クライアントの強みを理解する「ヒアリング」のコツ
こんにちは、エムハンドWebディレクターのyokoです。弊社には営業が存在せず、ディレクターが窓口となってクライアント対応を行い、企画から制作進行、公開まで責任を持って対応しております。
成果の出るWebサイトを作るためには、サイトの幹となる「企画・戦略」が重要です。そして、よい企画を作る上では、クライアントの本質的な魅力や課題を適切に引き出すヒアリングが欠かせません。今回の記事では、私の前職での経験もふまえ、クライアントの強みを理解するヒアリングのコツを紹介いたします。
01.ヒアリングの重要性に気づいたきっかけ
私は前職で中小企業の経営支援を行っており、経営者に対してヒアリングをする機会がありました。ヒアリングの目的は事業計画の策定支援や融資支援などです。企業の業績は決算書からも読み解くことができますが、そこから得られる情報はごく一部です。その会社の詳しいビジネスモデル、事業の将来性、経営者の思いはリアルなコミュニケーションによって得られます。
特に私が担当していた事業性評価融資の支援においては、ヒアリングで「会社の良さを等身大で引き出せるか」というのが重要なポイントでした。良さを見つけるだけでなく、返済能力があるかというシビアな判断も必要です。
Webサイトも同じで、サイトに訪れたユーザーに対してその企業の魅力や良さを過不足なく伝えることが重要だと考えております。
02.そもそも強みとは何か
「強み」とは何でしょうか。
私は、「会社が存続できている理由」であると考えます。
ただ、この強みはクライアント自身が気づいていないことも多いです。皆さんが実際にクライアントへのヒアリングで「御社の強みは何ですか?」と聞いた際に、ふわっとした答えしか返ってこない…と感じた経験もあるかもしれません。それは強みがないのではなく、クライアント自身が「強み」として認識していないからだと思います。
また、実際に強みというもの自体、あいまいというのも事実です。
なぜならば、①強みは勝ち負けではなく、ポジショニングによって決まる、②何が強みになるのかは、ターゲットによっても異なるからです。
例えば、予約の取れない高級フレンチと地元で人気の焼き鳥店、どちらが優れているか優劣を付けることは難しいですよね。なぜならそれは、利用シーンやターゲットが異なるからです。
03.ヒアリングの前準備:仮説を立てる
ヒアリングの前準備として、様々な媒体を駆使して情報収集を行い、仮説を立てていきます。弊社の場合、過去の問い合わせ内容や過去に手がけた制作実績なども参考にします。
また、他社事例を調べることで、このクライアントは他社とどのような違いがあるのか、という視点が生まれやすくなります。
04.質問例:ポイントは「具体的」に聞くこと
クライアントのビジネスに対して理解するとともに、実際のヒアリングで「具体性」を意識することが重要です。「具体的には…」と深堀することで、クライアントに対する解像度が上がり、強みも見つけやすくなります。
①集客について
ー➀の質問の意図
集客の方法や、集客におけるWebの重要性を確認する質問です。
また、顧客と良好な関係を築ける会社かどうか、は重要なポイントです。
②お客様のこと
ー②の質問の意図
お客様の傾向を知るための質問です。
どのような製品・サービスを求めているのか、他社ではなくクライアントを選んでいる理由を知るために伺います。とくにお褒めの声はクライアント自身が気づいていない「強み」が隠れていることも多いので、ぜひ聞いてみてください。
③品質
ー③の質問の意図
主に製造業を想定した質問です。原材料の仕入(サプライヤーとの関係性)、製造工程、品質管理、供給体制などを知ることができます。BtoB取引において、品質の高さや安全性、供給の安定性は取引先選定の重要なポイントです。具体的な情報を引き出し、コンテンツに落とし込むことで説得力が増します。
④価格
ー④の質問の意図
価格戦略や販売戦略を知るための質問です。また、1回あたりの取引の重要度が高いのか、取引数を重視しているのかを知ることもできます。
⑤納期
ー⑤の質問の意図
会社としての仕事のスピード感を確認するための質問です。品質や価格で勝負しづらい商材の場合、スピードは大きな武器になるため、納期において聞いておくと良いと思います。
⑥社内体制・協力体制
ー⑥の質問の意図
企業の競争力の源泉は「人」です。社員やビジネスパートナーに対してどのような考えを持っているのか、どういった点を評価しているのかを知ることで、会社の強みが見えてきます。
05.他社との差別化(強み)になる要素
似たような商品・サービスを提供している企業は多いです。そのような中で差別化要因となるのは、以下の3点だと私は考えます。
①地域性
営業エリアは地域密着か、全国か。また、その地域にはどのような人がいて、どのようなニーズがあるのかを聞きます。同じ業種であっても、その企業がおかれている環境によって強みとなるかどうか、またその事業の結果も変わります。
②実績
実績はその企業しか経験していないものだからです。
そして事例や実績は、その企業の強みを裏付ける重要なものでもあります。
③マインド
スキル以外の部分です。人柄や仕事に対する姿勢では、その人ならではの良さが出ます。例えば士業など、サービス内容が目に見えづらいものは「その人のマインド」を理解することで、その企業ならではの強みが見えてきます。一方でマインドは客観的にわかりづらく、見えにくい部分もあります。思いを引き出すと共に事例紹介などをうまく使いながら良さを伝えていくことが重要です。
06.ヒアリングはコミュニケーション
ヒアリングにおいては、質問をこちらから一方的に投げかけるのではなく、コミュニケーションを意識して行います。ヒアリングしたい内容を決めたら、どのような流れで質問をしていくかを決めましょう。ポイントは次の通りです。
①ヒアリングにおけるゴールを決める
「何のためにヒアリングを行うのか」ということを忘れないことです。目的を持っておけば、ヒアリングの軸もブレにくくなります。
②ヒアリングの流れを想定する
どのような流れであれば、ヒアリングがスムーズに進むかを想定します。
また、質問に対してどのような回答が返ってくるかもあらかじめ想像しておきましょう。
③相手が答えやすい質問から始める
「はい」か「いいえ」で答えられる質問から始めます。また、相手の得意な領域から質問をするのも有効な手段です。
④大枠をとらえてから深堀質問をすること
話があちこちに飛んだり、本質とは離れた細かな質問からしてしまうと、答える側も大変です。コミュニケーションの流れや相手の負担なども考慮してヒアリングを組み立てます。
⑤前提条件の確認を怠らない
前提条件が変われば、回答の意味も変わってきます。
例えば、
・会社としての意向なのかそれとも担当者としての意向なのか
・依頼者側の制約条件(予算やスケジュール)は考慮されているかどうか
などです。
⑥オープンクエスチョンとクローズドクエスチョンの使い分け
相手にもよりますが、オープンクエスチョンが続くと負担になります。相手が答えにくそうな内容であれば、「はい」か「いいえ」で答えられる質問をします。また、会話の中で例示したり、「こういうことであっていますか」と聞くといった工夫も有効です。
⑦相手の話を否定せずに聞く、一方で前提を疑う
ヒアリングにおいては、相手の話を真剣に聞く、寄り添う姿勢が大事です。相手の話は否定せず、まずは受け止めることを大事にします。一方で、それって本当かな?という視点も持ちます。疑問に感じたときは否定せずに「○○といったことも考えられると思うのですが、いかがでしょうか」というような質問をします。
⑧そう考えた理由を聞く
相手からの回答に対して、気になることがあれば「なぜそう考えたのか」を聞きます。その回答にある根底の考えを知ることができます。
⑨知らないことは正直に聞く
知らないことは正直に聞きます。私自身、ヒアリングの中で初歩的な質問をよくしていたのですが怒られたことはありません。大切なのは相手に対して敬意を払うことです。
そのクライアントのことを一番知っているのは、ほかの誰でもないクライアント自身です。変にへりくだる必要はありませんが、教えていただくというマインドを忘れないようにしましょう。
⑩リアクションを意識する
とくにオンラインの場合、相手の反応が見えにくいです。笑顔でいること、大きく頷くといったリアクションを意識します。
参考:専門用語の使い方
Web制作においては、クライアントが必ずしもWebに詳しいとは限りません。必要に応じて、専門用語を別の言葉に言い換える工夫も必要です。
また、私がヒアリングする際には、「共感を示すこと」を大事にしています。「それは大変でしたね」「きっとお客様も嬉しかったでしょうね」というように、ヒアリングの中で感じたことを伝えるようにしています。
この共感を意識し始めてから、クライアントも「実は…」「あの時のエピソードなんだけど…」「ちょっと聞いてほしいことがあって…」というように、色々な話をしてくださるようになりました。ヒアリング以外のコミュニケーションを意識することで、相手も話しやすくなるのかもしれません。
07.終わりに
ヒアリングとは「熱量」である
ヒアリングは、相手に対して熱量を持つことが何よりも大事です。熱量を持って接することで、クライアントの思いや熱量、ひいては「強み」を引き出すことにつながると思います。
私自身、「もっと知りたい」という知的好奇心と「誰よりも本気で向き合う」という覚悟を持ってクライアントに接し、心から満足いただけるWebサイトを制作していきたいと考えております。
最後までお読みいただきありがとうございました。