惑星サウナOE6Yの開発について(正式計画名は来年以降決定予定)【逆噴射プラクティス】
私こと鎮守院征士郎は、庸の一環で課せられた定期系外探査の最中、全球水の惑星を発見した。皇帝は、それをサウナにすることにした。光栄にもその総監督に命ぜられたのが本件の端緒である。
今年、帝暦39621年は、今上陛下在位98年になる。
再来年の治世100年を記念するイベントの一つとして発案されたその史上最大のサウナ建設は、例によって惑星上の全動体総燼滅作業から始めることになり、それは順調に推移していた。しかし、その実行中にも問題の洗い出しと対策は鋭意進めなければならない。
「総監督殿、外気浴が出来ぬのです」
「なに?」
私の副官となってくれている官吏の一人、多頭族のシナプラダが、惑星軌道上の監督府の席に着くなりその五顔を一様に困ったような表情にして発言した。
「陛下はこの惑星をサウナルームにされると仰った。されば、外気浴スペースは惑星外に設けなければなりませぬ。しかし、宇宙には大気がござらん」
「成程。道理だ」
第一頭、ヴの言葉に私はそう頷く。
「また、惑星を丸ごと加熱すれば、早晩惑星中が嵐になりましょう。そうなると、陛下の御身が危険では」
「それは心配ない。陛下は真体で御幸なさる予定だ。かえってアウフグースには良い」
第三頭、ァクの意見については連絡ミスであったかもしれぬ。陛下もたまには真体を動かさねば、お心も身体も錆びてしまうというもの。そのための今回の計画だ。
「成程……八千m級真体であれば、超ハリケーンアウフグースこそ最適……」
「先の件にも関係するが、私は最大の懸案事項は水風呂だと思う」
加えて、私は大型計画を明かすこととした。それは惑星覆殻建設と共に着手せねばならない。外気浴の件解決にも繋がるはずだ。
「此度の計画はシングル。すなわち、9ケルビン以下の液体冷媒を以て水風呂とする。外気浴施設についても、それに付随する形にする」
シナプラダら監督府の面々から、呻くような声が上がった。
【続く】