80円の唐揚げ
- 今日は空が歪んでる -
図書室の階段から見えた空はまっすぐだったのに。
エレベーターの使用が禁止されてから、5階へ行くのも階段を登るのも久しぶりだった。
最近は、図書室に足を運んでも、1階に並べてある新刊やテーマに沿った本をちらちらと見るだけだった。
今日はSDGsがテーマ。
先週はヨガやピラティスだったな。
人々がマスクをつけ始めるようになった時期に、扉の近くには入館と退館時の時間を記入するメモが置かれるようになった。
10分くらいしか図書室を利用していないことに、入り口のメモ用紙を見て気付く。
今日は2時間も遅刻をした。
朝からの予定が夜からに変更になった夢を見ていたらしい。とんだ勘違いだった。
夢と現実の境目くらいちゃんと自分で分かっておきたい。
待たせてごめんね。
千葉からやってきた友達と進行方向に背を向け、肩を並べて席についた。
博多駅からの乗車は椅子取りゲームだ、と毎回思う。
時間通りやってきた電車を目の前に、慌てて焼き立てのポテトフランスパンをかき込んだ。
今日は、君が教えてくれた本を見つけたくなった。
自分の足と目で探したかった。
此処にあるっていうのを確認したかった。
そんな想いとは裏腹に、なかなか見つけられず私はあなたを検索してしまった。
検索番号通りに棚を眺めてもなかなかいない。
悔しさと虚しさが入り混じっていた時、ふとあなたを見つけた。ちゃんと此処に存在していた。
特にあなたには触れることもなく、強く安堵した私は家に帰る用意を始めた。
出逢えたあなたを残して、調べた検索結果をそのままパソコンに残してみた。
わたしの好きなあなたに誰かが出逢ってくれないだろうか。なんてちょっとの期待を寄せる。
"人と人を繋げる人"なんて言葉をよく聞くけど、この行為もその対象に入るのだろうか。
図書室のトイレは綺麗だ。
ビオレの泡で出るハンドソープに、全身鏡、なんとウォシュレットまで付いている。
ふわふわのハンドソープで手を洗い、大きな鏡で身だしなみを整え終えて、5F分の階段を降りる。
図書室を出ると、目の前の大学内の建物がキラキラして見えた。
女子高生がiPhoneを向けている先に目をやると、綺麗な夕陽を見つけた。
久しぶりにまんまるで大きな夕陽。わたしもつい、iPhoneのカメラを向けた。
喉仏が出るくらい首を伸ばして見上げた空は、水色で大きくて広くてまんまるだった。
身体いっぱいに空の丸さを感じたくて、手を広げてぐるーっと一周してみた。
黄色のワンピースがふわっと広がった。
"自分の好き"を周りを気にせず味わえる瞬間がすごく好きだな。
発車時刻まで少し時間があった。
私のお腹も少し鳴った。
220円のクロワッサンではなく
隣の80円の唐揚げを買った。
おしゃれじゃないことは自分が1番分かっているけれど、
はふはふしながら目の前の1個80円の塩唐揚げを頬張っている自分が好きだなと思う。
少しだけど、お腹も胸も満たされていく感じ。
220円のおしゃれなクロワッサン食べていたら、手に入れられなかっただろうな。
ふふふ
6月21日のエッセイ。
もも
いただいたサポートで美味しいメロンパンを買いたいと思います。(^^)