[カレリア民話] カブ畑のじいさんと悪魔(UKKO TA PIESSA NAKRISMUALLA)
カブ畑のじいさんと悪魔
むかし、おじいさんとおばあさんがいました。彼らはとても大きな畑にカブを植えました。彼らのもとでカブはどんどん成長し、ごろごろどっさり育ちました。
じいさんとばあさんのところから、毎晩のカブが盗まれるようになりました。すでにカブ畑の半分が盗まれてしまいましたが、誰がやって(盗みに)来るのか一向に分かりません。
―じいさん、あんた夜中に見張りに行きなさいよ、泥棒を捕まえないつもりかい。
じいさんは夜中に見張りに行き、畑の端っこに座りました。そこへ恐ろしい男がやって来ました(それは悪魔でした)。男はカブを取りはじめ、袋に入れはじめました。袋いっぱいのカブを、畑の端に投げました。じいさんはカブの入った袋に忍びよりましたが、悪魔はまだカブを引き抜いているようです。
悪魔はカブでいっぱいの2つ目の袋を取ると、じいさんの傍にある袋を取りに来ました。じいさんは男を捕まえました。
―捕まえたぞ、この泥棒め!
彼らはそこで言い争いました。悪魔はこう言います。
―オレ様のカブ畑だ!
じいさんは言います。
―ワシのカブ畑だ!
悪魔は言いました。
―こうしよう、より奇妙な馬で(ふたたび)このカブ畑に来た方のものとするんだ。
じいさんは家に帰り、悪魔も家に戻りました。
じいさんは、ばあさんに言いました。
―馬になってくれ、そうして悪魔からカブ畑を取り戻すんだ。悪魔と取り決めをしたんだ、カブ畑はより奇妙な馬に乗って来た者のものだってな。
じいさんは、ばあさんと畑に向かいました。じいさんは、馬になったばあさんに乗り、(ばあさんの)頭に袋を結ぶと、その裾を(ばあさんの)耳に入れ、言いました。
―いいか、ワシがお尻を指でつついたら、屁をこくんだ。
ばあさんの背中に乗ったじいさんは、無理やり出発させると、ばあさんのお尻を悪魔が来る方に向けました。
ウサギの背に乗った悪魔がやって来ました。悪魔が近づいてくると、じいさんはばあさんのお尻を指でつつき、ばあさんはオナラをしました。
悪魔は言いました。
―こんな馬は見たことがない。お前のこの馬は何て言っているんだ?
じいさんは言いました。
―エサをくれってさ。
悪魔は言いました。
―お前の方がより奇妙な馬だったからな、カブ畑を所有するといいさ。
こうしてじいさんは、カブ畑もばあさんも取り戻しました。
めでたし、めでたし。
単語
suinko louhikko 岩群のようにごろごろと, どっさり
varata [動] 警戒する, 見張る
pientarella [副] 耕地の端
nyhtie [動] むしり取る, 引き抜く
värčči [名] 袋, 1袋分
hiivuo [動] 静かに動く, こっそり忍び寄る
puuttuo [動] 捕らわれる, 不本意な状態におかれる
luatiutuo [動] 約束する, 合意に達する
helma [名] 裾
vastahaka [名] いやいや, 無理やりなこと
ape [名] 家畜のえさ
pityä [動] 保持する, ある状態に置いておく
出典
所蔵:ロシア科学アカデミー カレリア学術研究所(KarRC RAS)
採取地:カレヴァラ地区のウフトゥア(カレヴァラ)村
採取年:1947年
AT 1091
AT1000番代は、「愚かな悪魔の話」が集まっています。このお話はそのうちの一つ、「誰がより特別な動物を連れて来れるか」と名づけられた話型に当てはまり、妻に乗ってやって来た男が勝利する、という人間と悪魔のコミカルな争いを描いたものです。
カレリアの各地から、同じ話型のバリエーションが採取されています。こちらは『ツルと行き遅れの婆さん』と同じく、物語の語り手、創作物語話者として著名なマリア・イヴァノヴナ・ミハエヴァ(Maria Ivanova Mihaeeva)によるバージョンです。
日本語出版物
カレリア、フィンランド民話としては、日本語での出版物は見当たりません。
つぶやき
ずいぶんご無沙汰になってしまいました。
目指せ、年内民話訳50話!と自分に発破をかけていましたが、今からではとても叶いそうにありません。無念。
それでも目標があったからこそ、続けてこれた気もします。
年内中に、キリよく40話(あと1話)まではご紹介したいと思います。