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[カレリア民話] ライ麦の穂(RUKEHEN TÄHKÄ)

ライ麦の穂

昔、やもめ暮らしのばあさんがいました。ばあさんには、9歳になる娘がいました。(あるとき)娘は、道に沿って進んでいくとライ麦の穂を見つけるという夢を見ました。そのライ穂は手の中で育ち始め、もともと完全な束があったかのように、どんどんと成長しました。年老いたおじいさんが杖を持って娘のもとにやって来ると、言いました。
―それはお前さんの幸せの種だ、お前はとても幸せになるだろうね。
そうしておじいさんは彼女の肩のあたりをコツコツと打ちました。娘が驚いたところで、目が覚めました。

(ある日)娘の家に、裕福な家の娘が乳母を探しにやって来ました。やもめ暮らしのばあさんの娘は、とても賢く感じの良い子で、誰もが彼女を13~14歳くらいだと思いました。裕福な娘は、やもめ暮らしのばあさんの娘に、女中になるよう頼みました。そうしてばあさんは自分の娘を(裕福な)娘にやり、娘は乳母になるために出発しました。それから娘は2~3年働き、すべての仕事をとても上手くこなしました。雇い主の家の人たちも娘をとても気に入り、自分の娘のように思っていました。

(ある)日曜日に、娘はベリーを摘むために森に送り出されました。娘は歩きまわってカゴいっぱいにベリーを取ると、もといた場所に戻り始めました。すると道でとても大きなライ麦の穂を見つけ、すぐに夢を思い出しました。娘は家に帰ると、言いました。
―ベリーを取ってきたわ、それにライ麦の穂を見つけたのよ。

主人と一緒に穂をきれいにし、穀粒を数えました。そこには82粒の穀粒がありました。こんなにも立派な穂はこれまでに見たことがない、と主人は驚きました。娘は穀粒をぼろきれで包むと、春になったらこれらの種をまく土地が欲しいと主人に言いました。

主人は、「もちろん、お前に(粒と同じくらいの)うんと大きな畑を与えようじゃないか」と、声を出して笑いました。娘は主人にこんな提案をしました。
―もし20年以内にこの穂から多くの穀物が育って、その畑いっぱいに種をまくことができるほどになったら、そうしたらその畑は私のものになるのよ。
主人は笑って言いました。
―もし20年で畑が(お前が言うように)穀物でいっぱいになってなかったら、そのときお前は20年、無給で私に仕えるんだぞ。
娘は契約書をつくるよう提案しました。

最初の年に、娘は82粒の種をまきました。それぞれの種から8~9本の茎が育ち、どの茎にも多くの穂が実りました。秋になって娘がすべてを脱穀すると、穀物はほぼ袋いっぱい分になりました。(娘は(契約書の)文書を大切にしまっておきました。)そうやって娘は毎年、自分の(が収穫した)穀粒をまいていき、18年で主人の畑すべてにまくことができるほどの多くの穀物を収穫しました。

それから主人はその座から追いやられ、乞食として世界をめぐる羽目になりました。娘はその地区の地主になりました。(一緒に)暮らすために、自分の母親を連れてきました。今でもそうして暮らしているでしょう、おそらくは明日もね。

単語

tähkä [名] 穂
lyyheh [名] 束
šauva [名] 棒, 杖
ščasti [名] 幸せ
olkapiä [名] 肩
pöläštyö [動] 恐れる, 怖がる
kosja [名] ハンドルのついたカゴ
puhata [動] きれいにする, 磨く
lukie [動] 数える
ripakko [名] 布切れ, ぼろきれ
šituo [動] 留める, 固定する, 結びつける, 中に入れる
horhottua [動] 声を出して笑う
ehottua [動] 提案する, 申し出る, 勧める
vilja [名] 穀物, 穀類
sluušie [動] 従事する, 働く
šopimuš [名] 契約, 合意
olki [名] ワラ, 茎
šäkki [名] 袋, 1袋分の分量
kalikkaine [名] 巡礼者, 乞食
tiluš [名] 地所, 土地の一区画, 区域

出典

所蔵:ロシア科学アカデミー カレリア学術研究所(KarRC RAS)
採取地:カレヴァラ地区のウフトゥア村
採取年:1946年
AT –

ATカタログからは類似を今のところ見つけられていません…週末に再度確認します。

日本語出版物

日本語での出版物は見当たりません。

つぶやき

貧しく賢い娘が、幸運を手にする…のは民話の常でもありますが、お世話になった主人への情はないのでしょうかね。可愛がってくれたのに・・・。

「8」「2」という数字は、それぞれ kah-という文字で始まっているので、後半に登場する 82、18、20はすべて韻をふんでいる形となります。「それぞれの種から8~9本の茎が育ち(Joka jyväštä kašvo kahekšan, yhekšän olkie)」など、ところどころでも上手く韻をふんでいて、とてもリズム良くお話しされていただろうことが想像できます。お話上手な語り手さんだったのでしょうね。

カレリアで採取された類話では、夢でのお告げ部分がないバージョンもあるそうです。

>> KARJALAN RAHVAHAN SUARNAT(カレリア民話)- もくじ

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