雲間か幻燈
酔っているのかもしれない。
いや、長らく飲酒はしてないはずだ。
長い悪夢の続きを見ているのかもしれない。
いや、これが悪夢なのか正夢なのか、逆夢なのか、現実なのかさえ区別がついていない。
ただ分かるのは、一人浮遊感の中にいて、地に足を着けていないような行動を選択しているようだということだ。
正常な判断を下せていない。熱に浮かされているように、ふわふわと、今までであれば手を出さないようなことに手を出そうとしている。
条件が一つでも揃わなければ、決して近づかなかったはずの扉の前に立っている。
これは常道を踏み外し、転落する破滅への道なのか、それとも今までの変わり映えしない繰り返してばかりの日々を好転させるブレイクスルーに繋がるのか。
現実的ではないなと思う。
まったく、自分らしくないなとも思う。
それなのに、退き方も分からなくなっている。
もし、これが自分を傷つける選択だとしたら、転んだ後に立ち上がる気力はあるだろうか。
自分が盛大に転んだ時、手を差し伸べてくれる人なんて、失敗を笑って取り成してその場から連れ出してくれるような悪友なんて、いないだろうに。ああ、いない。
立ち上がれなくなるかもしれない。それが一番怖い。人には大したことではないことが、浅はかで、自分勝手で、そういう、いくらでも欠点が思いつく自分には、高く付くような気がしてしまう。
自分の勇気が分からない。
ここが自分の勇気を出す時なのかさえ分からない。
だから、悩むのだろう。
ここは雲間か幻燈なのか。