ニーナ・ザ・ミストガン #1
陽で背中が灼ける感覚と共に、ニーナの意識が戻ってくる。ザラつく砂を口から吐き出し、ふらつきながら立ち上がると、ボケた視界がようやく定まった。
見回し、荒野――。
――わたしのホルト!
誰もいない――。
――見開かれた完璧な造形の瞳。
殴られた頭が痛む――。
――連れ去られ遠ざかる姿と暗転する視界。
混濁する意識をよそに、彼女は左眼をウインク! すぐさま拡張視界〈オーグ〉が起動して、各種情報を視界に描き出す。日付時刻と彼女の身体状況。そして、範囲外へ追いやられ、相対マップの外縁部に張り付いた光点。
急げ。追え。と、他ならぬ彼女が彼女に叫ぶ。身体に張り付くような強化スーツを軋ませて、美しきガンスリンガーは追跡を開始した。
向かうは、【エスメラルダの砦】。
この霧〈ミスト〉で崩壊した世界の中で、幾つあるか数え切れぬほどありふれた、霧に生かされる街。
そこにニーナの相棒、万能人形の少年、ホルトがいる。
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