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[カレリア民話] おじいさん、おばあさんとリス(UKKO, AKKA TA ORAVA)

おじいさん、おばあさんとリス

 あるところに、もう年老いたおじいさんとおばあさんがいました。彼らはペチカの上で寝始めました。家の屋根にリスがやって来ました。カタカタ音をたてたり、ガリガリひっかいたりするので、夜の平和をもつことができません。おばあさんがおじいさんに言いました。
―家の屋根にワナをしかけておいでよ、リスが引っかかるかもしれない。

 おじいさんは家の屋根にあがると、ワナをしかけました。家の中に戻ってくると、横になりました。さて、すぐにリスがふたたび屋根にやって来ました。そしてワナに引っかかりました。そこでワナ(の板)をガタガタさせました。おばあさんがおじいさんに言いました。
―リスはもうワナに引っかかってるよ、取っておいで。

 おじいさんは屋根にあがると、リスをワナから外し始めました。ところがそこで、おじいさんとリスの諍いがおきました。リスがおじいさんの耳を打ちつけると、おじいさんは屋根から落っこちて、死んでしまいました。リスは家の外の角からソリをとってくると、ソリにおじいさんを乗せました。そうしておじいさんをソリに乗せ、引っ張っていきました。ウサギがやって来て、リスに尋ねました。
―リスさん、何を運んでいるんだい?
リスは言いました:

― 運んでいるのはおじいさん、善良な男
 家の屋根にトラバサミをしかけて
 天井にワナをしかけて
 自分がトラバサミに引っかかった
 ワナにひっかかった
 オイラの前に、森の駆けめぐる者の前に
 富の毛皮をもたらす者の前に
 朝霧の中をさまよう者の前に
 夕闇の中を素早く動く者の前に

ウサギは言いました。
―運ぶのに、私も連れて行ってよ。
リスは言いました。
―おじいさんをバラバラに食いちぎっておくれ、そうでなければ2人で運ぼう。
そうして出発しました。しばらく運んでいくと、オオカミがやって来て尋ねました。
―ウサギさん、何を運んでいるんだい?
―私じゃないわ、リスさんが運んでいるのよ、とウサギは言いました。
オオカミは尋ねました。
―リスさん、何を運んでいるんだい?

― 運んでいるのはおじいさん、善良な男
 家の屋根にトラバサミをしかけた
 天井にワナをしかけた
 オイラの前に、森の駆けめぐる者の前にさ
 富の毛皮をもたらす者の前にさ
 (でも)自分がトラバサミに引っかかった
 ワナにひっかかった

リスはオオカミに言いました。
―おじいさんをバラバラに食いちぎっておくれ、そうでなければ一緒に行こう。
そうして少しの間、運んでいきました。クマがやって来ました。
―オオカミさん、何を運んでいるんだい?
―僕じゃないよ、ウサギさんが運んでいるんだよ。
―ウサギさん、何を運んでいるんだい?
―私じゃないわ、リスさんが運んでいるのよ(リスさんが主よ)。

リスはクマに言いました。
―おじいさんをバラバラに食べておくれ、そうでなければ一緒に行こう。
クマはソリに頭の一部しか残らないほど、おじいさんを食べてしまいました。
キツネがやって来て尋ねました。
―クマさん、何を運んでいるんだい?
クマは言いました。
―オイラじゃないよ、オオカミさんが運んでいるんだ。
オオカミは言いました。
―僕じゃないよ、リスさんが運んでいるんだよ。
―リスさん、何を運んでいるんだい?
リスは言いました。

― 運んでいるのはおじいさん、善良な男
 家の屋根にトラバサミをしかけた
 天井にワナをしかけた
 オイラの前に、森の駆けめぐる者の前にさ
 富の毛皮をもたらす者の前にさ
 朝霧の中をさまよう者の前にさ
 夕闇の中を素早く動く者の前にさ
 (でも)自分がトラバサミに引っかかった
 ワナにひっかかった

リスはキツネに言いました。
―さあ、おじいさんを最後まで食べてしまって。
キツネは、おじいさんの最後の頭の部分を食べました。
空っぽのソリをみんなで運んでいきました。
クマが言いました。
―お腹が空いたな。1番小さいもの、1番小さいものを食べてしまおう!

そうして、リスは食べられてしまいました。ふたたび少しの間運ぶと、またしてもクマは言いました。
―お腹が空いたな。1番小さいもの、1番小さいものを食べてしまおう!
そうして、ウサギが食べられてしまいました。
キツネはオオカミに言いました。
―逃げよう。クマが僕たちも食べてしまうよ。

オオカミとキツネは、走って森へ逃げていきました。クマはひとりで空っぽのソリを運んでいき、言いました。
―お腹が空いたな。1番小さいもの、1番小さいものを食べてしまおう!
後ろを振り返りましたが、空っぽのソリをのぞいて、道をともにする者は誰もいませんでした。
クマはひどく怒りました。ソリの木をこなごなに打ち壊すと、自分も森へ入って行きました。
これで物語はおしまいです。

単語

kiukua [名] 炉, 暖炉, かまど
lovata [動] ガタガタと音をたてる, ガタガタ揺らす
kravata [動] ガリガリとひっかく, 削る
rauha [名] 平和, 安寧
lautani [名] 板, わな
torevuttoa [動] 争う
kirvota [動] 落ちる, 落下する
šalmo [名] 家の外側の角
ahkivo [名] (木材などを馬で搬出するための)そり式の運搬具
pihet [名][複] 釘抜き, ひっかけワナ
karva [名] 動物の毛
kantaja [名] 運ぶ人, もたらす人
huuvveh [名] 霜, もや, 霧
hämärä [形] うす暗い, 灰色の, 陰気な
häklätä [動] 素早く動く/曖昧に話す, 無駄口をたたく
haukata [動] 食いちぎる, かじる
palani [名] かけら, ひとかけら
lyöttäytyö [動] 一緒になる, 合流する, 仲間入りする
isäntä [名] 所有者, 主, 主人
joukko [名] 一団, グループ, 群れ
šiäntyö [動] 怒る, 憤慨する
pahanpäiväni [形] 悪い, ダメな
šäpälehiksi [副] 粉々に

出典

所蔵:ロシア科学アカデミー カレリア学術研究所(KarRC RAS)
採取地:カレヴァラ地区のアロヤルヴィ(ペトロザボーツクで録音)
採取年:1947年
AT 20B

日本語出版物

日本語での出版物は見当たりません。

つぶやき

残酷なお話がテンポよく軽妙に語られる民話の例ですね。

何を運んでいるのか尋ねられたリスが答える言い回しは、頭韻、脚韻、反復が見事に駆使されていますね。民話では特にヴィエナ・カレリアでこうした言い回しがみられます。残念ながら韻をふんで訳すまではいきませんが。いずれこの辺りも配慮した上で、訳を推敲したいものです。

>> KARJALAN RAHVAHAN SUARNAT(カレリア民話)- もくじ

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