていた。
「もうどうしようもないじゃん、とっとと作っちゃおうよ。」と思ってしまっていた。

ちなみに江崎候補はリニア賛成派、和田候補はリニア反対派。

ここで安直なイマドキの若者ミロ、「とりあえずリニアができるなら江崎候補がいいんじゃね?」と考えた。

そろそろイマドキの若者たちに「勝手に代表するな!」と言われてしまいそう。ワカモノ劣等生のミロはそろそろ代表の座を退かないといけないかもしれない。

ビビディバビディリニア

リニアが出来ると、中津川から約1時間で東京に着く。現時点では中津川から名古屋まで一旦移動して1時間半ほど、そこからさらに新幹線で東京まで1時間半、乗り換えなども考慮すると最低3時間強かかる。つまりリニアは現在の移動にかかる3分の1の時間で東京に行ける。

だからなんだと思うかもしれない。だが地方に住む者にとって東京へのアクセスがここまで気軽になるのは魅力的だ。私もアメリカには羽田出発の飛行機で行くことが多いが、当日移動となるとかなり大変だ(とはいえギリギリ当日移動できる距離でありがたいが。)でも1時間なら当日移動でも余裕だろう。

名古屋飛ばしを喰らっても、もう平気だ。
ライブにも行けるし、バレエ・音楽などさまざまな公演も観に行ける。
東京でのインターンも、経費で宿泊費がおりないがゆえに、ほぼ始発で行ってほぼ終電で帰ってなんとか日帰りで済ませる…こともなくなる!

三大都市名古屋まで電車一本の中津川、でも渋谷は日本の東京なのだ!

ビバ!アイラブ!トーキョー!イエス!リニア!

それに、これはカソカソに過疎ってきている地方にとって、観光客を増やしたり、もっとうまくいけば岐阜から東京に通勤・通学(!?)する人を増やす絶好のチャンスだ。

地域活性やらなんやらと言っても、やっぱり若者は都会が好きだ。

「都会の香」をばらまけば、あら不思議、「ワカモノ」が寄ってくる~

私だって自分の故郷がどんどん少子化と過疎化のグラフにピッタリとまるで合同な図形のように当てはまっているのは感じている。

それに、子供たちもより様々な機会を得られるようになるのかもしれない。
有名ダンサーのワークショップ、バレエ公演、塾、ボランティア、より多様な子どもを支援できる学校…こういった機会はワカモノと同じくらい都会にあつまる習性を持っている。

「機会の格差」という言葉をよく耳にするようになって久しいが、それが改善されるのかもしれない。

遠距離恋愛をしているカップルだって!すぐ会えるようになるじゃないか!
バルス唱えてやるんだからな!

より早くヒト・モノが動く。それはよりヒト・モノが近くなるということ。
さっきは恋愛について茶化したが、それは家族であったり、気の置けない仲間であったり、師弟であったりするのかもしれない。

より早く、より近い社会だ。

ちょっと待って、MP(魔法力)足りてますか?

吾輩は隠れドラクエファンでもある。ドラクエ界隈どころかゲームをする人々の間では知らない者はいない用語だと思うが、ゲーム用語を日常言語として当たり前のように発するのはオタクの悪い癖なので一応説明を。

体力的なアレだ。
走ったら一時的に体力が減るように、魔法だって使ったら魔法力(MP)が減るのだ。

ちなみにこれはテストにも出なければ人生で一切役に立つこともない知識だ。

とにかく、リニアが魔法なら、私のMPはリニアを使用できる量ないといけないわけだ。

MP、それすなわち栄一であり諭吉である。

おにぎり2つで400円払うことに恐れおののいている私が!
新幹線が高いから色々キャンペーンをみて少しでも安くしようとしているこの私が!
リニアに乗る…だと…?

栄一および諭吉を、そんな簡単に見放すのか!?いや、見放す以前にそんなに栄一と諭吉は手元にいるか?

そして誰がリニアに乗るんだろうか。

リニアのある社会

リニアが飛行機のビジネスクラスくらいの値段だったらと想像してみよう。

まず、私は乗れない。乗れるのはいわゆるミドルクラス以上ではなかろうか。あまり想像できないが。

リニアで通勤なんて人々は、恐らく高級住宅街に住み、その高級住宅街に住む子どもたちは、学費の高い私立校に通うのかもしれない。

金持ちの親というものになったことがないのでわからないが、いわゆる「お受験」のカルチャーが根強いコミュニティであれば、私立校を求めるのは自然な気がする。

ここですでに、公立校と私立校、2つの離れた場所で子どもたちが育つ。

大人たちとしても、高級住宅街にはその街のコミュニティが、現存の地域コミュニティとは別でできるのではないだろうか。

リニアに乗れる人々は、東京という都会の良さと岐阜の山中という田舎の良さと両方を楽しむのだろう。

でも今リニアの駅予定地周辺に住む人々の何割がリニアを利用するだろうか。

私たちは、ただこうして別々に暮らし、むしろ経済格差による機会格差が明瞭になるだけではないだろうか。

早くて、近い、でも互いに互いから離れている社会。
経済的な状況によるグループ分けが、今現在よりも色濃くなる社会。

地域は本当に活性化するのだろうか?

早くて近くて離れた社会

新幹線も飛行機も、私の生活を便利にしている。
これらなくして、私はアメリカの大学に進学できたかわからない。

発展の財産を享受しておいて、身勝手だと思う。
でも、こんなに早く近くなる必要があるのだろうかと思ってしまう。

すぐに調べることができて、すぐに人と繋がれるスマホ。
離れた場所に住むパートナーを持つ私にとっての必需品である一方で、あまりにも簡単に世界中に何かを発信できてしまうことに不気味さを感じる。

それと同じだ。
確かに便利で素晴らしい。
でも今だって十分公共交通の便が整っているこの日本で、これ以上早くなる必要があるのだろうか。

私にはわからない。

私が伝えたかったこと

私はどちらの候補者も積極的に応援はしていない。

今回はリニアについて議論したが、冒頭に書いた通りリニアは争点の1つにすぎない。なので、反江崎候補でも、和田候補を応援しているわけでもないことははっきりと書いておきたい。

もっともっとたくさん考慮すべきことがある。
岐阜県民の有権者全員がきちんと各候補者の考えを吟味して欲しいと思う。
リニアと同じくらい、彼らの他の公約にも目を通してほしい。

ここまで書いておいてなんだが、私は別にリニアに反対でもない。
ずるく聞こえるかもしれない。だが、積極的に否定しようと思わないのだ。

ただ、出来て当たり前、建設された方が良くて当たり前だと、私はどこかで思っていた。

理由もなくいい悪いと判断していることほど怖いことはないような気がするのに、いざそうなっていても気づかないものだ。

私は、私のように、「もうここまで来たらリニア賛成派の人がいいんじゃない」と考えていた人に向けてこのブログを書いた。

別に考えた結果リニア賛成だろうと反対だろうと、どちらの候補者にどんな理由で投票しようと、私のあずかり知らぬところだ。

ただ、少しだけ自分の判断に疑念を抱くのも大切かな、と思う。

今日は投開票日。もし投票に行っていない有権者がこの記事を読んだのであれば、ぜひ投票に行ってもらいたい。





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