おひつじ座25度 サビアン
二つの意味の誓い
旅人は窓からの風を感じながら、思いました。
――自分の欲しいものは自分で掴みに行くしかない。それって、自分を幸せにするのは自分にしかできないってことだよね。
――ハッ!
「あなたの望みはあなたにしか分からない。」
門の外で聞いた声がリフレインします。
ボクシングの試合のテントから突然抜け出したこともチクリと頭をよぎりました。
「自分のご機嫌は自分で取る、か。うん、そうしよう。」
旅人は頭の中で思っていたことが知らぬ間に外に出ていて、独り言で決意表明をしていました。
「すてきな誓いね。」
透き通った声が聞こえた気がしました。
隣りをみるとパステルカラーのドレスの女性はこちらを見て微笑んでいるように感じました。
「自分自身を大事にすることは、周りを大事にすることにもなるのよ。」
旅人ははっきりと女性が話しかけてくれたことにうれしくなって、つい、くだけた感じで聞いていました。
「あなたは、もしかして豊穣の女神アブダンティア?だったりして?」
「……さーあ?」
からかうように明るくかわされた旅人は、ちょっと照れて、また窓の方に目をやりました。