困難な中にも楽しさを 〜中学校ABDレポート2024 Vol.2
さて、前回からやっぱり間があいてしまった中学校ABDレポート。
今回は、第4回目の授業「本選び」から、実際にその本を使ってABDを企画する第5回、6回までの授業レポートです。
第4回:ABDで読みたい本を「自分で」選ぶ
第4回の授業は「本選び」。ABD授業をしていて毎年ターニングポイントになるのが、この本を選ぶ作業です。
前半に行う2回のABDは、ファシリテーターである私が授業の主導権を握っていますが、ここからは段々私の手を離れて、子どもたち自らが「自分で」選び、授業を設計していくという、後半パートに入っていきます。
今年も塩尻市立図書館の司書さんたちに協力いただいて、本館の膨大な蔵書の中から、OPAC検索で読みたい本を子どもたち自身に選んでもらいました。
正直なところ、本を見つけるスピードは“過去一“早かったです。
手元に実物の本がない状態での検索で、タイトルだけで本を選ぶのはなかなか難しいはず。それでも、自分が求める内容をなんとか言葉にして、各々がそれに沿った本を選んでいました。
普段から本に慣れている子はもちろん早いのですが、そうでなくても「とりあえずでもいいから決めて進む」という決断が上手な子もいる印象でした。
初回から「読める、書ける、話せる」とスキルの高さを発揮していた本年度の子どもたちですが、ここでも能力の高さを発揮しています。
要約、できる。対話、できる。となると。あとはそれをどう「活用」するか。
それにはチームの力が必要です。
第5・6回:チームに分かれたABDづくり
第5回の授業は、「ABD企画」。
夏休みが明けた最初の授業は、2つのグループに分かれ、前回選んだ本の中から実際に読む本を決めて、どんなABDにするか設計するというものです。
各自選んだ本をプレゼンしてもらい、投票で決まった本はこちらの二冊。
Aグループ:小川仁志『悩んだときは哲学者に聞け!』廣済堂出版
Bグループ:午堂登紀雄『やる気がなくてどうしようもない僕を救ってくれる本』WAVE出版
今回は、大人にも子どもにも普遍的な悩みに答えるものが選ばれました。
なんと、どちらも絶版本で多少焦りましたが(笑)無事に調達して、第6回のABDを迎えることができました。
さて、第6回の「テーマに沿ったABDの実施」がどうなったかと言えば。
流石に3回目ともなるとABD自体のコ・サマライズやリレープレゼンはお手のもの。ただ、難しさがあるとすれば、ダイアローグの進め方や手綱の取り方でした。
ダイアローグで会話が集団になり、何らかの方向性を持とうというとき、
「どちらに進めるべきか」とか「なかなか進まないときにどうするか」という点で、難しさにぶつかっていたような気がします。
正直、それは大人でも難しいところです。
ただ、今回の子どもたちは、ある程度工夫して乗り越えられるだろうな、と思っていました。
基本的には、ファシリテーターとして任命されたグループの子に舵取りを任せ、完全に脱線したときのみ私が声かけするようにして、ダイアローグの進む方向を見守っていました。
結果、Aグループは本の内容を元にしながらも、適度に発展していく形になりました。自分が課題にぶつかった際の対処法を、哲学者に習って紹介してみたり、自分はなぜ本を読むのか?といった疑問が出てきたりと、本をきっかけに自分を掘り下げるダイアローグになりました。
一方のBグループは、「やる気」というパワーワードを中心に、自分がやる気が出ない時の対処法をまとめる形になりました。
本の内容を自分ごとに当てはめていくと、具体的に役にたつ手法がまとめられ、すぐにでも活用できそうな秘策が詰まったダイアローグになりました。
困難な中にも感じる「楽しさ」
最後に、みんなに共有したのは、
「これだけの本を読めるって、実はすごいことだよ」ということ。
夏休み中に他の学校司書さんにお会いした時に言われたのは、
「本当にこんな本を中学生が選んで読むの!?」という驚きでした。
それくらいABDでは、大人にも共通な本を読んできています。
すでに難しい本でも読むことができる方法をみんなは手にしているし、
それを立派に使いこなしているということには自信を持ってもらいたいです。
大人にも誇れる!という言葉をみんなは素直に受け取ってくれたようで、第6回の自己評価はとても高かったです。
(比較の第2回アンケートはこちらに掲載してます)
何より「今回も楽しかった」(!!)という感想が聞けたことが、本当に嬉しかったです。
毎年「大変だった」「難しかった」の感想がどうしても目立ってしまい、いかに楽しめるかを苦心してきた私にとって、「楽しかった」の感想はは今年一番聴きたかった言葉です。
課題が大変だったり難しかったりしても「楽しかった」がある限り、余裕を持ちながら困難に挑戦できているはず。
さて、今年度も残りは生徒たちの自己評価である「文化祭の展示」を残すのみです。
一体どんな展示になるか、今から楽しみです。