見出し画像

Simple Man #8月31日の夜に

私は10代の大半を、どこかであきらめてしまっていたところがある。
自分をあえて「楽しい」という感情から切り離していた節がある。

そういう私がこの記事で何か言おうと思うのは、とくに10代の若い人にその夜は超えていけるよと微力でも背中を押してあげられたら、「今が苦しい」という理由で、消えるという選択肢をそう簡単に選んでほしくないという気持ちからだ。
その時はもうだめだと思っているかもしれないけど、
嘘じゃなく、その時もあらゆる可能性がまだ残っているから。私もそう信じたいから。

◇◇◇

苦しくなることもある、でもそれがあって今があると、まだ遠いかもしれないけれど、
心のどこかでいつかそんな風に思えたらいいなと、そういう気持ちもあるからきっと、
少し先延ばし先延ばしにしながら、いろんなものに出会えてきた。
遠回りしてばかりだよ。
でも、出会えて良かった、こういう自分じゃなきゃ出会えなかったかもしれないと思うものもあるよ。


私自身が不器用な10代を過ごしてきたからこそ出会えた、と思う素晴らしいものの一つに、Lynyrd Skynyrdというバンドの「Simple Man」という曲がある。
深夜、偶然ラジオを聞いていて、アコースティックギターの心地よい音、
訴えかけるような伸びのあるボーカルに、ラジオの方に思わず振り向かされてしまった。
最初の出会いはShinedownというバンドがカバーしたものだった。
心に刺さる歌詞。

それから少し経って、本家大本のLynyrd Skynyrdのバージョンを聴いた。
1973年とずっと前の曲なのに全然色褪せていない。むしろ漂う哀愁がかっこいい。
きらきらと混じり合うようなサウンドが、どこかなつかしくやさしい記憶が通り抜けていく感じを彷彿とさせる。
曲の歌詞の雰囲気のようにやさしく、それでいて大事なところは訴えかけるように、ボーカルの声が温かく届く。
やっぱりこの曲は歌詞がとくに好きだなと改めて実感させられた。

※現在もLynyrd Skynyrdは活躍しているのかなと思って調べたところ、バンドは存続していたが、ボーカルの人は人気絶頂の最中1977年の飛行機事故で亡くなってしまって、現在オリジナルメンバーは一人ということだった。


最初に曲を聞いたのは多分、感傷的な夜だった。
悲しい記憶や苦い思い出が頭の中をひしめき合って黒いものに支配されていた夜だった。
そういう夜は10代が遠くなった日々の中でも時折訪れる。
でも、そういう夜だったから、通り過ぎないで掴んでいた。私の琴線に引っかかった。

◇◇◇

「Simple Man」というこの曲は、

Mama told me when I was young.

という出だしから始まり、幼いころに母親が息子の自分に話してくれたこと、という風に歌が始まる。
まだ幼い一人息子を想う母親が、やさしく諭すように語る、そんな歌詞。


素敵な曲なので聞いてもらうのが一番いい。
(Shinedownの公式から、どうぞ。)


以下は、私が自分なりに感じ取ったところを、あんまり日本語として違和感がないように?訳してみたもの。意訳も多く、稚拙な訳かもしれないが、ニュアンスを感じとっていただけたらありがたい、と恥を承知で記すもの。

◆◆◆

幼いころ、母さんが言った。
「あんた、ここに来て座って。私が言うことをよく聞くのよ。
 今から言うことはいつかあんたを助けてくれると思う。」と。

「自分をいたわって、生き急がないでね。
 嫌なこともあるだろうけど、みんなそれはずっとってわけじゃないから。
 いい子(一人の女性)を見つけて。そうすれば大事なこと(愛)が分かるから。

 そして忘れちゃだめよ。いつだってだれかが空の上から見てるってこと。

 それから、誠実な人になってね。
 好きなことや頭で分かったことにとりつくろわない人でいてね。
 私のためにもできるよね。

 お金持ちへのうらやましさは忘れることよ。
 全部大事なものはここ(魂)にあるから。
 やろうとすれば、できるはずよ。
 心が満ち足りていてくれていればそれでいいのよ。

 誠実な人になってね。
 好きなことや頭で分かったことにとりつくろわない人でいてね。
 私のためにもできるよね。

 あんた、心配しなくていいのよ。自分のことはだんだんわかってくるものだから。
 良心にもとらない行いをすればそれでいいから。
 やろうとすれば、できるはずよ。
 心が満ち足りていてくれていればそれでいいのよ。

 誠実な人になってね。
 好きなことや頭で分かったことにとりつくろわない人でいてね。
 私のためにもできるよね。」

◆◆◆

simpleという言葉は日本語では拾いきれないニュアンスがある。
ぜいたくや華美との逆のイメージだったり、単純とか、簡素とか、素朴とか無邪気とか。
なかなか一言でしっくりくるイメージがなくて、上手く訳せなかったかもしれないけど、全部の意味をひっくるめて、
simpleでいいんだよ、と言ってくれるようなやさしい響きなんだと思う。


「間違えてる」の反対側の「正解」になりたくて、自分が好きじゃないものを好きだといったこともあったな、結局それは苦しくて、自分が良いと思うものを単純に選べれば良かったなとか、自分の心が満ち足りていさえすればとりつくろわずとも良かったんだな、とか、思い返してみたりもして。


私はまだ、失敗ばかりで今もまだ遠回りの途中かもしれない。
それでも、美しい旅の道連れを探しながら、時にその手を取りながら、少しずつ自分の中の「楽しい」を許せるようになってきた。


つまり、ここで言いたかったのは「難しく考えすぎなくていいよ」っていうことなのかもしれない。

◇◇◇
「Simple Man」
Lynyrd Skynyrd『LYNYRD SKYNYRD』
Shinedown『LEAVE A WHISPER』

最後まで読んでくださってどうもありがとうございました。