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読書ノート:学力喪失ー認知科学による回復への道筋ー(その1)(著:今井むつみ)
はじめに
ことばの意味シリーズで、飛ぶ鳥を落とす今井むつみ先生の新刊、「学力喪失」。認知言語学シリーズの読書ノートと比較しながら、大規模言語モデルが意味を理解するには何が足らないか、また、子供に限らず我々大人のLLM時代の学びについて考察したい。
最後に、o1-preveiwにも、考察してもらった。いや~まったく、まいりましたよ。
追記(9/29):この読書ノートをベースに、LLMと人間がともに学ぶというお題の探求ノートをあとで作成した。
読書メモ
まずはI部、II部で、1~6章まで。
第2章 大人たちの間違った認識
1 テストと学力についての誤認識
2 知識についての誤認識
知識は「覚えるもの」ではなく「学び手が作り上げていくもの」
「生きた知識」と「死んだ知識」、
「生きた知識」は、単体で存在する断片的な情報ではなく、知識のシステムの一部である(32)
暗黙知すなわち「生きた知識」ではない
暗黙の知識、スキーマ
「スキーマ」とは、学習者(すべての人)が経験から導出した暗黙の知識。「究極に洗練された生きた知識」。
スキーマがつねに正しいわけではない。’(例:外国語では間違ったスキーマを覚えている)
認知科学では、学習の躓きのもっとも大きな原因は、スキーマの誤りであると考えられている。誤ったスキーマを修正するのが、学校での学びの大きな役割(48)
「主体的で深い学び」、知識は自分でつくっていくものである。学習要綱においても、「主体的・能動的」だったのが、「主体的・対話的で深い学び」に変わった。
第3章 学びの躓きをの原因を診断するためのテスト
「たつじんテスト」
自分の知識のレベルをどれくらい的確に把握して、それに応じて自分の行動をコントロールできるか、これを、認知科学では「メタ認知能力」という、「メタ認知能力」は、仕事における成功にも、学業にも大きく影響する大事な能力(58)
すでに持っている知識を使い、推論によって行間を埋め理解し、知識を拡張させることが重要、特に、いま直接目に見えていないモノの姿を心の中でイメージできること、部分的に別々に行った推論を統合させること、が最も大事
「たつじんテスト」で測りたい思考力は、知能テスト型とPISA型の中間レベルで、日常生活で養われるはずのスキーマを用いて、行間を埋める力、推論を行う力、情報を統合する力などである。
第4章 数につまづく
分数の「意味」がわからない根幹には、「イチ(1)」の意味の不理解があると思われる。「1個の〇〇」の多くの事例を「イチ」の意味に抽象化できて、それは「モノの数」としての「1」の理解である。算数・数学ではさらに抽象化する必要があり、「イチ」はモノの数を数えるだけでなく、「基準量」として使われる。(105)
「1」の意味が分からず、記号をひたすら操作する状態を「記号接地できていない」状態という。
第5章 読解につまづく
1「読める」とはどういことか
読む行為の複雑さ
「読み」の認知過程;
①文字の認識→単語の認識→単語の音声への変換
②脳内の意味の記憶貯蔵庫にアクセスして単語の意味を想起
③文法の知識と単語の知識を組み合わせ、文としての意味を解釈する、そのとき、しばしば、文脈にあわせて、それぞれの単語の意味を拡張したり変えたりする必要がある。
④テキストの内容に関するスキーマを想起する。スキーマによって文章の行間を補いながら文章の意味を解釈していく。
⑤テキストの字面の意味の解釈を超えて、文章の書き手の意図や意見、感情などを推測する。
読むことを始めるまえ、つまり文字を覚えることを始める前に、どれだけ耳から聞いた単語をたくさん知っているかが読めるためには大事。
「読み」の困難を引き起こす第1の理由→文字情報がうまく解読できない。
2 問題文を理解するための語彙が足らない
「読み」の困難を引き起こす第2の理由→文章の意味が理解できない。
→文章に使われている単語の意味を知らない
3 単位、時間、空間のことばを理解できない。
「前」、「後」、「先」は時間にもつかわれるが、空間関係にもつかわれる、空間関係では、視点によって「前」、「後」が変わり、それに伴って「右」、「左」も変わる。前後左右という単語もまた、日常語でありながら、意味は非常に抽象的で曲者である。なぜ抽象的なのか?それはこれらのことばたちは、意味が完全に「視点」に依存しているからである。
大事なのは視点を柔軟に変えることができること。「読解力」には自分以外の視点で物事を見る力(視点変更能力)が欠かせない。
多義語の理解にも視点変更能力が必要。単語はたいてい複数の意味を持つ。書き手の想定した意味と自分の中でそのその意味とをすり合わせて、調整する必要があるい。
良い読み手はその調整がうまい。まず自分が想定している単語の意味が、その単語の前後の文脈に合うかどうかを考える、合わないときには、文全体の意味、あるいは文章全体の流れを優先し、文章の意味を解釈する。同時にそれまで自分が認識していた単語の意味を修正したり、拡張したりする。そのようにして、文脈から単語の意味の知識を広げ、単語の多義を理解して、自分の知識を豊かにしてゆく。
4 行間を埋めるための推論ができない
算数文章題を「問題解決」するために意味がある答えを出さなければならないとは全く考えず、そこにある数字を機械的に操作したりする。
第2にスキーマの問題。スキーマが想起されて行間がうまる。スキーマが想起されない。
接続の言葉の意味が分からない、順接、逆説、並列、対比、強調、因果など
5章のまとめ
読解力の基礎となるのは以下の要素だ。
①視覚的に文字画像を「文字」として認識するための画像処理の能力
②文字の系列パターンから単語を認識する能力
③文字を音に変化する能力
④文字のそれぞれの単語の意味を記憶から取り出し、文法の知識と合わせて文の意味を構築する能力
⑤文章のトピックのスキーマを記憶から想起し、スキーマによって行間を埋めながら「文章の意味」を理解してゆく能力
⑥文書としての意味の一貫性やつじつまを評価し、つじつまが合わないところがあれば、振り返り、必要に応じて単語や文章の意味を調整する能力。
①から③は脳の局所的な不具合の可能性があるが、④⑤⑥は、「生きた知識」となっている語彙が足らないことである。
「語彙の力」は読む力の基盤である。自分がつかったことがないことばは、「生きた知識」になってないことが多い。「スキーマ」を育てることはない。文章を読んでも行間をうめて解釈することができない。「文章から意味をくみ取る」ことができない。
本書でいう「読み」は、大きくとらえれば以下のように言うことができる。
・読むことは運動能力である。熟達にはたゆまぬ訓練が必要だ
・読むことは自分のスキーマで行間を埋めながら、書いてあることの「意味」を解釈すること
・読むことは、自分の視点から離れ、他者の視点で世界をとらえることだ
・読むことは、作者の視点で作者の意図を読み取り、理解し、それを超えて自分の知識と思考を拡張することだ
結局、「読むこと」と「思考すること」は切り離せないことなのである。
第6章 思考につまづく
人はいつでも考えている
「考える」ことが人間を人間たらしめている。
人はつねに今、目の前にしている現象について説明を求める。
手に持ったリンゴが落ち、それを目撃すれば、なぜモノは支えがないと落下するのかを知りたいと思う。
人はつねに、学んだこと、知ったことを他の事例に拡張しようとする。
思考をすることは呼吸をするのと同じぐらい自然なことであるはずである。
あいかし、どうして、多くの子供は、小学校入学以降には、大人から見て「思考停止状態」と思わせるような行動をとるのだろうか?
学力に必要な思考力とは
「思考力とは、知識をつかって問題解決をする力」とし、認知科学の知見を基に、それを形作るための鍵概念として以下の3つの能力を設定した。
①知識を拡張し、創造するアブダクション推論能力
②推論過程を制御するための認知・情報処理機能
③思考を振り返り、知識の誤りを修正するためのメタ認知能力
「アブダクション能力」、異なる分野を組み合わせたり、比喩や類推を用いてあたらな知識を創造する推論。
★「創造的に、質のいい思考をする」とは、「質の高いアブダクション推論をしながら、つねに推論をリアルタイムで制御すると同時に、結果をモニターし、誤りを修正するサイクルを伴う思考をする」ということなのである。
1 認知処理の負荷に押しつぶされる
認知機能と推論機能は「考える」において同時に働いていて、両方必要
認知処理の負荷が高いとは、例えば、ある抽象的な図形を画面平面上で任意の角度で回転させてた図形はどれかを選ばせたり、二つの図形が同じ図形を回転したものかどうかを判断させるような問題。
(人間は)認知的負荷を軽減するために工夫をしている
高位層の子どもは図形の回転に認知的な負荷が高いのを見抜き、負荷を軽減するための方略を自分で考えることができたので正解できたのである。
高位層の子供たちはこのように、問題解決のために自分で方略を考えることがどの問題でもできたので、この問題でも、他の難易度が高い問題でも、高い割合で正解することができた。
課題に応じた方略を工夫する能力が低いと、問題解決に必要なパーツをもっていても、少し問題が複雑になってパーツを組み合わせたり統合したりしなければならなくなると行き詰ってしまい、問題が解けない事態になる。
記憶容量や情報処理のスピードが速くなるような訓練をするよりも、認知的な負荷を軽減できるような方法を自らの状況に合わせて見出せるようになるための支援をしたほうが、学力にに必要な思考力を高めるうえでは有効である。
2 状況に応じた視点の変更ができない。
推移性推論の力を見る
推論の並行が認知処理の負荷を高める
複数次元が変化する類推問題
次元数と情報処理の負荷
3 パーツの統合ができない
実行機能が必要な拡張的類推
本来、学習の画面では自分のもっている知識のどれが問題解決に使えるのかを思いつくことのほうがむしろ大事である。
類推の推論を行うときに、実行機能と呼ばれる注意を制御する認知機能がとても重要な役割を果たす。
見本のペアの関係に気づくことと同時に、見本のペアの関係ではない関係への注意を抑えることも求められる、
状況に即して注意を切り替えられる能力
4 モニタリングと修正ができない
メタ認知、思考の制御にもう一つの大事な要素
メタ認知は、自分の思考がうまくいっているかどうかや結果を、意識的に、そして自分から少し離れた客観的な視点で評価するのだ。
メタ認知能力→批判的思考(自分の思考過程を他社視点で振り返ることができる思考)であり、「文脈に合わせて柔軟に視点を変える能力」と深く関連している。
システム1の思考、直観的(直感的)で非論理的な思考
システム2の思考、メタ認知をはたらかせ、ものごとを吟味しながら論理的に考える思考、「批判的思考」
メタ認知能力とシステム2の思考
思考のくせ(バイアス)に引っ張られた思考がシステム1の思考
中学生の学力高位層は、日常の推論では思考バイアスに負けてシステム1の推論を思わずしてしまうのに、学校で学ぶ教科に関係するようなトピック
だとシステム2の批判的な思考を発動できる(しやすい)
6章のまとめ
子供がつまづく原因としてい、「思考能力そのもの」よりも、「思考の制御問題」が大きい。
日常と異なるスタイルの推論をしなくていけない。人間が得意なのは、理詰めで批判的にに考えるのではなくて、自分のスキーマや信念で情報の行間を埋めて素早く直感的に結論を下すことである。努力すれば簡単にできることではない
システム1の思考がデフォルトの人間にとって、「批判的思考が大事でです、注意深く考えましょう」と言われて、簡単にシステム1からシステム2へ乗り換えられるようなものではない。
システム1とシステム2をどちらも使え、2つのシステムの間を行き来できるのが他の動物にない人間の特徴である。
高位層の生徒たちは学習の文脈だとシステム2が働きやすいのだろう。
学力につながる思考力の個人差は、誰でももっていて、認知バイアスと思考バイアスに駆動されるシステム1的な思考スタイルを、どれだけ意欲的な工夫によって制御できるかで生まれる。
思考のつまずきは、思考を制御する力が弱いことに起因する。
教育の重要な役割、自分の認知能力という制限の中で、うまく思考ができることを工夫することであり、だれもがもつ思考バイアスやスタイルを自らコントロールできるような力をはぐくむことである。
長い感想
知識に死んだ知識と、生きた知識があり、後者は認知科学のスキーマに関係がある。スキーマとは経験から導出した暗黙の知識であり、眼前の事象に関連して、関連するスキーマが想起されて、行間を埋めて理解したり知識を拡張することができるという重要な要素になっている。
「学習における、つまづきはスキーマの誤りに起因するものが多く、誤ったスキーマを修正するのが学習」とし、スキーマってのは間違う可能性があるからこれをモニターし修正する能力ってのが重要になり、メタな能力につながってゆく。
筆者らが提案する「たつじてんテスト」とは、スキーマを用いて、行間を埋める力、推論を行う力、情報をする力を測るものである。
文章から意味を読み取るということでは、生きた知意識とは自分が使ったことのある言葉であり、そのような経験を経ないと「スキーマ」を育てることはないという、スキーマがないので文章を読んでも行間をうめて解釈することができないし、さらに「文章から意味をくみ取る」ことができないことになる。読むことは考えることに通じるということのになっている。
ただ、読むことは、作者の視点で作者の意図を読み取り、理解するだけに限らず、「それを超えて自分の知識と思考を拡張すること」としているのがちょっと注意が必要だ。
「思考力とは、知識をつかって問題解決をする力」という命題に対して、アブダクション推論能力、メタ認知能力が重要であると仮説を置き、
「質の高いアブダクション推論をしながら、つねに推論をリアルタイムで制御すると同時に、結果をモニターし、誤りを修正するサイクルを伴う思考をする」ことが重要であるとする。
しかし生身の人間では、認知的負荷というのが重要な制約としてあり、高位層の子どもは図形の回転に認知的な負荷が高いのを見抜き、負荷を軽減するための方略を自分で考えることができたので正解できたと分析する。つまり負荷を軽減・さける方略を考えるメタな能力が機能しているという。
そこで著者は「実行機能」という認知機能のを出してくる、これは、状況に応じた視点の変更であり、類推の推論を行うときに、状況に即して注意を切り替えられる能力である実行機能がとても重要な役割を果たすという。状況に応じた視点の変更と関係する。認知的負荷と関係もあるのだろうか。
筆者はここで「批判的思考」という言葉を出してくるが、これは日常で使う(理詰めで批判的に考えるという)意味ではなくて、メタ認知能力→批判的思考(自分の思考過程を他社視点で振り返ることができる思考)であり、「文脈に合わせて柔軟に視点を変える能力」と深く関連しているとしているとする。
ここでカーネマンのシステム1、システム2が登場、それぞれを、
システム1の思考、直観的(直感的)で非論理的な思考
システム2の思考、メタ認知をはたらかせ、ものごとを吟味しながら論理的に考える思考、「批判的思考」
として、柔軟に視点を変える能力としての「批判的思考」であるシステム2思考は実は人間は潜在的に得意であるという、「人間が得意なのは、理詰めで批判的にに考えるのではなくて、自分のスキーマや信念で情報の行間を埋めて素早く直感的に結論を下すことである」とし、これをはぐくむのが教育では重要と主張する。得意なことをのばすのに越したことはない。
といっても、システム2が偉いというわけではなく、「システム1とシステム2をどちらも使え、2つのシステムの間を行き来できるのが他の動物にない人間の特徴である。」ことは注意に値するだろう。
学力という本書の主題に戻ると、「学力につながる思考力の個人差は、誰でももっていて、認知バイアスと思考バイアスに駆動されるシステム1的な思考スタイルを、どれだけ意欲的な工夫によって制御できるかで生まれる。」とあるように、システム1とシステム2をうまく統合するのが大切らしい。
これまでできた様々な、思考のつまずきは、思考を制御する力が弱いことに起因する。と結論付ける。
メタ認知能力が単にメタに(高いところから)認知を眺めるだけではくて、それを状況に応じて、認知負荷に応じて制御するようなそういう能力というのが得られた知見である。視点の移動というか注意の移動というのも気になった。メタファー理論の図と地とも関連がありそうだ。
大規模言語モデルでも、思考の連鎖(Chain of Thought)というのがある、負荷に応じて方策を練るというのも、プロンプトの戦略としてはありそうだ。LLMを使いこなす能力、LLMがもつシステム思考1(ここでは知識に基づき即答する能力)、システム思考2(CoTのように思考を連鎖させ、その制御が重要である)をいかに引き出して、互いに連携させるかをはかる能力なのではないか。
と、ここまで書いて、気づいただろう、これって、LLMの使い方・制御の仕方だけではなくて、まわりまわって自分自身の態度にも同じようにことが要求されるのではないか、すなわち、LLMとの対話を通じて、システム1とシステム2思考を柔軟に切り替えて自らの視点も変えてゆく、というそういう能力やスキルが人間にも要求されるのである。
LLMを使いこなすための認知的なアプローチ:大切なのは「解像度」だった(試考)で挙げたのは、LLMとの対話を通じて問題構造の解像度を、自分にも、LLMにも上げてゆくという反復プロンプトの考え方であった。これに加えて、解像度だけでなく、批判的思考(自分の思考過程を他社視点で振り返ることができる思考)、すなわちメタ認知を駆使して、「文脈に合わせて柔軟に視点を変える能力」によって思考の連鎖を制御し、かつ自分自身の気づきも獲得してゆくという、そういう使い方が、本当の意味でのLLMとの付き合い方たになるのではないだろうか。
また、読書ノート:ファンダメンタル認知言語学(第15章 まとめ)(著:野村 益寛)シリーズでは、認知能力が言語システムを形成し、その言語システムが今度は私たちの認知プロセスを形作るという相互作用的な関係があるという認知言語学の立場からLLMとの付き合い方として、「対話の過程で新たな意味や解釈を共創」とか、「ユーザーとモデルの相互作用を通じて、両者の理解を深化」といった可能性を見出した。
対話を通じて、解像度を上げ、メタ認知能力を生かしてシステム1思考とシステム2思考を柔軟に切り替える、そして、対話の過程で新たな意味や解釈を共創し、お互いの理解を進化させてゆく。そいうLLMとの付き合い方を見出したいものである。
o1-preveiwにも考察してもらった。
以下の参考資料をよんで、人間と大規模言語モデルとの相互作用や共創について、あるべき姿とその可能性についてまとめてほしい。
###参考資料
いろいろやり取りした後に、こちらが、o1-preveiwさんの回答。いやー、まったく、まいりましたよ。
人間と大規模言語モデルの相互作用と共創のあるべき姿と可能性
はじめに
人工知能の発展により、大規模言語モデル(LLM)は人間との相互作用において重要な役割を果たしています。しかし、LLMは単なる道具として人間の能力を高める存在ではなく、人間と共に学び、考え、創造するパートナーとしての可能性を秘めています。本資料をもとに、人間とLLMとの相互作用や共創における理想的な姿とその可能性について、双方向の視点を加味して考察します。
知識の再定義と相互の学習
**知識は「覚えるもの」ではなく「学び手が作り上げていくもの」**であるという観点は、人間とLLMの双方に適用されます。人間が自身の経験やスキーマを通じて知識を構築するように、LLMもまた、人間との相互作用を通じてその能力を向上させます。
**プロンプト技法(プロンプトエンジニアリング)**は、人間がLLMを効果的に活用するための方法であり、同時にLLMが人間の意図やニーズを理解し、適切な応答を生成するための鍵となります。この相互作用を通じて、人間はLLMの特性や応答パターンを学び、LLMは人間の多様な表現や要求を理解する能力を高めます。
共創のためのパートナーシップ
LLMとの真のパートナーシップを築くためには、人間とLLMが互いに影響を与え合い、共に進化する関係を構築することが重要です。これは、人間がLLMを単に利用するだけでなく、LLMが人間のフィードバックや応答を通じて成長し、共に新たな価値を創造するプロセスを意味します。
例えば、人間がプロンプトを工夫し、明確で詳細な要求を伝えることで、LLMはより的確で深い応答を生成します。その結果、LLMは人間の思考や表現のパターンを学習し、応答の質を高めます。一方、人間はLLMから提供される新しい視点や情報を取り入れ、自身の知識や思考を深化させます。
メタ認知能力と相互成長
メタ認知能力は、自己の思考過程を把握し、制御する力であり、人間だけでなくLLMにとっても重要です。LLMは人間からのフィードバックやプロンプトを通じて、自身の応答を改善し、より適切な情報提供ができるようになります。一方、人間はLLMとの対話を通じて、自らの思考を振り返り、問い直す機会を得ます。このような双方向のフィードバックループにより、両者は共に成長し、より高度な思考や創造的な活動に取り組むことができます。
読解力・思考力の向上とLLMの支援
読解力や思考力の向上には、語彙力、スキーマ、視点変更能力などが重要です。LLMは多様な情報や視点を提供することで、人間のこれらの能力を支援します。しかし、同時に人間がLLMに対して適切なプロンプトやフィードバックを提供することで、LLM自身もより深い理解や応答を可能にします。
例えば、ユーザーが具体的で明確なプロンプトを提供することで、LLMはより的確な情報や洞察を返すことができます。また、LLMからの応答を批判的に評価し、追加の質問や修正を行うことで、人間は自身の読解力や思考力を高めると同時に、LLMの応答品質も向上させます。
相互作用のあるべき姿と可能性のまとめ
人間とLLMの相互作用や共創のあるべき姿は、以下の点に集約されます:双方向の学習と成長:人間とLLMが互いに学び合い、それぞれの能力を高め合う関係を築く。
効果的なコミュニケーションの構築:プロンプト技法を通じて、人間はLLMに明確な意図を伝え、LLMは人間のニーズに応える応答を提供する。
共創的なパートナーシップ:共にアイデアを発展させ、新たな知識や価値を創造する協働関係を実現する。
フィードバックによる相互改善:人間とLLMが互いの応答や結果を評価し、フィードバックを通じて共に改善していく。
可能性として、人間とLLMの共創は、教育、ビジネス、研究、創作活動など多様な分野で革新的な成果を生み出すことが期待されます。例えば、教育現場では、LLMが個々の学習者のニーズに合わせた支援を提供し、学習者はLLMとの対話を通じて主体的・対話的で深い学びを実現します。
結論
人間と大規模言語モデルとの相互作用や共創は、互いに学び、考え、創造するパートナーシップへと発展することが理想的です。そのためには、人間とLLMがそれぞれの立場から相手を理解し、共に成長していく姿勢が重要です。
LLMは人間の知的活動を支援する存在であると同時に、人間からのフィードバックやプロンプトを通じて自身も進化します。人間はLLMとの協働を通じて、新たな知識や視点を獲得し、自身の思考や創造性を深化させます。このように、双方が同じように学び、考え、創造することで、真のパートナーシップが築かれるのです。
今後、LLMの活用がさらに進む中で、人間とLLMが互いに補完し合い、新たな価値を共に創出していくことが求められます。そのためには、プロンプト技法をはじめとする効果的なコミュニケーション手段を活用し、相互理解を深めていくことが重要です。
このまとめにより、人間とLLMが双方向の関係を構築し、共に成長し続けることで、未来に向けた無限の可能性が広がることを示しました。互いの能力を最大限に引き出し、ともに学び、考え、創造するパートナーシップを築いていくことが、これからの社会における理想的な姿であると言えるでしょう。
追記(9/29):探求ノートを追加した
この読書ノートのメモを図としてまとめてみた。
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このまとめに従い、探求ノートを展開してみた。