おひつじ座22度 サビアン
望みのものが待つ庭への門
旅人はテントを飛び出したつもりでした。
しかし、何かにぶつかって体が跳ね返えされました。
おでこをさすりながら前を見ると、それは大きな門でした。
後ろを振り返ると、テントは消えています。
絨毯も鳥たちも傍らにはいません。
「さっきはごめんなさい。」
どこからともなく声が聞こえます。鈴の音のように澄んだ声です。
「絨毯?」
旅人の問いに答えず、声は続けます。
「替わりと言ってはなんだけど……。この門の先には、庭が広がっている。そこに、あなたのお望みのものを待たせてある。つまりは、何でもあなたの望みのままになるところをご用意しているのです。」
「望みって何?」
「あなたの望みはあなたにしか分からない。全てあなたの望むもの……、そう、望み。あなたが心の中で望んだもの、欲しいと思ったもの、考えたものが待っている。そう、素敵な場所。」
旅人は怖くなりました。
どこから聞こえるのかわからない声だけではなくて、考えたことが思ったことが具現化されて門の先で待っているということに。
旅人の心にまた別の思いもめぐります。
でも、ラッキーだよ。はっきり主張してよかったんだよ。きっとあのまま、なあなあに自分に絨毯や鳥たちを付き合わせてしまうよりも、きっとよかったはず。門を開ければこのもやもやした気持ちもきっと解決する。
はたして本当のところ自分は何を望んでいるんだろう、この門を開ければ分かるんだ。はっきりする。自分のことを少しまた知ることができる。
旅人は門を開ける決心しました。
この門は望みのものが待っている庭につながっているらしいから、どうせならと幸せになる覚悟を持って旅人は門を開けました。