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ルイジアナ美術館にて
ずっと行きたかったコペンハーゲン、満を持して訪れることができた。
旅の目的は、自分の好きなようにゆっくりすること。
旅程は4日間、さてどこに行ってなにをしようか。
今回の旅ではなにか感性を刺激したい気がして現代アートを調べてみると、
ルイジアナ美術館という世界一美しいと言われている美術館がある!
ここは行かないといけないでしょ!とさっそく訪れることにした。
滞在しているホテルからは電車でおよそ1時間。窓から流れていく景色がとても美しくてずっと景色を見ていると、切符を確認するおばさまが回ってきて、私のチケットは範囲が有効ではないから新たに買いなさいと言われた。乗り継ぎの時にチケット売り場が見つからなかったと言い訳をしたけれどもちろん同情は得られず、とにかく帰りはちゃんと買うのよと釘を刺しておばさまは去っていった。こういうことははじめての場所では日常茶飯事なので、気にしない。むしろ疑われなくてよかった〜と一安心。
Humlebækという駅で下車してから歩くこと10分強。アイビーに覆われた物静かな建物が見えてきた。前日に降った雪がまわりの景色を少し明るくして美しい。
ルイジアナの中は広い、現在地と地図を確認しながら行きたいセクションに進んでいく。入り口から見えた風景はまさに氷山の一角、中はとても広々とした美術館だ。
結論から言うと、科学とアートの融合をここまで感じられた美術館は初めてだ。アートなのに科学。全ての美しさは数字からきていると感じざるを得ない展示が多くあった。海藻からできるプラスチックや藻を使った先進的な実験のインスタレーションなどは特に興味深かった。
現在の企画展である「OCEAN」 には特に魅了された。海という壮大なテーマを歴史、科学、神話、そして現代社会にそれぞれ切り取りながら、あくまでアートとして展示する。絵画を通して物語や歴史を伝えてきたということが実感されると同時に、現代アートの深みを見た気がした。
一番心に刺さったのがビデオインスタレーションだ。3つの大きな画面にランダムに映し出される映像。美しい海の生き物や航海者が映し出されていると思えば、水爆実験や戦争で映像が徐々に生々しくなる。被爆者の映像もあった。そして最後は捕鯨の描写だった。美しく泳いでいる鯨が映し出された直後に、鯨を銃で打って捕獲している映像、そして人間が巨大な鯨の腹を捌いている映像が淡々と流れる。ナレーションはない、音楽が流れていたかも覚えていない。言葉のない訴えであり、その訴えが心の真ん中を突き刺してきた。
日本は被爆国でありながらまだ原発を推進している、そして主な捕鯨国は日本とアイスランドだ。これを私たちはどうする?私はどうする?
なぜ現代アートが好きなのか。もちろん様々なアーティストの様々な創造性を見られるのが楽しいのだけれど、おそらく作品を前にして現代と未来を考えさせられるからだと思う。なにをどう捉えるかはあなたの自由、だけど頭をひねりなさい。そう言われている気がする。そして作品からテーマ性が見えてきたときに、自分の中の考えが大きくなっていく。あの鯨の映像を見たときのように。
大人になって社会はすぐに解決できない問題で溢れていると気づくけれど、その一つ一つを考える時間はおそらくあまり作られていない。現代アートとはそれに時間を割けられる貴重な時間であり、それを強く感じられたのがルイジアナであった。
アートを鑑賞したと言うより自分の頭の中の考えと対峙したような時間だったな。
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もちろん帰りはちゃんと切符を買って無事に帰りましたとさ。