page 65 Story of 永遠 9/3
美月「長い話を聞かせてしまってごめんね」
永遠「いや、ずっと聞きたかった話だから…
話してくれてありがとう。
で、結果的に青井さんは美月ちゃんに自分の命が短いかもしれないって、話したの?」
美月「ううん… それは言わなかったし、
私も聞けなかった。怖くて聞けなかった。
言ったら本当になりそうで怖かった。
旬君が亡くなった後、事故だったのに私に宛てた手紙が見つけたの」
・
カタッ…
仕事部屋のデスクの引き出しの中にブルーの封筒
手紙…?、
・
封筒の中から一枚の写真が出てきた。
真っ青な雲一つない空の写真。
その写真の裏には“始まりと終わりの空”ってタイトルみたいな物が走り書きしていた。
写真と一緒にメッセージが書かれた手紙が入っていた。
美月へ
美月がこの手紙を見つけたという事は、
僕はこの世に居ないと言う事になります。
(生きてたら絶対この手紙は見せないから)
まずは、美月にお礼が言いたい。
教育実習で出会った変な男子高校生だった僕と結婚してくれて本当にありがとうを言いたい。
僕は世界一幸せだった。
美月は、
美月の世界を広げる為に生まれた僕の女神です。
だから僕が死んでも悲しまないで。
大好きな青い空になったんだってそんな風に思って欲しい。
出会った瞬間に言ったけど、美月は先生じゃなくて、クリエイターの方が有ってる。
僕が見た美月の未来のビジョンを特別に教えるね。
美月は大きなステージで、沢山の人に幸せな音楽を届けていたよ。
そしてもう一つ印象的に見えたのは、美月には仲間が居た。
それが僕だったらどんなにいいかと思ったけど、それは僕じゃ無い誰かだったよ。
その音楽で、沢山の人が幸せになるなんて、そんなに素敵な事は無いと思います。
僕は空になったから、君は美しい月として僕の空の中にずっと居る。
悲しい事なんて何もないんだよ。
ずっと愛してます。
幸せに輝き続けて欲しい。
青井 旬
追伸
僕が居なくなってもどうか悲しまないで生きて。
美月「……、だからね、
悲しまないようにしてた」
車はいつの間にか夜景の綺麗な高台に到着した。ギアをパーキングに入れる音が車内に響く。
永遠「…それは男の勝手な言い分だな」
美月「 え? 」
永遠「悲しいもんは、悲しいじゃん。」
自分でも不思議とあっけらかんとした言い方になって美月ちゃんの方を見た。
青井旬がサイキック能力者かなんだか知らないけどさ、悲しむなっていうのは、青井旬の個人的なただの願望でしかない。
永遠「そんなの、悲しくて泣きたい決まってるじゃん」
美月「 うん 」
永遠「悲しむ権利、有る」
美月「…っ、」ぅっ…
そうやって、最初から泣けば良かったんだよ。
泣くの我慢して感情殺して彼の為にとか…そんな事してたら笑えなくなる。
永遠「泣け!」
その言葉を合図に美月ちゃんは泣き続けた。
多分、ずっと泣きたかった分、涙の利子がつきまくってる泣き方だった。
眼下に広がる夜景がキラキラ輝いてる。
あの光の数だけ悲しくて寂しかったんだと思うと切なくて痛かった。
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