キメラ#ショートショート
宇宙人は大変に横着だから、地球の探索のため人の中に紛れ込むより単純な方法を見つけた。
人の中に自分たち宇宙人のcellを埋め込むのだ。
彼ら宇宙人は時間を操る術を持つ。光の速さを超え、地球に降り立ち、適当と思われる人間を捕らえ、その記憶を操作する。
人は彼らのcellが体内で自分と結び付き、根を張り、共存しているのに気づかない。
宇宙人キメラの生育により、宇宙人は地球の外側で人間が知る由もない空間で収集情報を元に地球ビジネスで栄えていく。
――この細胞は何か?
ついにその存在に気付いてしまう人間が現れる。
cellはあくまで細胞であり、自発性を持たない。人が拒絶しないよう、実害が出ないよう息を潜めている。気づかれず生息することがそれの任務であるためだ。cellは確認する宇宙人の操作なしには彼らと交信する手段を持たない。
宇宙人が操作し、人の反応を見るときもある。人の反応は宇宙人にとって高く売れる収集情報であるためだ。
見つけられたcellはついに取り出され、分断されようとした。
――ボカン!
cellは自爆して姿を消した。
すんでのところで異変に気づいた宇宙人がcellの存在を抹消したのだった。
宇宙人はcellを通じて瞬時に人間たちの記憶も消去した。
何ごともなかったように、手術は成功ですと囁き合っている。
何ごともなかったかのように。
何ごともなかったかのように地球は回っていく。