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だれかのなにかにひっかかればいいな

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だれかのなにかにひっかかればいいな

最近の記事

果てるまで聞く

過去に二度、電話でセックスをしたがる男にあたったことがある。 ひとりめは青森の訛りがとても強いひとで、なにを話しているかがわからないことがよくあったので、なるべくメールのやりとりをしていた。 ある日、電話してもいいか?とその人が言うので いいよ、と電話を待ち、出ると、 時すでに始まりだった。 荒い鼻息と、口から漏れる呼吸の音。 ひとりで「はあはあ」言っている。 なに?と聞くと、電話でしようと。 何を言ってるかわからなかったので、改めて聞くと、電話でやりたい、と。

    • 生瀬さんとのいちにち

      待ち合わせ場所に着いたらすでに生瀬さんは車の中だった。マスクはつけていなかった。想像していた顔とは違っていたけれどなんとなくしっくりきて、服はTシャツとジーパンでその年代の人のそれという感じで、いつものスーツとイメージが違って、筋肉があってガタイが良いのに力の抜けた具合がなんともいえなくて、後ろ姿をすこし眺めながら車に乗る。 車内にはCDが何枚かあって。笑 「歌うんじゃなかったんですか」って言ったら、「俺の歌ずっと聞かせたら耳障りでしょ」って笑って、楽しそうに私の学生時代く

      • 隣人

        ーあなたの笑い声が聞こえると、わたしは心から安堵するー この感情を偽善と呼ぶならば、かまわない。本当に心から、彼女の幸せを願っている、心から、心から。 このアパートに越してきた初日、隣人宅に挨拶に行った。 ピンポンを鳴らすと、出てきたのはメガネを掛けた、おそらくすっぴんの40代くらいの笑顔のおおらかな、小柄の女性だった。部屋着であろう、Tシャツと短パン。わたしの普段家にいる様子となんら変わらない格好。 「こんにちは。今日隣に越して来ました。子供がいるので何かご迷惑をおか

        • 偶然でも、運命でも

          唐突だが今日私は、放尿しているおじさんを見た。 そしてその放尿現場は、おそらくそのおじさんの自宅の庭であっただろうことをまずお知らせしておく。 運転中、赤信号で停車した。 何気なく右を向いたら、民家からおじさんがタバコをくわえて出てきた。 その様子をぼーっと眺めていたら、おじさんがズボンのチャックあたりに手をかけた。そしてそのまま庭の花壇の方を向いて微動だにしない。 …まさかね? 日も暮れているためよく見えない。 あとすこし前進させれば、街灯の照らし具合で詳しいことが

        果てるまで聞く

          宙を舞うイカを見たことがあるか

          他所の家では味噌汁に出汁を入れるらしい。 そのことを知ったのは、小学校高学年の頃だったか。 祖母の家に泊まり料理を手伝った時、鍋にかつお節を入れているのを見て 「ばあちゃん、それ何してるの?」と聞くと 「味噌汁の出汁だべした。これないと味噌汁うまくないからね」と、祖母が何当たり前のことを聞くのと言わんばかりの笑顔で返す。 衝撃だった。 だからだ、母が作る味噌汁は味がしなかったのは。祖母の作る味噌汁がいつも美味しかったのは。 インスタントの味噌汁が食卓に出ると嬉しかった。

          宙を舞うイカを見たことがあるか

          高速道路運転デビュー

          結婚生活中、私はほとんどのことをひとりでできるようになってしまった。電球の交換だって、家具の組み立てだって、重い物の持ち運びだって、男手が必要とされることは大抵やった。 だけど唯一、どうしてもできないからと夫にお願いしていたのは高速道路の運転。どうしても怖くてできなかった、あんなにびゅんびゅん飛ばして、車線変更したり、迫りくる後続車からのプレッシャー。想像するだけで、お腹がきゅんと痛くなる。何より、子供になにかあったら途中で停車できないわけだし、子供の命を預かってると思うと

          高速道路運転デビュー