あの彼と【ショートショート】
春だった。
あの彼と私。
この恋人のようなセットにした呼び名は私が勝手につけたもので、彼はどう思っているのかは分からないし、私のことに気付いても無いかもしれない。
あの彼とは昔に一目惚れしたきり。
家が近いのか、良く急ぎ足の彼を目にする。
私はどうしても彼に声を掛けたくて
ある日待ち伏せをして偶然を装ったりして。
あの彼と私
緊張はつかの間、女性の扱いにも慣れているのか、とても楽しくお話が出来た。
やっぱり素敵な人だなと気持ちはどんどん大きくなり、私はもう告白を決意する他に道は無かった。
何日も思いを言葉にするため練習を重ね
その時を迎えた。
彼は、私もあなたの事は好きです。
と丁寧に返事をくれたので、私は天にも昇る気持ちだった。
それから、1年半程彼との時間を過ごし
色々悩みはあったけれど、周りの友達も相談は聞いてくれていて乗り越えられてるし
なんだか私からプロポーズしようかななんて。
あの彼と私がずっと続くように。
彼の誕生日に素敵なレストランで一緒にディナーをする予定だからその時に。
当日
私は生きてきた中でこんなにも人の事を愛せるのかと思えた彼へ、結婚の決意を伝え、相手の返答を求めた。
彼は丁寧に返事をしてくれた。
「私は女なの。あなた私が好きって返事した時から少し変だったけれど。まさか、男だと思っていたのね。」
ああ、確かに周りの友達も、私の恋愛に余り良く思わないような事言っていた。
きっとそれは僻みからだと思っていたけれど
私にしか分からない彼の良いところがあるのだと思っていた。
まさか、私から手を繋いだ事以外、何も無かったのは大事にされていたわけではなく、そうゆうこと。
周りの助言に
耳を貸さずに居たのは私だ。
とゆうか、聞こえ無かったに近い。
恋は盲目だ。
完結