見出し画像

[カレリア民話] キツネとくま(REPO TA KONTIE)

画像1

キツネとくま

昔、おじいさんとおばあさんがいました。おじいさんは湖に網と罠を仕掛け、どれだけ魚が獲れたか確かめに行きました。おじいさんがたくさんのシロマスを獲ったのを見たキツネは、自分も魚が欲しくなりました。どうしようかと考えると、道に横たわりました。

荷ゾリに乗ったおじいさんが進んでいると、道にキツネが死んだように横たわっているのを見つけました。おじいさんはキツネを抱え、ソリの上に乗せると、また先へ進んでいきました。いっぽうキツネは、おじいさんの後ろで魚を道に投げ、最後に自分もソリから跳び降りました。

さて、おじいさんは満足げに家に帰りつき、おばあさんへ言いました。「見に来てごらん、大量の魚と、キツネまで手に入れたんだ」
おばあさんが見に来ると-しかし、ソリは空っぽです。魚も、キツネもいません。おじいさんは悔しがりました。「ああ、あのペテン師め、なんてことをしてくれたんだ!」

キツネは魚を手に入れると、すべてを森へ運び、ひとまとめの山にしました。くまがやって来て尋ねました。
- こんなにたくさんの魚を、どうやって手に入れたんだい?
- ああ、僕が名づけ親に選ばれた時に、牧師館の(水場に開いた)氷の穴に行ったんだ。その時は氷点下の寒さでね、一晩しっぽを穴に入れて座っていたんだ。そうしたら、こんなにたくさんの魚がしっぽで釣れたんだよ。君も行って、同じようにして取っておいでよ!

くまは出かけると、しっぽを穴に入れて座りました。寒くなってきました。しかし、くまはしっぽを小刻みに揺らし、魚がもう食いついて重くなっているのを感じても、それでもまだ座っていました。

朝、牧師館の女中たちが水場にやって来ると、くまがいるのを見ました。女たちは水を運ぶための天秤棒で、くまを殴ったり叩いたりしました。しかし、しっぽが氷に閉ざされてしまったので、くまは逃げることができません。どうにかしてしっぽをちょん切ると、くまは逃げ出しました。その時から、くまはしっぽが短くなったのですよ。

単語

ennen [副] 以前
akka [名] 妻, 老婆
verkko [名] 網, ネット
pyyvyš [名] 魚を捕るための道具
repo [名] キツネ
šiika [名] ホワイトフィッシュ, シロマス
himottua [動] ~したいと思う, ~を欲する
keino [名] 方法, やり方
ruveta muate 横になる, 寝る
ajua [動] 乗物に乗って行く, 運転する
myöte ~まで
kuorma [名] 荷馬車, 荷ぞり
kuolla [動] 死ぬ
luuvva [動] 放り投げる, 投げ上げる
reki [名] ソリ
ielläh [副] 前に, 前方に
šelkä [名] 背中
takana [副] 後ろに, 背後に
šyytyä [動] 落とす, 投げつける
viimekše [副] 最後に
iče [代/名] 自身, 自体
hypätä [動] 跳ぶ
hyvilläh [副] 満足して
tyhjä [形] 空の, 何も入っていない
päivitellä [動] 憐れむ, 気の毒に思う, 惜しむ, 後悔する
moššennikka [名] 詐欺師, ペテン師
yhteh [副] 一緒に, あわせて
tukku [名] 積み上げたものの山, 多量のもの
näin [副] こんなにも
kuoma [名] 洗礼父, 名付け親
kuomani [名] 洗礼父, 名付け親
pappila [名] 牧師館
avanto [名] 氷にあけた穴
pakkani [名] 氷点下の寒さ, 極寒
häntä [名] 動物の尾, しっぽ
alkua [動] 始まる, ~し始める
liikahutella [動] 軽く動かす, ゆする
tarttuo [動] くっつく, 引っかかる
jykie [形] 重い
piika [名] お手伝い, 女中
korento [名] 天秤棒, つるべ
lyyvvä [動] 打つ, なぐる
piäššä [動] 遭遇する, 行き着く, 自由になる, 逃れる
pako [名] 逃走, 逃亡
jiä [名] 氷
kiini [副] 閉じられた, 捕らえられた, くっついた
kumminki [接] だが, それでもやはり, それにも関わらず
kateta [動] 壊れる, 割れる, 折れる, ちぎれる
šuate [後] ~から, ~まで
siitä šuate その時から, それ以降

出典

所蔵:ロシア科学アカデミー カレリア学術研究所(KarRC RAS)
採取地:カレヴァラ地区のヴオッキニエミ(ヴォクナヴォロク)
採取年:1937年
AT 1+2

カレリア各地ならびにフィンランドでも類似話のバリエーションが多く採取されています。クマがオオカミやうさぎに代わることもありますが、北カレリアのおとぎ話においては”賢い"キツネの相手役は、たいていクマが演じています。フィンランドのバリエーションはSKS(フィンランド文学協会)所蔵。

日本語出版物

カレリアで採取された話の出版はありませんが、フィンランドの中部地方で採取された類似の話が出版されています。

・「フィンランドの昔話 民俗民芸双書60」, P.ラウスマー, 臼田甚五郎監修, 日本フィンランド文学協会訳, 1971, 岩崎美術社
 └『熊と狐』
・「グラフィックカラー 世界の民話1 北ヨーロッパ」, 鄭仁和/高橋静男 他編訳, 1979, 研秀出版
 └『熊と狐』

>> KARJALAN RAHVAHAN SUARNAT(カレリア民話)- もくじ

いいなと思ったら応援しよう!