腹も身のうち
家にいれば、長年の習慣で日経新聞に毎朝目を通している。
一面に『貿易赤字 最大の2.8兆円』とあった。
9月15日財務省発表の貿易統計速報。
1979年以降の最大の貿易赤字とのこと、資源高・円安が原因だという事だがますます物の値段は高くなり我々一般庶民は更なる生活の制限を強いられてしまう。
ますます景気が上向くことは期待できそうにない。
13日火曜日の朝は仕事を終えてその足で京都大原野まで向かう。
午前中、放置竹林整備のNPO事務所で事業内容の確認とこの先の打ち合わせを行う。
理事長が倒れてから運営での不具合が浮上した。
ゼネコン時代からの長い付き合い、今やらなければ二度とこれまでの恩返しの機会はやってこないかもしれない。
そう思いしばらく通うが、あまりに雑務が多く、やって来る人が多く、肝心な作業は遅々として進まない。
申し訳ないと思いながら、タイムアウト、昼過ぎに事務所を出る。
秋に変わりつつある景色を目に入れながら電動アシスト自転車を走らせる。
ここらへんの稲刈りはまだこれからである。
重そうに頭を下げる稲穂の葉はまだ金色にはなり切らない。
昼下がり、暑さはまだ残るものの、あの暑中の熱さはもう無い。
レンタサイクルを返し、阪急電車で帰宅途中梅田で下車。
用事もあったのだが大阪駅前ビルの地下で一杯飲んで帰ろうと思った。
午後二時近く、ゆっくり昼メシを食いながら飲もうと思ったがどこもまだ客があふれており酒を飲む雰囲気はメシ屋には無かった。
席の空いていた目に付いた料理屋に飛び込む。
松阪牛ならぬ松阪豚の専門店だった。
注文した焼バラ肉定食は思いのほか美味く、胃袋にも充分こたえた。
満足して立ち飲み屋に足を向けるが、沢山ある店の立ち、座りともどこも満席である。
サラリーマンが多く、女性も半数近くいたのではないだろうか。
金曜日でもないのに不思議だった。
本当に景気が良くないのか不思議だった。
空いた立ち飲み屋に入り、生ビール一杯で打ち止めだった。
胃袋が小さくなっているようでそれ以上身体が受け付けなかった。
一杯のビールを飲みながらバブル期前後、毎晩タクシーで帰宅し、運転手さんとした会話を思い出していた。
私の渡すタクシーチケットを見てどの運転手さんも「建設業界が世の中を回している」と言っていた。
少し大袈裟とも思ったが、実際、建設業界で働く人間はよく飲み食いし、物は買い、タクシーには乗るわで、金はよく使ったと思う。
金を使わねば世の中は回らない事実があり、回すのには使う金が要るという現実がある。
かつて世界恐慌の雇用対策で行ったアメリカのフーバーダム建設のような即効性のあるものは現代にないのか、生ビール一杯でぼんやりしてきた頭は考えても動こうとしない。
帰りのJRは、また奈良まで乗り過ごさぬように目を開けているのに必死だった。
生産性の上がらぬ一日を過ごしたが、腹も身のうちと感じ、こんな一日も必要な無駄の一つとカウントしておこうと思った。
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