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[カレリア民話] 穀粒から鶏へ…(JYVÄSTÄ KUKKO...)

穀粒から鶏へ…

 昔、おじいさんとおばあさんがいました。彼らが亡くなると、1人息子と1粒の穀粒が残されました。息子は穀粒を持って世界へと旅立ちました。最初の宿にやって来ました。穀粒を保存しておくよう、(主人に)渡しました。しかし、夜の間に鶏がその穀粒をついばんでしまいました。翌朝、(男が)穀粒について尋ねましたが、もうなくなっていました。彼は鶏を要求し、そして鶏を手に入れました。

 2番目の宿にやって来ました。そこで鶏をヒツジたちと一緒にしておきました。ヒツジたちは鶏を角で突いたので、鶏は死んでしまいました。男は(宿の)彼らからヒツジを手に入れました。3番目の宿で、ヒツジは雄牛たちの中に入れられ、殺されてしまいました。男はふたたび雄牛を手に入れ、旅を進めました。翌日、雄牛は雄馬の中に入れられ、殺されてしまいました。そうして男は宿家から雄馬を手に入れました。

 男は道に出ました。そこで死んだ老婆を見つけました。彼は老婆を連れ、村の井戸へ行くと、井戸のあたりに死んだ老婆を座らせました。娘が水を求めてやって来ました。
ー これは、どなたですか?
― 母なんだ。ひどく汗ばんだので、熱をさまそうとしているんだよ。彼女は耳が良くなくてね。
 娘が(老婆の)腕を動かそうと近づくと、死んだ老婆は地面に倒れました。男は言いました。
ー母を殺したな、(代わりに)私の妻になるんだ。

 そうして妻になりました。しばらく暮らし、3人の息子を授かりました。ある時、彼を食事に呼ぶため息子(長男)が耕地にやって来ました。父は言いました。
― ある時、穀粒が鶏に、鶏がヒツジに、ヒツジが雄牛に、雄牛が馬になって、馬から見知らぬ死人が生まれ、見知らぬ死人が若い娘になったのさ。
 次男にも、三男にも(男は)同じように話しました。妻は夫が気違いになったと思い、去って首を吊ってしまいましたとさ。

単語

n'okkie [動] くちばしでつつく, ついばむ
puškie [動] 角で突く
kaivo [名] 井戸, 泉
issuttua [動] 座らせる, 席につかせる
hieštyö [動] ひどく汗ばむ, 汗だくになる
jähtyö [動] 冷える, 冷める
romahtua [動] ころげ落ちる, 倒れる, ひっくり返る
kynnös [名] 耕作地, 耕地
miero [名] 世界, 見知らぬ人, 村, 共同体
neito [名] 娘, 乙女
neitoni [名] 娘, 乙女
keino [名] 方法, やり方
huima [形] 木の狂った, 理性を失った, 気違いじみた
hirttäytyö [動] 首つり自殺する

出典

所蔵:ロシア科学アカデミー カレリア学術研究所(KarRC RAS)
採取地:ヴェロモルスキー地区のコンパコヴォ村
採取年:1937年
AT 170 (2034F)

日本語出版物

日本語での出版物は見当たりません。

つぶやき

以前紹介した民話「白樺ぞうり」の前半部と同じ話型です。小さなものから徐々に大きなものへと財をなしていきますが、最後には破滅を迎えてしまうというオチがつきもののこの話型ですが、この採話だと男自身が死に至るわけではありません。

カレリアの他の地で採取された類話では、男は裕福な家から財と娘をもらい、やがて男からどのように金持ちになったかを聞いた妻が湖に身投げして終わっています。不幸になるのはどうも、女性(妻)だけのようです。「白樺ぞうり」では財をなしたおばあさん自身が不幸になりますが、こちらも女性ですね。何か関係があるのでしょうか。

次から次へと文章を継ぎ足していく語り口は、「[カレリアのことば遊び] おんどりとめんどり」で紹介したつみあげ歌と同じですね。口に出して読むとリズムがいっそう感じられて楽しいです。

>> KARJALAN RAHVAHAN SUARNAT(カレリア民話)- もくじ

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