あの日のこと⑦
次のお店に着いた。
亜美はめちゃくちゃ機嫌が悪い。
「私、帰ろうかな…」
「気にしなくていいんじゃない?」と、彼。
そんなやりとりをしながら、2人でお酒を飲んでいた。
正直、記憶はほとんどない。
お前、いい加減、帰れよ!!!
亜美がキレた。
ここだけは覚えている。
私はベロベロに酔っ払って1人帰った。
彼と彼の友達は、次に人に会う予定があることを私は知っていた。なので、そこはすぐに切り替えた。
私はブチギレてる亜美を見ながら、はいはいと、さっさと帰り支度をした。
帰り際、亜美の真ん前で思いっきり彼とハグしながら、お互いに耳元でコソコソ話をして別れた。
そこまでしか覚えていない。
帰り道、全身に残る彼の匂いと感触が愛おしくてたまらなかった。
誰もいない公園で、自分のTシャツに残る彼の匂いを探しながら泣く私を、お月様が呆れたように見つめていた。こんな時でもお月様は優しい。
アルコールに浸って、お酒がなかったら何にも出来なかった、大昔の夏の夜の思い出。
終わり
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