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『金持ちジュリエット』 #ショートショートnote杯 応募作品 その7

「なによ、ジュリエット?性格のいいなんだから、あまりちょっかい出さないでよ、、」酒で焼けた声でママは私に言った。
瞳が黒くない不思議な雰囲気を持つジュリエットに私はかれていた。
聞けば彼女の旦那は寝たっきりの植物人間、医師の指示ミスの服薬が原因だと聞いた。
場末のスナックではこんな話はよくあること、それまで働いたことのなかったジュリエットがカウンターの中に立つようになったという。
医療過誤での慰謝料で働く必要のない彼女が何を好んでこんな苦労を買って出るのか私には興味があった。
店の女の子たちからは、からかいと嫉妬の気持ちを込めて『金持ちジュリエット』と揶揄やゆされていた。
私は、初めて彼女に出会った晩に旦那の名は『ロミオ』そしてタイムスリップしてやって来た、とこっそり聞いたのだ。
なんだか昔読んだ戯曲にそんなのがあった。

この先何かが起こりそうなこのスナック『ベローナ』である。



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