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餃子は鉄のフライパンで。

ニラ2束をきざみ、ひき肉、ねぎ、しょうが、調味料をいれて混ぜる。湯をわかし、鉄のフライパンを火にかける。温まったら多めの油をいれフライパンをまわし、油つぼにもどす。フライパンをさます間に、餃子の皮をひろげあんをのせ、つつむ。再びフライパンに大さじ1の油をひき、餃子を円形にぎゅっと並べる。点火し、湯を50cc回し入れ、蓋をして5分待つ。

おいしく餃子を焼きたい。

そんな思いから鉄のフライパンを買った。
だが、失敗ばかりだった。焦がして、くっついて。泣きたくなった。投げ出したくなった。幾度も幾度もネット検索した。「鉄のフライパン 餃子 くっつく」。それでもできない。もうあきらめようか。そんな時に出会ったのが、「餃子の"焼き"を科学する」というネット記事と「失敗しない!餃子のくっつかない焼き方」というユーチューブ動画だ。餃子を鉄のフライパンで焼くことは科学なんだと、なんだか腑に落ちた。

そういえばこの間読んだ本で、鉄の鍋、スキレットで餃子を焼く、という描写があったっけ。「今宵も喫茶ドードーのキッチンで。」だ。
SNSであがっていた、スキレットで焼いた餃子の写真に感化されて、主人公である彼女は、スキレットと「生餃子」を買った。できるわけがない。と私は思った。自分はこんなに涙を呑んでいるのに。案の定、餃子は鉄なべにくっつき、餃子、ではなく、肉の塊と化した。
「生餃子」というのが問題だった。「冷凍餃子」だったらまだ鉄鍋初心者でも成功の可能性があっただろう。各メーカーさんが販売している、水も油も必要ないタイプの餃子だと、最初に薄く油をひけば、羽根ができる上にフライパンからするりとはがれて、もうプロの仕上がりだ。

ピピピっとタイマーが鳴り、フライパンはぐつぐつと沸騰する音からはじけるような音に変わった。ふたを開けて水分を飛ばす。白っぽい水分が透明になったらそれが合図。フライパンの底にぐるりと一周へらをいれる。フライパンを揺らすと餃子はぐるぐるとすべって回る。フライパンに皿をのせ、ひっくり返す。
花餃子だ。

パリパリに焼けた底面に、ひだの部分はもっちりしっとりしている。早速味見をした息子が親指をあげるグットのサインを出した。私は、たっぷりの粗びき胡椒をかけたポン酢に、餃子をちょいちょいっとつけた。口に入れると、じゅわっとひき肉と香味野菜の風味がひろがった。「うん」と私は満足して、次の餃子に箸をすすめた。

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