忘れるために書く。
人生のとある一時、記憶力が冴え渡る時期があった。自分でも信じられないけれど、そういう時があった。就職先での二年目の直属の上司が、記憶力が高くて仕事が出来る、キレのある人だった。彼に付いていくために必死になるうちに、細かい事まで記憶できるようになっていた。
記憶力というものはトレーニングでどうにか出来るものなのかもしれないけれど、あの時に感じていたような、ポケットから簡単に物事を取り出せるように何かを思い出せる事は、もう、ない。そして、これからも体感することはないだろう。
忘れてしまう、と思えば思うほどに、それらは大切に感じるから不思議だ。でも知っている。忘れてしまう、と無力感に嘖まれてセンチメンタルになったことすら、そのうちに忘れる。残るのは、何かを手にした感覚だけだ。手のひらに降り立った小鳥は、その重さを感じるまもなく軽々と羽ばたいていく。
なので、せめて、そのことを書いておく。というのを前回書いたのだった。
同じRollbahnに今もメモを書き足しているのだけれど、先日、測量野帳(以下、野帳とする)にビジネス版とよべそうなラインナップが加わった事を知った。色は4色、3ミリ方眼のみだけれど、どれも使い勝手のよさそうな野帳ではないか。
今まででも、オシャレ路線での野帳は、あった。だが、それらはちょっと高いのだ。安くて、薄くて、何処でも手に入る距離感こそが野帳の良さなんじゃないのか。そうやって、何冊の野帳を買い込んでは、中途半端に書き込んで放置してしまうので大きな声では言えないけれど。
ビジネス版野帳、いいなぁ。読書メモには良さそうだ。見開きのサイズは、今使っているRollbahnとほぼ一緒なのも良い。読んでいる本と一緒に持ち歩いても、邪魔にならない。どんなに忘れても、この小さな野帳に書き込んでおけば大丈夫。いっそ、書いた端から忘れてしまえ。そのほうが、何度も驚けて楽しいんじゃないのか。
野帳はオシャレ路線とは別に、箔押しによるカスタマイズ版がある。博物館、特に自然をテーマにした所で売っていることがある。(値段は様々)箔さえ押す事が出来れば個人レベルで作れるので、オリジナルグッツを作りたい時には重宝する。
しかし、これらはコレクターズアイテムだ。使える気がしない、そしてワタシはコレクターではない。(なので買ったら使う、知床財団のは欲しい... )
箔を個人でやるのは大変だし数冊で良い、という場合は消しゴムスタンプと不透明なスタンプインクでも可能。金や銀などのペンで表紙に書き込みをしても良い。
製本等の技法を使って同じようなものを作る事も可能だけれど、野帳自体が安いのでそこまでやるだろうか...? と、妄想だけで終わらせていたら、思いがけずに野帳ふうの手作りスタンプ帳に出会った。
画像が出ないけれど、北海道埋蔵物文化センターではスタンプのイベントを行っていて、そのスタンプ帳が野帳の作りになっている。すごくハンドメイド。野帳とイベントへの強い愛を感じるけれど、一言いってくれればアドバイスできたのな... 小口が見えちゃってるんだよな...(何様だ)
時々、読書メモを書くのが面倒になる。寝転がって読んでいるときや、膝の上を猫が占領していて動くことが出来ないとき、理由はないけれどただ億劫なとき。
そういう時には気に入った文房具を使う。そして、この薄い野帳を埋め尽くすことを妄想してみる。埋め尽くされた野帳を開けば、飛び立った小鳥が森の向こうから飛んでくる。
野帳の箱を作りました。野帳3冊しか入らないけれど。マスクも入るよ。
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