あの日のこと⑥
この辺からは、酔っ払っていてほとんど覚えていない。
どういう流れか気付いたら前のお店をでて、5人でどこかに向かって歩いていた。
数メートル先には、明らかに怒り心頭、頭から湯気が見えるくらいの迫力で男友達2人と3人並んで歩いている亜美。
私と彼はぴったりくっついて、手をつないでいた。
そりゃ、亜美は面白いはずがない。
私が「亜美さん、私のこと邪魔だろうね。はじめからずーっと邪魔だったろうね。」とつぶやく。
「別にいいんじゃない。」と、彼。
そうなのだ。
別に亜美は彼の恋人でもなんでもない。
知り合い。
私も亜美も同じ、彼のただの知り合い。
亜美は彼と知り合って数年。何度も会って、お酒飲んだり出かけたり。
私は、出会って数ヶ月。この日で会ったのは3回目。しかも、ろくに話したことはなかった。挨拶程度。
それだけの違い。
彼と亜美の間に他に何かあるのかは知らない。
そもそも私は2人のことをほとんど知らない。
彼が隣にずっといてくれたのは、酔っ払ってふらふらしてる私が転んだりしないように支えるためだったんだろうな。
やっぱり優しい。
どんな理由であれ、私は幸せだった。
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