ギャルゲに青春を捧げた僕がにこにこちゃんを語る(ネタバレあり)
東京にこにこちゃんの「どッきん☆どッきん☆メモリアルパレード」を観てきました。
恋愛シミュレーションゲームをかたどったストーリーで、(あっさりネタバレしますが)簡単にいうとどうしても攻略不可能なキャラがいてそのキャラに辿り着くために頑張るというお話でした。
まず僕は東京にこにこちゃんの存在をどう知ったかというと、元々演劇関係者のツイートをよく見ていたら「排気口」という団体がいい感じの恋愛ポエムをよくツイートしているので気になってフォローして、そうしたらそれ繋がりでフライヤーデザインとかをよくやっているボリボリ先生という役者さんを発見し、その人が当時働いていたバーに行ってみたらその場にいた人に「東京にこにこちゃん、おすすめだよ」と言われたので過去作の「ラストダンスが悲しいのはイヤッッ」を配信でみたらもうボロボロと泣いてしまって、これ現場で見ないとダメなやつやん。と思って次回作の「さよならbye-byeバイプレイヤー」を観たら安定の面白さで「え?この団体面白い作品しか作らないやん。やばいな?」と思って何がなんでもということで予約して今回行くことにしました。
結果とても面白かったです。
東京にこにこちゃんではよくあることかもしれませんがキャラが渋滞するほどの山盛りで、一癖どころか七癖くらいありそうなキャラクターばかり、でもなぜか観やすいという謎構成。キャラの癖が強すぎて普通の話を見慣れてる人には刺激が強すぎるかもしれませんが小劇場の醍醐味といえなくもないので個人的には好きな部分です。
まず僕は高校生時代をギャルゲにほとんど費やしたせいで初恋を棒に振ったのですが、いやこの舞台は本当によく作られている。まずバグという「概念」を登場させるのが面白い。こいつ何なん?とか思うけどその疑問を持つことすらどうでもいいやと思えるほどのインパクト。やっぱ尾形さんはすごい。でも個人的には前回作の「よくわからないけどゆっくり歩くことでなんとなく間を持たせる」という謎演技の方がツボでした。出てくるだけで面白いのはやはり卑怯だ。
これは完全なるネタバレですが魅力的なキャラが攻略不可というのはギャルゲではもはや様式美なのではないかというくらい「ありがち」であり、さらに隠しキャラに需要がどこにあるのか不明な「男性キャラ」がスタッフの悪ふざけで配置されるというのも本当に「ありがち」である。もちろんそういう作品ばかりではないが「違うんかーい!」みたいなのも普通にあった気がする。CLANNADとかでも春原ENDがあった気がする(プレイしたのが昔すぎて覚えてないけど)
キャラの濃さが恋愛シミュレーションゲームという題材に変なマッチをしていて、キャラ渋滞が起きるほどの悪魔殺人金髪ロボットとか出てくるけどなんか許せてしまう(というか世界観に馴染んでいて違和感がない)。
自分はメインヒロインを大体好きになるので赤猫座ちこさんのメインヒロイン然とした佇まいは本当に素晴らしいと思った。(スキップ機能で飛ばされるのは悲しかったが大変面白かった)
ていうか宝保里実さん、いろんな作品でお見かけするがあまりに毎回違いすぎて認識ができない。今回も顔を見てではなくてフライヤーの名前で気づいた。「え、出てたやん。嘘でしょ」って。確かに思い返してみると宝保さんの顔をした人がいた気がする。それくらい毎回印象が全然違うのでやっぱり役者としてめちゃくちゃすごいんだと思う。
ちょくちょく挟まれるチープなやりとりが逆に平成のギャルゲ感をよく表している。そして最後の熱い展開。わかる。攻略不可能なキャラを攻略したくって、最初から「俺はバグだ」って言ってるやつがいるんだからそいつとか出てきて頑張るってことだろ。展開は読める。わかる。
でも面白いんだ。
やっぱり僕は王道が好きだし、そこからやっぱり外れないんじゃん。っていう東京にこにこちゃんがみんなをにこにこさせようとしてるのかなって思えてとても好きだ。(別に今後違うベクトルの作品を作ってくれてもそこは構わないです。だって最高傑作をこれからもつくってくれるんでしょう?)
くだらないし馬鹿みたいなぶっとんだ世界だけどそこに人が生きているんだなあ。だから好きなんだこの作品は。誰も浮いてない。変な奴らばかりだけど変なりにみんなその世界を生きてるんだ。
僕はいつも思うのだけど「上手に騙してほしい」。演劇が作り物で嘘っぱちだなんてことは百も承知だけどそんなふうに見せないでほしい。だからバグさんのメタっぽさもあれくらいがちょうどいいしやりすぎると多分嫌いになる。「どう?俺ら、面白いっしょ?」みたいな感じはやめてほしい。そういうあざとさが見える作品は好みじゃない。
東京にこにこちゃんは(中の人に聞いたことないから知らないけど、)「その世界で生きている」ということを優先してるように感じる。だからこそ登場人物にとっては悲劇的でも観客から見れば喜劇になるのだ。あざとさよりも「その世界で生きる必死さ」が伝わってくる。でもそもそもキャラクターがどうしようもなくバカたちだし、その世界観もすごいカオスなことになっているから、その必死さが笑えるし、泣けるのだ。
ラストに流れる「わたしを離さないで / Have a Nice Day!(ハバナイ!)」も、いや〜そうだよね。ここで流れるよね。って分かってるけど泣く。
だってあまりにも真っ直ぐなんだもん!なんの衒いもなく「これは一人の男の子が、ある女の子を好きになるラブストーリーなんだよ!」ってぶっつけてくる。こういうどストレートなところが僕はとても好きだし最後に泣き崩れる主人公のそばで流れる「君のいない朝と 君のいない夜が 何度も やってきて 何度も 去っていく」のメロディが最高にエモーショナルに響く。どうしようもなく必死な恋だけど、所詮これはゲームのお話。終始虚構で展開されてきたからこその空虚感と絶望感。でも虚構とはいえ確かにその世界を必死に生きてきたからこそ、わずかな希望が残るのだ。切なさと悲しさと爽快感と、全てが入り乱れたラストになっている。
最高でした。
次回作待ってます!必ず行くので。
東京にこにこちゃん、関係者の皆様、素晴らしい作品をありがとう!