文章が書けるだけがライターじゃない。ライターの技能をタイプ別に分けてみた
ライターとして営業はしていないのだけれど、ときどき知り合いのツテで執筆依頼を頂戴する。その多くは、調査仕事だ。自分からは興味を持たないようなお題を頂戴すると、けっこう面白い。
ライターにもいろんなタイプがある。もと図書館職員の私は、どうやら「とことん調べ尽くさなくては気が済まない」図書館司書としての特性を評価してもらっているみたいだ。
ライターのスキルは、「文章が書ける」ことだけじゃないのだ。ひとくくりにまとめられてしまうことも多いけれど、実はいろんなタイプがある。ライターによって、それぞれ得意分野は違うはずだ。たとえば、こんなふうに。
1. 誰が読んでもわかりやすい、平易な文章が書ける「解説者」
これがやっぱり、ライターとしての基礎能力だと思う。独特な言い回しや個性はそぎ落として、誰が読んでもわかりやすいように書く。文章に「自分らしさ」を出していくのは、その次の段階からだ。書道とか、古典芸能とかに似ている。まずは、お手本や型を真似て、自分の中に土台をつくっていく。
2. 興味を持って、とことん調べ尽くす「探索者」
つまりは、調査能力だ。インターネットで誰もがどこからでも情報にアクセスできるようになったとはいえ、求めている情報にたどり着くにはコツがある。そして集めた情報が、信頼できるものかどうなのかを判断する力も。ネットには載っていない情報をどうやって集めてくるか知っていることも強みになる。
3. 一次情報を自分でつくれる「発掘者」
これができる人は一握りだ。すでにネットや本にまとめられている情報を集めるのじゃなくて、自分で情報をとってくる。または、自分の経験を情報に変えていく。本当は誰でもできることなのだけれど、意外と見落としがちのスキルだと思う。
4. 会話からエッセンスを引き出して読みやすくまとめる「傾聴者」
対談やトークイベントでの会話は、そのまま文字に起こしただけだと膨大で読みづらいものになる。なので、対話のエッセンスを抽出し、臨場感を残したまま文章にまとめる。「ライターが勝手に取捨選択しないで、そのままの状態のほうがいいのだ」という意見も見かけたことがあるが、文字に起こしただけの原稿を興味を持って読める人なんて稀だ。
5. 会話を通してインタビュイーの本質を引き出せる「カウンセラー」
急にカタカナになってしまった(”○○者”というカタチで思いつかなかった)。「インタビュアー」でもいいのかもしれないが、ただ質問をするだけだったら、会話ができる人ならだれでもできる。そこから一歩踏み込んで、インタビュイー(インタビューされる側)も思ってもいなかった本質を引っ張り出せる力を持っていると重宝される。「カウンセラー」っていうのもちょっと違うような気がするが、とりあえず思いつかなかったもので……。
6. ユーモアを持っている「芸人」
自分の個性を押し出し、その人にしかできないもはや「お家芸」のような書き方をするライターもいる。3.の発掘者のように、身を張って一次情報を発掘する、その瞬間を切り取ってユーモラスにまとめる。
これらの能力を掛け合わせると、ライターとして仕事ができるようになる。もちろん、マルチにできるライターは強いだろう。さらにここに「写真も撮れる」とか「校正能力に長けている」とか、「デザインもできる」とかを掛け合わせているライターもいる。
一方で、全部できるようになる必要はない、と思うのだ。自分に持っている特質を引き延ばし、不得意なところはチームで補い合うという働き方もあるじゃないだろうか。
例えば私は、インタビューが苦手だ。そもそも、「人と面と向かって話すのが苦手だからライター仕事を始めた」みたいなところがある。ライターを始めたばかりの頃は、インタビューの仕事を「それはちょっと苦手でして……」と断ってばかりいたけれど、なかなか逃げ続けてもいられなくなった。気がつけば、インタビューの仕事がいちばん多くなっていた。
インタビューに、会話好きの編集者さんが一緒に来てくれると、本当にありがたい。5.「カウンセラー」は編集者に任せて、私は4.「傾聴者」に専念すればいいのだから。一人で両方できるのが理想なんだろうけれど、そこまで抱え込まなくてもいいような気が最近はしている。
最近いただく仕事は、2.「探索者」になって、ガツガツ調べてはまとめるタイプのものだ。大量の情報を頭の中で煮詰めて、ジャムを作っていくような作業になる。これはこれでとても面白い。
書き手としては、3.「発掘者」になることに、憧れ続けているのだけれど。