見出し画像

海の中に【ショートショート】

男は海の中に1つの光を見た。
あれは人生で1番に惚れた女性に贈った宝石ではないか。
そんな空想に浸っていた。
その女性はもう妻であり、宝石を送らなくても近くに居るのだ。

しかし人間は欲が深いものである。
その男は光る所に狙いを定め静かにすくいだした。
これは何かの鉱石か。
見たこともない輝きのものであった。
男は興味本位に競売にかけてみたのだが
その鉱石は思わぬ何億もの値段がついた。

男は
どんどんどんどんその周辺から鉱石を掘り起こし
どんどんどんどん裕福になっていった。

あらゆる権力を使い、掘りに掘りまくった。

妻や子には何でも買い与え、城は出来、町の人には頭を下げられるほどの名誉も手に入れ、更には孫も生まれた。

あんな小さな鉱石にこんなにも裕福にしてもらってもいいのかと思っていた。

あの時、静かに海を眺めていた自分からは想像もつかないくらいだ。

そんな事を思いながら
鉱石で飾られたテレビを眺めていた。
「ニュース速報です。皆さまには協力をしていただいておりました、鉱石の必要以上の売買の自粛につきまして。一部の人により、上手くいかなかったもようです。我々の源、海を過剰に掘り起こしたことにより地球が割れてきているとの情報が入っております。どうか、皆さま出来るだけ動かないように、地球の最後が出来るだけ先延ばしになるようにして下さい。では地球のエネルギーが無くなったことにより、電気もガスも止まりますので、火の確保に努めて下さいませ。今までお世話になりました、テレビ業界も終わりでございます。皆さまそれでは。」

ザーーーーーーーーー。

男は
今まで培ってきた財産や名誉
そして家族と町の人達
その全ての終わり
地球の最後。

今さらながらに自分の欲深さを反省し
全てを悟り

頭を抱えて丸くなり
鉱石よりも固くなっている。

しかし輝きはない。

完結。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?