【書評】新たな組織論に感動|ティール組織
ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現
作者:フレデリック・ラルー 翻訳・鈴木立哉
出版社:英治出版 発売日:2018/1/24
これまでの常識を覆し、これからの世の中に求められるであろう組織の在り方について、非常に分かりやすく具体例を交えて解説する良書。世の組織や経営手法に課題感を持っていたこともあり、私にとって5本の指に入る感動的なビジネス書だった。
企業や組織の経営者やチームを管理する立場にいる人、そして現在多くの組織において数字に対する説明責任や社内調整に多くの時間を取られ、本質的に重要な仕事に時間をさけないと感じている方にぜひ読んでほしい。
本書は組織や人材マネジメントに関する書籍で、進化型(ティール)組織という新たな手法を定義している。ティールでは、「自主経営」、「全体性」、「存在目的」という3つの要素から成り立っている。
「自主経営」は、組織を階層化せず、経営状況や成果をオープンにした上で、権限をすべての社員に与える。「全体性」は、仕事を本当の自分とは異なる役割を演ずるものとせず、精神的に自然でいようとする。そして「存在目的」は、売上や利益目標ではなく、組織が将来どうなりたいか、どうありたいかに重きを置く。
一見理想論だが、複数の国、業種においてそのような企業が存在し好業績を収めているという。これまで常識とされていた運営方法とは異なる方法で経営され、好業績を上げている企業の共通点がその3つの要素であり、著者はそれを進化型組織と定義している。
著者のフレデリック・ラルーは、マッキンゼーで10年以上にわたり組織変革プロジェクトに携わっており、この新しい組織モデルの調査に2年半を費やした。調査に裏付けられ、かつインタビューや具体的エピソードを交えた解説は、とても納得感がある。
日本の労働生産性が一向に改善しないといわれている。その真因はこれまでの成果追求型のトップダウンによる経営手法や責任逃れしやすい合議制・任期制のマネジメントにあり、それを打破する答えが本書にあるように思う。
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