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二千一念サバイバルの旅
潜星術師が出立の時機 has comeと断末魔の叫びを上げた。私は朝の水やりを終えたところだった。
手順に従い航術師らが星船の隼に覚醒を促し、我々搭乗権相続者は各々瞑想を開始した。
「父さん、どこに行くの」
「西へ。旅が開始」
「やった!」
息子相当者・ベルが私の対面で嬉しそうな様子で話す。
「幹祭銀河への旅行は我々の悲願。遊尼婆娑留・楽ン土、それは人気の観光地です」
「楽しみだなあ! ねえ、ポップコーンって知ってる? 爆発しててふわふわしてて、甘かったり塩辛かったりするんだって。るるぶに書いてた」
「不知」
ベルは物知りだし発声が上手で誇らしい。
「キャラメル味もあるんだって。キャラメルって何?」
「不知」
好奇心も豊かだ。
それからは妻相当者・ユミが着ていく服を迷って発狂し、結局いつものワンピースに落ち着いたり(私はその姿の彼女が大好きだ)、娘相当者・メンゾンニルヤが玩具を概念ポシェットから溢れさせたり(ベルは優しいので一個だけだよと言って自分の概念リュックに入れてあげた)して、我々は思念搭乗を感了した。
星船の隼の鳴き声で村の七割が粉塵化する心温まるハプニングを交えつつ、我々旅行団は出立した。
●
しかし、幹祭空港で準備されているはずの有機肉体が消費期限切れだと知らされて旅行に暗雲が立ち込めた。それは星船の隼が西ローカル超空洞を抜けようかとしたときだった。
「5|</ya'y3c^@uek7q@7q@」
「致し方なし。出立が三世代ほど遅れたのだから」
メンちゃんが歳相応の我儘を言うが、その気持ちは私も同じだ。引き返そうにも今頃故郷の有機肉体は肥料にされた頃だ。
航術師長の交渉の結果、肉の引取料と旅行の予備費で千念分は用意してもらえる事になった。
「乗ってるのは二千一念でしょ? なら念数が半分になればいいんじゃない?」
「成程」
息子は算数も得意だ。
私は第一剣肢をずろりと抜いて、隣人相当者・ボブを後ろから刺し貫いた。
【つづく】
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