ひるのいこい
秋の空気のなか昼寝をしていた。
正確には昼前だから朝寝かも知れない。
NHKのラジオをよく聴く。
つけっ放しだったラジオから『ひるのいこい』のテーマ曲が流れて目が覚めた。
なんともいい曲ではないか。 農耕民族であったことを思い出させるような優しい曲ではないか。
そして、このテーマ曲が古関裕而の作曲と少し前に知った。
NHKの朝ドラ『エール』に出た妻の古関金子が同郷の豊橋市の出身であることを知ってから、身近に感じる古関裕而である。
ザ・ピーナッツが歌った『モスラ』から『オリンピックマーチ』、『長崎の鐘』など数多くの、しかも多彩な曲を生み出した天才と呼ぶべき作曲家であろう。
この『ひるのいこい』のテーマは私が物心つく以前から聴いていたような気がする。
私が生まれる前から存在するこの番組『ひるのいこい』、両親は揃ってNHKのファンだったから母のお腹の中にいる時から聴いていたかも知れない。
父方の祖母の最期の看病に母が駆り出され、長野の山奥で私も長い間を母と共に生活した。
その時の農作業の昼休みに、いつもこの『ひるのいこい』のテーマ曲が流れていたのを憶えている。
農作業の手を休め、陽の当たる地べたに座り込み皆でおにぎりと塩辛い野沢菜漬けを食べた。そのあと必ず甘い田舎菓子の詰め合わせを食べて大きなヤカンの苦い番茶を飲んだ。
そんな情景と、ともに流れた時間が私が持つこの曲のイメージである。
朝寝の目覚めと共にいろいろな事が一度に私の頭を巡り、現実のチャンネルに頭を切り替えるのに少し時間がかかった。
秋は眠りが深くなり、物悲しさがいろんな記憶を呼び戻してくれる。