(結果編1)各国の在日大使館の地震ツイートを見比べてみた
各国の在日大使館のTwitterアカウントが2/13の地震についてどういうツイートをしているのか、全部調べてみた。この記事は結果編。調査方法ややろうと思ったきっかけについては以下へどうぞ。
アカウント開設状況
まず、201カ国のうちで在日大使館のアカウントを開設していたのは92カ国。
(そのうち6カ国はここ1年半ほどツイートをしておらず、今は使われていないと思われるが上記に含めた)
アカウントがあった国を地域ごとに見てみると、
・アジア:11/25カ国(44%)
・アフリカ:11/54カ国(20%)
・欧州:39/55カ国(71%)
・大洋州:4/16カ国(25%)
・中東:13/16カ国(81%)
・北米・中南米:14/35カ国(40%)
となった。
中東は、分母がそもそも16カ国と少ないので一概には言えないが、ほとんどの国が在日大使館のアカウントを持っていたので驚いた。中東で大使館アカウントがないのはイエメン・シリア・レバノンの3カ国。レバノンのアカウントがないのは意外だった。ゴーン事件でアカウントを削除したのかと思ったが、そういうわけでもないようだ。
日本での知名度や在住している人の数に比例するわけでもないらしく、例えばアジアではフィリピンやベトナム、マレーシア、シンガポール、カンボジアなどは大使館のアカウントが見つからなかった。すでに民間の情報網が発達していて大使館のアカウントを開設する必要がないのだろうか(臆測)。大使館の公式アカウントとなると情報の責任が重くなるし、誰をフォローするしないを決めたりリプライに対応したり、いろいろと面倒なのかもしれない(臆測)。
ツイート調査結果の概要
(ツイートの分類や呼び方については準備編へ)
92カ国のうち、今回の地震ツイートをしたのは以下の22カ国。
インド、イラン、インドネシア、オマーン、オーストラリア、カナダ、サウジアラビア、スウェーデン、スロベニア、台湾(中華民国)、中国、ドイツ、トルコ、トーゴ、バーレーン、ベネズエラ、ベラルーシ、ポルトガル、ホンジュラス、メキシコ、ヨルダン、ロシア
上記21カ国のうち、お見舞いツイートだけをしたのは以下の3カ国。
インド、中国、ドイツ
上記21カ国のうち、自国民ツイートをしたのは以下の19カ国。
イラン、インドネシア、オマーン、オーストラリア、カナダ、サウジアラビア、スウェーデン、スロベニア、台湾(中華民国)、トルコ、トーゴ、バーレーン、ベネズエラ、ベラルーシ、ポルトガル、ホンジュラス、メキシコ、ヨルダン、ロシア
ではこれらの結果をねちっこく見ていく。
国ごとの地震ツイート
アカウントを持つ92カ国のうち22カ国が地震ツイートをしているので、全世界でのツイート率は24%。
地震ツイートをした国を地域別に見てみる。
・アジア:4/11カ国(36%)
・アフリカ:1/11カ国(9%)
・欧州:6/39カ国(16%)
・大洋州:1/4カ国(25%)
・中東:6/13カ国(46%)
・北米・中南米:4/14カ国(29%)
内訳は以下の通り。
・アジア:インド、インドネシア、台湾(中華民国)、中国
・アフリカ:トーゴ
・欧州:スウェーデン、スロベニア、ドイツ、ベラルーシ、ポルトガル、ロシア
・大洋州:オーストラリア
・中東:イラン、オマーン、サウジアラビア、トルコ、バーレーン、ヨルダン
・北米・中南米:カナダ、ベネズエラ、ホンジュラス、メキシコ
欧州と中東が6カ国で並んだ。しかしツイート率は中東がトップで46%。中東で在日大使館のアカウントを持っている国の約半分が地震に関して何らかのツイートをしていた。
中東以外は、概ね日本からの距離が近いほどツイート率が上がっているように見える。これは感覚的に納得できる気がする。
意外だったのがトーゴで、アフリカで唯一ツイートがあった。ただ、フランスの新聞社の速報を共有しているだけなので、他の大使館からのツイートに比べると少し情報が薄い。結果編2に詳しく載せた。
ではここから各国大使館の自国民ツイートについてねちっこく見ていく。いろいろ違いが出て興味深かった。
自国民ツイートに含まれる要素
意外ではないが、ツイートは以下の3つの情報が含まれていた。
・事実:地震があったこと、震度や震源に関する情報など
・指示:自分の自治体に従って行動したり、公的機関の情報を探したりしましょうという指示
・緊急連絡先の告知:大使館の電話番号など、困ったらどこに連絡すればいいかの告知
ツイートはほぼこれらの組み合わせで成り立っており、冷静に自国民に呼びかけているようだった。数で見ると事実のみツイートが最も多く、次いで事実と指示と緊急連絡先の告知を全部載せたツイートだった。なお、地震に関するニュースをリツイートだけした国が2カ国あったが、これは事実のみのツイートと見なした。
全部載せの例:サウジアラビア大使館のツイート
事実と指示の例:スウェーデン大使館のツイート
指示だけの例:スロベニア大使館のツイート(スロベニア語・日本語・英語で同じ内容を連ツイートしている)
自国民ツイート時刻
ほとんどが翌日2/14中までには在日自国民に対してツイートをしていた。さらにざっくり分けると、2/13晩のうちにツイートする国と2/14の昼にツイートする国に二分化でき、2/14の夕方や2/15のツイートはあまり見られなかった。地震発生が土曜日の深夜=大使館が稼働していない時間帯のど真ん中だったことが影響している可能性はある。
各国大使館におけるTwitterの運用は分からないが、朝になっていろいろ状況を整理して、自国と連絡を取り、昼頃に「よしツイートしておくか」という感じだったのだろうか(妄想)。2/14の夕方頃になるとさすがに落ち着いてくるし、今さらツイートしなくていいよね、という雰囲気になりそうだ(妄想)。
なお、リツイート時刻は私には見ることができないので、リツイートだけの国は不明とした。
自国民ツイートの要素と時刻の関係
ツイートが早ければ早いほど、前述の3要素をすべて含んだものが多かった。例えば前述のサウジアラビア大使館のツイートもその一例だ。
地震発生から最も早く自国民ツイートをしたのがオマーン大使館。テキストで指示と緊急連絡先の告知、震源やマグニチュードは画像で共有していた。
他にもバーレーン大使館や、
ヨルダン大使館
などが、その日の晩のうちに全部載せのツイートをしていた。(午前2:00はその日の晩と見なした)
事実と指示は自国民ツイートの中にまんべんなく見られたが、緊急連絡先の告知ツイートは地震発生から時間が経つほど少なくなった。翌朝になればさすがにもう慌てている人は少ないだろうし、「緊急」連絡先をあえてツイートする必要はないから当然かもしれない。
国ごとの自国民ツイートの早さ
ツイートが早かった順に見てみる。
※地震発生:2021/02/13 23:08
・オマーン:2021/02/13 23:26
・サウジアラビア:2021/02/13 23:27
・トルコ:2021/02/13 23:40
・トーゴ:2021/02/13 23:48
・台湾(中華民国):2021/02/14 0:13
・バーレーン:2021/02/14 0:54
・ヨルダン:2021/02/14 2:42 ↑ここまでだいたい当日の夜
・メキシコ:2021/02/14 5:18 ↓ここからだいたい翌日
・ポルトガル:2021/02/14 8:37
・イラン:2021/02/14 9:52
・ロシア:2021/02/14 11:00
・インドネシア:2021/02/14 11:04
・スロベニア:2021/02/14 12:41
・スウェーデン:2021/02/14 12:48
・カナダ:2021/02/14 13:51
・ベラルーシ:2021/02/14 14:49
・オーストラリア:2021/02/14 15:56
・ベネズエラ:不明(RTのみのため時刻が取得不可)
・ホンジュラス:不明(RTのみのため時刻が取得不可)
上の方に例として挙げたツイート例は中東が多かったが、それは中東の大使館のツイートがとても早かったからである。なんと、地震ツイートをした中東の6カ国はすべて上位10位に入っていた。緊急時とはいえ大使館が稼働していない週末に、なぜ中東の動きが早いのだろう。
そういえば、イスラムの暦では金曜日と土曜日が休日に当たる。なので2/13の夜は「日曜の夜」のような感覚なのだろうか?…といっても日曜の夜に深夜まで仕事するぞーという気になるわけではないし、そもそも在日大使館は日本の休日に従うはずなので関係はない気がする。
念のためツイート時刻を現地中東のタイムゾーンに照らし合わせてみたが、おおよそ2/13(金)の18:00〜20:00くらいであった。現地の時間感覚だと「土曜の夜」に当たると思うので、なおさらこれは関係なさそうだ。うーん、なぜだろう…。気になる。
欧州諸国に関してはほぼ一夜明けてからのツイートとなり、詳しい情報を載せてツイートしている。津波の心配はないこと、余震が続くおそれがあるので長距離移動は避けることなどを呼びかけるものが多い。
面白いのがポルトガル大使館で、地震に関するツイートはこれだけ。
この飛び先は気象庁のポルトガル語版ページだった。災害時に見るには少しデータに寄りすぎている気はするものの、情報の信頼度は最も高いはずだ。「ちゃんとした情報を見てください」とだけ言うよりも却って親切なのか。
なお、ポルトガル大使館のアカウントは日本向けらしく、これ以外はポルトガルの観光や文化に関する日本語ツイートがほとんどだった。自国民に向けたツイートの形式が決まっておらず、何はともあれ早く情報発信しなくては!と思ったのかもしれない。大使館の人は大変だ…。
自国民ツイートの早さと在日自国民の数
ツイートが早かった順に、在日自国民の数と、分母となった201カ国の中で何番目に多いかを記す。在日自国民が多ければその分ツイートが早くなるのでは?と思ったが、そういうわけでもないようだ。
・オマーン:50人(148番目)
・サウジアラビア:723人(63番目)
・トルコ:7058人(27番目)
・トーゴ:65人(134番目)
・台湾(中華民国):60449人(9番目)
・バーレーン:45人(151番目)
・ヨルダン:246人(93番目) ↑ここまでだいたい当日の夜
・メキシコ:2980人(38番目) ↓ここからだいたい翌日
・ポルトガル:655人(68番目)
・イラン:4289人(30番目)
・ロシア:10427人(25番目)
・インドネシア:67051人(7番目)
・スロベニア:115人(119番目)
・スウェーデン:1695人(46番目)
・カナダ:10949人(24番目)
・ベラルーシ:380人(82番目)
・オーストラリア:11018人(22番目)
・ホンジュラス:161人(107番目)
・ベネズエラ:611人(71番目)
出典:国籍・地域別 在留資格(在留目的)別 総在留外国人 2020年6月調査に記載されている、総在留外国人の総数。
オマーンやトーゴ、バーレーンは在日自国民が50人くらいしかいないのにすぐツイートをしているので驚いた。在日自国民がどれくらい大使館のアカウントをフォローしているかは分からないが、少ないために自国民に対して手厚く対応したいという気持ちが出るのだろうか(妄想)。
といっても在日自国民とツイートの早さにはあまり関係がないようだ。そもそも自国民が多くても地震ツイートをしていない、アカウントを開設していない国も多いし、これを以て傾向をどうたら言うのは難しそうである。
ちなみに、在日自国民が10万人以上いる国でアカウントを持っているのは中国・韓国・ブラジルの3カ国だが、どの国も自国民に向けてツイートはしていなかった。もしかしたら、「国籍は自国のままだが日本に住んで何十年」「大使館からの情報よりも自治体からの情報を重視する」という人が多いのかもしれない。
なお、在日自国民数がもっとも多い中国は2/13の晩にお見舞いツイートをしている。もしかしたら自国民向けには微博(Weibo)とかで発信しているのかもしれないと思ったが、軽く探した限り大使館公式アカウントはないようだ。
その他気になること
他にも、気になる事項はいくつかある。
・在日大使館の場所が関係する?
・その国のTwitter利用率やSNS利用率はどうか?
・アカウントは日本向けか自国民向けか?
・ツイートが早かった国は、大使館が「頼られている」ということか?
・その国の経済状況はどうか?
・その国から来日する人の目的でもっとも多いものは何か?
・ツイートの有無や内容は、対日関係・年数によっても左右される?
・対日だけでなく、各国間の関係によるか?
・逆に各国の日本大使館はこの地震をツイートしているか?
が、くたびれたので調査はいったん終わりにしたい。
長くなったので続きは以下へ。個人的に気になったツイートを勝手に紹介する。
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