見出し画像

Z世代と権限によらないリーダーシップ

早稲田大学でリーダーシップを教えていて,年々リーダーシップそのものに関心をもつ学生の割合が増えている手応えがある.2016-2018年頃はPBLを最初に持ってきていたために,リーダーシップよりもビジネスプラン・コンテストに関心がある学生がかなり混ざっていたが,19年からはそのカリキュラムを完全に組み直したので,それが原因ではなくなったはずである.また20年から21年のコロナ禍が一番厳しかった頃は,多くの授業がオンラインに移行するなかで極力対面で授業を行なってきたし,オンラインに移行した時期もオンディマンドではなくzoomによる同期型に徹していたので,クラスメートと話せるという点に魅力を感じて我々のリーダーシップ科目を選択する学生も少なくなかったようである.しかし最近は対面方式に復帰する授業が増えたので,これまた理由としては大きくないだろう.

学生が年々熱心になってきているのは喜ばしいことなのだが,そういうわけで,原因が今ひとつ腑に落ちずにいた.そこでハタと思いついたことがある.権限によらないリーダーシップやシェアード・リーダーシップは,いわゆるZ世代にぴったりなのではないか.Z世代と言われる今の大学生(そして中高生)が重視することの一つは,何事も強制されず自分で選択し決定すること(自己決定)であるという.権限をもたない人でもリーダーシップをとってよいという考え方は,自己決定にあたっての自分の選択肢を広げるであろう.自分一人ではなく,呼びかけによって周囲を巻き込んで協力しながら成果目標を達成できるという可能性を考慮にいれれば,一人きりのときに諦めていたさまざまなゴールが,実現可能なものとして視野に入ってくるのではないか.

だとすると,早稲田大学の日本橋キャンパスで2018年にスタートした社会人向けの「早稲田リーダーシップ・スクール(旧称「21世紀のリーダーシップ開発」,現在では90%以上オンライン開講)でも中高年の受講生が増えていることの説明もつくかもしれない.受講することになった社会人にインタビューしてみると,「自分は管理職ではあるが,権限を使って若い人を動かそうとすると嫌われて最小限の協力しか得られない.権限をなるべく使わずに若い人に動いてもらいたいので『権限によらないリーダーシップ』を学びに来た」というのである.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?