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ドラえもんについて

 ドラえもんの重要人物が次々亡くなられていってしまっています。とても残念なことです。

 僕は子供の頃からドラえもんをよく見ていました。そういう世代だった。いや、ドラえもんは70年代からずっと人気なので、世代とかあんまり関係ないかもしれないけど、ドラえもんに勢いがあったときに見ていた。

 ドラえもんって、開始時にはそんなに人気がなくて、6巻で終わりとなって、でも実際はコミックスが結構売れるほど人気があったから、「帰ってきたウルトラマン」にちなんでドラえもんも帰ってきた、という流れ。それが黎明期で、その後、国民的なものになっていくフェーズがある。それが1990年くらいまで。そこからはもう人気が確立していて、充実している。
 それはまあ、やはり藤子・F・不二雄先生の体力的なものもあったのではないだろうか、と思う。コンビ解消してからもバリバリ仕事をしていた、という感じではなく、ドラえもんに絞っていた感じもあるし。

 それでも、ドラえもんには夢があった。ひみつ道具とかもそうなんだけど、不思議があった。センス・オブ・ワンダーがあった。
 特に大長編ドラえもんね。藤子先生の半年をかけて作っていたのだから、それは傑作ぞろいになる。映画も、威信をかけて作っていただろう。

 そこで僕の好きなドラえもんを列挙する。

 ドラえもんのび太の日本誕生。これは印象に残っているね。この後にエポック社から「ギガゾンビの逆襲」というのもゲーム化されるくらい。
 あの、カブみたいなのからカレーが出てくるやつ、美味しそうじゃなかった? あれはすごく憧れたなあ。結構ツチダマとかも怖くてね。なんかこう、大昔日本は大陸とつながっていたとか、子どもには新鮮な情報が詰まっていた。

 ドラえもんのび太の宇宙小戦争。これは子供の頃怖くてあまり見られなかった。スモールライトが怖くてね。
 ミクロスが活躍したり、窮地の場面でスモールライトが効果切れたり、カタルシスが大きい作品だよね。それと、主題歌の「少年期」がとても素晴らしい。泣きそうになる。

 ドラえもんのび太の宇宙開拓史。これが一番心に残っているかもしれない。ハドソン版のドラえもんのファミコンソフトでは1面に使用されていた。
 まずワープの概念がカッコよかった。わかりやすかった。紙を折り曲げてくっつけるみたいな。そして、床の畳を開けたら遠い宇宙につながっている。これが子供心に来るよね。重力の小さいところではスーパーな能力になる、という定番の設定もいいし、それを活かして最後の局面で、岩をバットで打って大戦艦を沈める、みたいなのも良かった。
 ラストは偶然の要素が強いんだけど、それもまあドラえもんって感じで良かった。
 すこしふしぎが藤子先生のSFだっていうけど、この作品は真面目にサイエンス・フィクションだった。なんかさあ、ロップルくんとかも良いやつだしさあ。トカイトカイ星とコーヤコーヤ星の関係とかも、どことなくリアル。農作業してるシーンとかも印象深いし。

 ドラえもんのび太と鉄人兵団。これがダメって人はいないだろう。そんくらい感動的なポイントが詰まっている。
 巨大ロボットを組み立てるところですでに男の子要素を取り込んでいる。そんで脳に当たる部品にほんやくコンニャクを付けたら喋れるとかもすごい発想だし。鏡の中の世界で好きなことをやるというのも良かった。
 ロボットの侵略を止めるために過去に行く、というのも定番ではあるが感動的な最後を迎える。タイムパトロールとか良いのか? やっぱこう、敵対していたけど、最後には信念を貫いてくれるリルルが素晴らしい。
 最後の決戦の勇ましさ。戦うんだっていう決意がすごい。そして絶望感もあった。最後にはぎりぎり過去改変が間に合って助かることになるのだが、そのタイミングも絶妙でね。
 それと、映画版ではなかったんだが、コミックス版では最後のページが素晴らしい。学校で居残りをしているのび太のクラスに、リルルと思われる容姿の女の子が外を飛んでいるのだ。そして、そのことを伝えに、みんなに空き地に駆けていくのび太。そこで物語が終わる。描きすぎない美学がそこにはあった。泣いちゃうよ、この最後のシーンは。

 ドラえもんが巨大なIPになりすぎたから、藤子不二雄は解散せざるを得なかった、みたいな話もある。そんくらいすごい事になっていた。劇場版じゃなくて、コロコロコミックや学年誌でやってたのも良かったし。全部を読んでいるわけじゃないけどさ。なんていうか、発見があるんだよね。ありの生態を観察するとかさ。その、都合が良いだけの道具が出てくるわけじゃなくて、子どもになにか楽しさや興味を引くものを与える、それがドラえもんだったと思う。藤本先生がこだわったからこそ、子どもがついてきた。アニメオリジナルをずっと作らせなかったのも、子どもへのアプローチが違ったんじゃないかなと想像している。ジャイアンに復讐するための道具で最終的に自分が痛い目を見る、こち亀的な話だけじゃなくてね。子どもへのセンス・オブ・ワンダーを重視していたんじゃないかなあ。

 ドラえもんは良いなあ。

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榛名/haruna
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