詩 おばあちゃん
ユニークフェイス問題を取材していたとき。約20年前の事実をもとに詩にしました。内容は完全フィクションです。
この詩は、「こわれ者の祭典」2017-1-7 東京公演にて朗読したものです。
−−−−
取材でわかい母親と会った
「私は石井さんと同じように赤い痣のある子を産みました」
そのときどんな気持ちでした?
「ショックでした。そんなこと想像もしてなかったので・・・。」
そんなそうおっしゃいます。でも産まれてくる赤ん坊の数パーセントは何かの障害、疾患をもって産まれてくるんですよ。
「そんなこと知りませんでした。」
産んだ後どうでした?
「私の母が首をつって自殺したんです! うわああああ(号泣)」
・・・・・(絶句)
「母もショックだったことはわかっていたんです。でも、自殺しちゃったんです。」
・・・・遺書は?
「ありませんでした!!」
・・・・・
じゃあ、痣と自殺が関係があるのかわからないじゃないですか?
「私が痣のある子供を産んだから、母は自殺したんですよ!!
うわああああああ(叫び)
私が悪いんです。こういう痣がある子供を産んでしまった私が悪いんですよ」
違う。あなたは悪くない。
自然現象なんだ。人間はそういう子供を一定の確率で産んでしまう存在なんだ。それが先天異常なんだ。たいしたことはないんだ。昔からあることなんだ。
「悪いのは私なんですよ!!
(号泣)」
号泣が止まらない。
−−−−
私は、二児の父親になりました。
一男一女。美男美女だ。
子供ができて変わったことがある。
人には、心がある、魂がある。
こんなに可愛い子供たち。
単なる生物ではない。
たんなる有機化合物の塊ではない。
そう信じるようになった。
魂がどこからきて、どこにいくのか。
私は知らない。
だが・・・・魂はある。
あるのだろう。
であるならば,自殺したおばあちゃん。
あなたの魂は存在しているのだろう。
おばあちゃんに告げる!!
なぜ自殺したんですか?
残された孫は、自分が産まれたことが原因でおばあちゃんが自殺した。
そう思い悩んで生きている!!
言葉を残さずに死ぬからこんなことになる。
孫の痣が原因でない、
別の理由を考えて自殺しろよ。
サラ金の多重債務で絶望して死ぬとか。
わかりやすい理由で自殺しろよ。
死ぬならひとりでひっそりと死ねよ。
自宅の敷地内で首を吊るなよ。
突然の交通事故を装って死ぬ方法もあったろう。
孫、そして娘の人生を暗くする自殺をしていいの。
この顔では、幸せになれないと思ったの?
そう信じ込んだの?
それは差別だ!!
あなたは孫を差別したんです
その差別の心に耐えきれなくなって自殺したんです!
魂がある。
ならば,私はあなたの魂に宣言します
私はいつか死後の世界にいってあなたがなぜ自殺したのか。インタビューさせてもらいます
そのインタビューの記事を、次の生まれ変わりで発表します。
おばあちゃん。
あなたは、ひとつ大きな間違いを犯しました。
この世では,ユニークフェイスという絶望と戦う人間たちが出てきたんです。
わたしは、その第1号。
わたしが、もっと早くあなたと出会っていれば、あなたは自殺しなくてすんだ。
そう断言します。
ユニークフェイスという言葉によって「覚醒」した人間たちが増えています。
あなたのいる世界にも、いるはずです。
ユニークフェイスを名乗る魂が。
私の書いた本を読んだ、私と出会った、絶望しない、タフな、ユニークフェイスの魂が。
あなたの孫は私が守ります。
私たちユニークフェイスの仲間たちが守ります。
生きていれば、もうすぐ二十歳。
学校でのいじめ、恋愛の悩み、いろいろな経験をしているはず。
孤立しているでしょう。
なぜ支えようとしなかったのですか?
命を懸ければ、孫のひとりくらい守れます。
老い先短い老人の役目。
それはたったひとつ。
子供たちのために差別と戦う。
守護神になることでしょう。
安心して、私の取材をまっていてほしい。
あんたの魂が孫、そして娘に謝る、その日まで、
あなたは、孫や娘の前で、おばあちゃんとは名乗れないよ。
おばあちゃん失格だから。
孫と娘に赦される、その日まで、
あなたはクソババアだ。
あなたの孫は守ります。
差別と戦えるタフな人間になるように。
幸せになれるように。
おばあちゃん、見守っていてください。
私の顔を見つめてください。
孫の顔と同じところに顔半分を覆う、まっかな痣があるでしょう。
まるでコピー人間のように。
あなたが導けば、私はあなたの孫と会えるし、守ることができるのです。
導いてください。
戦うユニークフェイスの魂を、
あの世から見守っていてください。
(了)
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