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【23号室の小悪魔】小悪魔って訳したの誰だよ
自炊のメリットの一つは、必然的に機械的な作業をする時間が出来ることだ。洗い物をしたり、食材を切ったりしている時、何かを観たり聴いたりできる。
そんなわけで少し前まで空き時間に観ていたドラマが「23号室の小悪魔」である。こちらはアメリカのABCで放送されていたコメディドラマだ。
ドリーマ・ウォーカーが演じるジューンはニューヨークに引っ越してきたものの、引っ越してきたその日に入社予定の会社が倒産。職を失っただけでなく、住む予定だった家も会社の所有する建物であったために差し押さえられてしまい、入ることすらできない。そこで慌てて別のアパートメントに入居することになり、クリステン・リッターが演じるクロエという女性のルームメイトになる。
そう、このクロエが「23号室の小悪魔」だ。
先に言ってしまうが、クロエは小悪魔なんてものではない。
小悪魔はタイトル詐欺だ。
オリジナルのタイトルは恐らくnoteに書いていい言葉ではないので書かないのだが、伏せて訳すなら「23号室のビ**を信用するな」である。
(ちなみに英語でも決して良い言葉ではないので、ABCでも放送時題名は伏字もしくは改名されていたそうだ)
クロエは詐欺もするし、ジューンと自分の父をくっつけようとするし、倫理観のぶっとんでるし、性に奔放な、とんでもキャラクターである。
ガチ悪魔、激やばガール、狂人である。
だがタイトルに「誰だよ」とまで言っておいて申し訳ないのだが、私でもこのタイトルを訳そうと思ったら「小悪魔」よりふさわしい翻訳はないのではと思う。
まず、ビ*チなんてそのまま書くわけにはいかないし、ク*女とか訳すのも英題から意味が微妙に違ってしまう。
だがそれだけではない。言動だけ見ればクロエはとんでも人間だが、同時にクロエはとんでもなく美人なのだ!激カワなのだ!
まずクロエを演じるクリステン・リッターは高身長でスタイル抜群・くりんとした瞳にパッチリまつげ、そして石原さとみレベルのぽってりとした唇。
その恵まれた容姿に加えて、ファッションセンスもピカ1。お洒落であか抜けたニューヨークガールなのだ。
このかわいらしさに目がくらみ、私は度々クロエのとんでも発言が「とんでも」であることに気づくまでに数十秒かかった。
クロエという未確認生物のようなキャラクターに説得力があるのは、間違いなくこの容姿によるものが大きいだろう。
それにクロエは悪魔というほど「悪意」はない。
どちらかというと倫理観やロジックが常人とかけ離れているのだ。
つまり何が言いたいかというと、クロエはやべー奴だが、容姿とユニークなキャラクターによって「小悪魔」に落ち着いているのだ。
「小悪魔」に訳した人、ブラボーである。
ちなみにこのドラマにおいてヤバいのはクロエだけではない。
登場人物たちがさも当然の顔をして発する一言一言が「ん!?」となるのだが、あまりにも自然に言うために数十秒たって「え?」となることが多々あった。
ユニークなキャラクターたちとあまりにも魅力的なクロエにドはまりし、すごい勢いで全て観終えた。
とはいえ、このドラマは「問題がある」ことは間違いない。
クリステン・リッターは激カワだが、同時に白人だ。
アジア人を含め一度もクロエ以外に「美しく魅力的な女性」として描かれている登場人物は出てこなかったように思う。つまり「白人」であるクロエ「のみ」が「美しい」のスタンダードとして描写されているのだ。
主なアジア人であるキャラクターはクロエに異常に執着している。「私が欲しいもの全部持っている」クロエと「せめて友達でいたい」というようなセリフもある。
これは正直よろしくないのではと思う。
念のため書いておくが、これはドリーマ・ウォーカーがクリステン・リッターに劣るとか、先述したアジア人のキャラクター・ロビンを演じるリザ・ラピラが美しくないという話ではない。リザ・ラピラは非常に美しいフィリピン系アメリカ人の女優だ。これは描写のされ方の問題である。
美=細身というイメージが描写されている側面もある。
また時々「これは10年前だから放送できたんだろうな」と思うようなジョークも多々ある。
ちなみにこのドラマでは妙に日本が出てくることがあるのだが
1)ちょっと古い海鮮を使っている寿司レストラン
2)なぜかクロエが「シタギ無し」という名前のキャラクターでマンガ化されており、そのマンガがなぜか日本で売れている
3)クロエがランダムに「遊んだ」日本人男性 (クロエは男性が去る時「アリガトー」と声をかけている)
この3つの描写である。ここから連想される日本のイメージはなんとなく伝わるだろうか。
これらの問題をなんとなく察しつつも、ドラマは最後まで観た。
白人中心的な描写やそれに対する意識は、この10年で変わってきたのだろう。だからと言って別に全てを否定する必要はない。大事なのは「楽しみつつ、批判的にみるべきところは批判的にみる」ことである。
そんなわけで、あらゆる意味で「イノセント」ではありえないドラマだが、私はそれでも小悪魔なクロエが大好きだ。
クロエみたいなルームメイトはごめんだけど。